ポストSIビジネス:サービスの本質「共創」に立ち返ることこそがポストSIビジネス
「サービス・ビジネスとは共創によって顧客価値を生みだすビジネス」だ。例えば、医療というサービス・ビジネスは、医者の指示で顧客である患者は検査や診断をうける。医者の提示した治療方針や投薬の処方に従うことで、「病気を治す」。このように、医者と患者がお互いに協力して結果を出そうという共創関係があって、サービスの価値を手に入れることができる。
「ポストSIビジネス」もあらためてこのサービスの原則に立ち返る必要がありそうだ。
従来型のSIビジネスは、ユーザー企業とSIerとの間に「ゴールの不一致」と「相互不信」という「構造的不幸」を抱えている。
受託開発の見積は基本的に『工数積算×単金』で算出される。SIerから見ると、工数が増えれば増えるほど儲かる構造だ。そのため、請負となり金額があらかじめ決まっているので、コストを下げるために安い工賃を求めて「多重下請け構造」になる。このような環境では現場の使い勝手や現場ニーズの変化などに配慮できるはずはなく、ただひたすら『仕様通りにコードを書く』ことがゴールになりがちだ。本来、ユーザー企業のゴールは売上や利益の拡大、利便性の向上といった『ビジネス価値の向上』だ。ここにゴールの不一致が生まれている。
また、ユーザー企業の情報システム部門には仕様を開発や運用の現場から遠ざかってきたので実践的なノウハウがない。そのため、SIerが提示した仕様を正当に評価できる能力がなくなっている。しかし、SIerは瑕疵担保責任を背負わされているために、仕様書に不備があってもユーザー現場が納得できないとなると何度でも改修を強いられる。ここに相互不信も生まれる。
このような事業構造のSIビジネスに共創関係を築くことは難しい。
ビジネスの現場はこれからますますスピードに対応しなければならない。これがゴールだ。そのためには、システム開発も運用も高い生産性と変更への迅速な対応が求められる。
これに対応しようとすれば、SIerは工数を増やすことを事業目的とする考え方を変えなければならない。また、情報システム部門は、「工数×単金」の積算根拠を求めることを辞めなくてはならない。本来のゴールを達成するには何をすべきかを情報システム部門もSIerも共に考え、協力して対応する努力が必要になる。これこそが、ポストSIビジネスの本質だ。
本日(1月21日)夕方から、「ITACHIBA会議」が開催される。この会議は、「立場や利害を超えて、これからのITとのかかわり方を考え、議論し、共有する「場」」として数年前から行っている。SIerやITベンダーと情報システム部門の方達が、お互いに立場を越えてこれからを考えようという取り組みだ。こういう場で実践者から学ぶことは多いだろう。
>> ITACHIBA会議
また、先日紹介した「ポストSIビジネスの選択肢」も「共創関係の構築」を目指す模索でもある。
時代は、間違えなく「共創」を求める時代へと向かっていることを忘れてはならない。
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