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2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(2/3)

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昨日は、ビジネスを牽引する「オープン化」、「スマート化」、「サービス化」といった3つのドライビング・フォースについて述べましたが、今日と明日は、そこにどのようなキーワードが登場するかを解説します。

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SDi(Software-Defined Infrastructure)

サーバーやストレージ、ネットワークなどのITインフラを構成するシステム資源が仮想化できるようになると、これら全体をひとまとめにして、ソフトウェアへの設定だけで、システム全体を構成、管理、制御できるようになります。この考え方が「SDI(Software-Defined Infrastructure)」です。VMwareなどは、これをSoftware-Defined Data Center(SDDC)、IBMは、Software-Defined Environment(SDE)と呼び、それぞれの思惑を込めて使い分けています。

SDIでは、予め全体の必要量を想定して、物理的なシステム資源を用意しておきます。これは、「リソース・プール」と呼ばれています。このリソース・プールから、利用者は必要な機器構成や機能をソフトウェアへの設定だけで、取り出し、組合せて利用すること、構成変更や追加、削除もできるようになります。物理的な導入・据え付けやネットワーク接続といった作業は必要ありません。今後のIT利用は、このようなITインフラの上で展開されてゆくことになります。

コンテナ型仮想化(Docker)

「Docker」とは、Docker社が提供するLinux用のコンテナ管理ソフトウェアです。MicrosoftもWindows AzureでのDockerのサポートを表明しており、サーバーを仮想化する仕組みとして、今後重要な役割を担うことになりそうです。

Dockerもハイパーバイザ型サーバー仮想化と同様に、物理的なサーバーのシステム資源を見かけ上分割して、個別独立したシステムとして提供するために使われます。しかし、サーバー仮想化で使われているハイパーバイザではなく「コンテナ」と言われる別の方法を使います。

コンテナ型は、ハイパーバイザ型に比べ、システム資源のオーバーヘッドが少ないため、同じの性能のハードウェアであっても、より多くの仮想化されたシステム資源を作ることができます。また、ハイパーバイザ型で仮想サーバーを提供しているクラウド・サービス(IaaS)は、ひとつの仮想サーバー上にさらに仮想サーバーを重ねて稼働させる(二重の仮想化)をサポートしていないケースがほとんどです。しかし、コンテナ型仮想化では、その制約をうけません。そのため、コンテナ単位でIaaS間を移動させることも容易で、セキュリティや可用性の必要から異なるIaaSを組み合わせて使うような場合に重宝です。また、コンテナは、それを起動させるためにハイパーバイザ型のように仮想マシンとOSを起動させる手間がかからないため、極めて高速です。

このような軽量、可搬性の高さは、仮想化の新しい選択肢として注目されることになるでしょう。

新しいハードウェア・テクノロジー(ベアメタル、SSD)

仮想化されたサーバーは、管理の利便性をもたらす反面、性能の安定を確保することは難しくなります。特にバッチ処理など処理の終了が性能に左右されるアプリケーションにとっては課題です。

そこで注目されるのがベアメタルです。IaaSで利用するサーバーを仮想マシンとしてではなく、物理マシンとして調達する仕組みで、IBMのSoftLayerはこれをひとつの特徴としていています。物理サーバーを調達できるといっても、それらは全てソフトウェア的な設定作業、つまり「セルフサービス・ポータル」から利用でき、物理的作業を伴わない点に於いては、仮想サーバーを扱うのと違いはありません。

もうひとつ注目すべきは、SSDストレージ、あるいは、フラッシュストレージの動向です。ストレージと言えば、モータードライブを必要とするHDDが主に使われています。しかし、高速化、高密度化、低消費電力化では限界が見えています。これをブレークスルーするのが不揮発性半導体記憶素子を使ったフラッシュストレージです。

これまでは、比較的高価であったために用途も限定されてきましたが、低価格が急速に進み、MySQLやPostgreSQL、MongoDBといったIOPS(Input/Output per second)の大きいデータベースのストレージに利用することなどの需要の高まりと共に注目されています。

Google Cloud Platform、AWSなど、主要なクラウド事業者も相次いでSSDベースのストレージ・サービスを提供し始めています。

IaaS

ITインフラを提供するクラウド・サービスがIaaSです。このサービス領域はコンテナ型仮想化、ベアメタル、フラッシュストレージなどを取り込んで差別化を図りつつありますが、コモディティ化がすすみつつあり、価格競争の様相を呈しつつあります。

また、性能が高まり、価格も低下し続けることから、ITインフラを自ら所有する必然性は低下してゆきます。そのため、ITインフラは所有から使用への流れが加速してゆくことになるでしょう。

IoTとビックデータ

私たちの日常は様々な「モノ」に囲まれています。PCやスマートフォン、ウェアラブルと呼ばれる身につけるデバイス、家電製品や住宅、自動車や鉄道などの生活に欠かせない設備、道路に設置された機器や気象・環境観測機器、工場で働く産業用ロボットや工作機械などが、私たちの日常を支えています。これらが、いまインターネットにつながろうとしているのです。

インターネットにつながるモノの数は、2009年時点で25億個あったそうですが、2020年には300億個以上になるとか500億個になるとか言われています。いずれにしても膨大な数のデバイスやモノが、インターネットにつながろうとしています。

既に私たちは、PCやスマートフォンで文字や写真、音声といったデータを生みだし、そこに組み込まれたGPSやセンサーが、私たちの動作や行動をデータ化しています。また、モノに組み込まれたセンサーが、その動きや周辺の状況をデータ化しています。私たちの日常生活や社会活動が広範にデータ化され、インターネットを介して、集められる時代を迎えようとしています。このような仕組みは、「IoT(Internet of Things)」と呼ばれています。

膨大な数のデバイスやモノから生みだされ急速な勢いで増え続けるデータは、「ビッグデータ」と呼ばれており、そこには現実世界に関わる様々なデータが集められているのです。これを統計手法や人工知能を使って分析し、わかりやすい表現で「見える化」することで、様々な知見やノウハウを取り出すことができます。

このような一連の仕組みは、もはや一企業が所有できるものではありません。クラウド・サービスの中に組み込まれ、サービスとして提供されて行くでしょう。また、それを支えるテクノロジーはOSSに牽引されています。データの一部はオープンデータとして提供されるようになります。

・・・明日に続く

最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました

今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。

【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。

  • 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
  • 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
  • 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
  • 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
  • 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。

2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集を開始致しました。

既に、定員80名に対して半分ほどのお申し込み、参加意向のご連絡を頂きました。ありがとうございました。

第18期では、テクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドに加え、提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても考えてゆこうと思っています。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。

ご検討ください。

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詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます

よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m

拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。

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「システムインテグレーション崩壊」

〜これからSIerはどう生き残ればいいか?

  • 国内の需要は先行き不透明。
  • 案件の規模は縮小の一途。
  • 単価が下落するばかり。
  • クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。

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