ポストSIビジネスの選択 2/3
昨日は、ビジネス環境の変化、それに伴うお客様の期待の変化、これに対応するための新たな施策への取り組み方を整理した。では、具体的にどのような施策が考えられるか、その選択肢を今日は整理してみよう。
NTTコミュニケーションズのクラウド・エバンジェリストである林雅之氏が、クラウド市場の動向について、大変わかりやすく整理してくれた。
本人の了承を得て、これを参考にさせて頂き、自らの知見を交えて、次のようなチャートを作成した。
まず、お客様の需要動向には、2つの大きな方向性が見られる。
ひとつはクラウド・ネイティブの需要の拡大だ。パブリック・クラウドを積極的に使い、コストの低減と変更への即応性を担保しようという動きである。パブリック・クラウドへの信任が高まりつつある中で、基幹業務システムをオンプレミスから移行しようという需要が拡大しつつあるように、システム・リソースの選択肢として、その需要が拡大している。しかし、オンプレミスとクラウドでは、構築や運用の考え方が、異なるところも少なくない。それが分からないままに移行を失敗する例も少なからずあるように聞いている。
また、オンプレミスの常識を変えることができず、クラウドの特性を生かし切れずコストの削減が十分にできない、変更への柔軟性が活かしきれないといった事態も生まれている。このような状況に対処するには、「クラウド・ネイティブ」の常識とスキルを持った人材やそれを活かす仕組みによるサービス需要の拡大が期待される。
もうひとつは、上位レイヤ志向の拡大だ。パブリックIaaSの価格競争は、熾烈を極め、クラウド・サービス事業者がこの領域で利益を拡大することは難しい状況になった。そこで、各社は、アプリケーションの構築や運用の生産性を高めたり、自動化や自律化により人的な負担を排除したりする上位のサービス・レイヤの充実に動き出している。AWSのサービス・メニューの充実は、まさにこのレイヤに重点が置かれている。IBMのBlueMixやMicrosoftのWindows AzureなどのPaaSも、この領域であり、それぞれに強化、拡充に力を入れはじめている。また、RedhatのJBOSSなど、オンプレミスでも、開発や運用の生産性や効率を上げるための製品に力を入れている。
このような動向を理解する上で、注意しなければならないのは、これらサービスや製品が、米国のものであるということだ。米国では、ITエンジニアの7割がユーザー企業に属し、自前で行う割合が高い。そのため、このような開発や運用の生産性の向上は、ユーザー企業の省力化を進め、人材の流動性も相まって、人件費の削減や需要の高い業務領域への人材の移動を容易にしている。このような背景があるから、これら一連の動きが支えられている。
一方、我が国は7割がITベンダーやSIに所属し、開発や運用の多くを彼らが引き受けている。そのため工数の下がるこのようなサービスの拡充には抵抗があり、上位レイヤへの拡大の足かせとなっている。
ただ、昨日も述べたように、ビジネス・スピードの加速やITを前提とした新しいサービス・モデルによる競争力の強化は、グローバルな競争の中で益々その必要性を高めている。つまり、ビジネスのスピードとITのスピードを同期化しなければ、競争力を維持できない時代へと変わりはじめている。このような経営環境の変化が、「クラウド・ネイティブの拡大」と「上位レイヤ志向の拡大」を牽引することになるだろう。
このマップに示したひとつひとつのビジネスについては、明日解説する。
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目次
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- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン