コレ一枚でわかるスマートマシン(1/4)スマートマシンとはなにか
「スマートマシン」。ITの歴史の中で、これほど画期的で破壊的なテクノロジーはなかったのではないかと思っています。
スマートマシンは、人と機械との係わり方を大きく変えてしまいます。例えば、話しかけるだけで仕事をこなしてくれる。こちらの意向や行動を先読みして仕事をしてくれる。安全快適にヒトやモノを輸送してくれる。このような快適な未来を実現してくれます。
一方、これまで人間にしかできないと考えられていたことを代替できるようになれば雇用を奪ってしまうかもしれません。そうなれば、私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか。政治や経済にも大きな影響をあたえることになるでしょう。
ITの進化は、これまで人間活動の生産性を高め利便性をもたらすものとして、私たちに大きな恩恵をもたらしてきました。スマートマシンもまた、そういう常識の延長線上に生まれてきました。しかし、その進化の行き着く先は、本来主体であるはずの人間をも代替してしまうかもしれないのです。
18世紀半ばから19世紀にかけて起こった「産業革命」も、20世紀の「自動化」も、人間の労働のあり方を変えてきたことにおいては、変わりがないという考えもあります。しかし、スマートマシンがこれらと根本的に違うのは、人間にしかできなかった知的な活動が機械に置き換わることです。「産業革命」も「自動化」も、その意味に於いては、人間が主導権を握り、コントロールできたのです。これこそが、スマートマシンが画期的であり、破壊的である所以なのです。
SIビジネスに当てはめてみれば、システムの運用や開発の多くは、スマートマシンに置き換えられてゆくでしょう。そうなれば、これまでの人月積算を前提とした収益構造は成り立たなくなります。
この進化の潮流に抗うことはできません。ならば、このスマートマシンをうまく使いこなし、より付加価値の高いビジネスへと自らの役割を変えてゆくしかないのです。また、少子高齢化が進む我が国は、2015年から2020年にかけて生産年齢人口が341万人減少すると言われています。このような現実に対処する手段としても、スマートマシンの活用は、有効な選択肢となるはずです。
今年を締めくくるに当たり、このスマートマシンについて、4回にわたり整理してみようと思います。来る2015年、スマートマシンの存在感は、これまでにも増して高まっているはずです。そんな来年に向けた予習として、ご覧頂ければと思います。
コレ一枚で分かるスマートマシン
米調査会社ガートナーは、2013年に発表したレポートで、「スマートマシンとは、自律的に行動し、知能と自己学習機能を備え、状況に応じて自らが判断して適応し、これまで人間にしかできないと思われていた作業を実行する電子機械」であるとしています。
荷物を運ぶ自律走行車や無人ヘリコプター、言葉での質問に答えてくれる音声アシスタント、医療診断や法律解釈を助けてくれるアドバイザー、工場での組み立て作業を人間に代わりこなしてくれるロボットなど、広範な分野で実用化が進んでいます。
例えば、オンライン・ショップで商品を購入すると、倉庫内のロボットが商品をピックアップしてトラックに積み込み、人工知能が渋滞状況を調べて最短の配送経路を見つけ、自律走行車が配達する。こんなことが、実現しようとしています。
これまでは、決められたやり方をそのとおり確実にこなしてくれる"自動化"への取り組みは進んできました。しかし、自分で学習し、独自にルールを作り仮説検証し、状況を把握して最適な方法を選択・判断して実行する"自律化"は、夢の話でした。それがまさに実現しようとしています。
これを実現させるために自然言語処理や機械学習といった人工知能、知識の源泉となるビッグデータ、その膨大なデータを蓄積・処理するクラウド、状況を把握するセンサーや人間とのやり取りするデバイスなど、広範な技術が使われています。
一方で、自動化によって単純労働者の雇用が奪われたように、より高度な知的労働者の雇用をも奪うのではないかとの懸念の声も聞かれます。
しかし、このような変化の潮流に抗うことはできません。うまく付き合ってゆく方法を考えなくてはならないのです。
スマートマシン、3つのタイプ
スマートマシンは、次の3つに分類されます。
Movers(移動するもの):Kiva Systemsの倉庫用ロボットは、発注情報を受け取ると、注文品が収納されているラックを探し出してその下に潜り込み、それを荷詰め作業をしているスタッフのところまで運び、また元の場所に戻すという作業をしてくれます。広い倉庫内でもお互いにぶつかることはありません。他にも、Googleなどが開発している自律走行車、Amazonの配送用無人ヘリコプターなどがあります。
Sages(賢者):音声で質問するとその日の天気やスケジュールを教えてくれるバーチャル・アシスタント、臨床医の所見や検査データから適切な診断を助言してくれるアドバイザーがあります。
前者はAppleのSiriが有名ですが、既に身近なものとなっています。後者は、IBMのWatsonが有名です。例えば、膨大な医療文献を学習し、さらに患者の電子カルテを分析して、最適な治療法を医者に推奨してくれます。他にも財務データを読み取り分析し業務部門にアドバイスを提供するもの、訴訟に関わる文書を読み取り証拠となる文書を探し出すもの、論文試験を採点するものなどが実用化されつつあります。
Doers(行動するもの):Rethink RoboticsのBaxterや川田工業のNAXTAGEは、工場内で人と並んで働くロボットです。手動で基本的な作業動作を教え込めば、それを学習し、周囲の状況を把握しながら、人にぶつからないように自律的に作業をしてくれます。他にもiPhoneの製造を手がける世界最大のEMS(Electronics Manufacturing Service)であるFoxconnは、労働者代替型ロボット「Foxbots」の開発を進めており、100 万台の導入を計画しています。
スマートマシンは、もはや未来の夢物語ではなく、実用の段階にさしかかっています。
・・・明日に続く
最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました
今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。
【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。
- 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
- 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
- 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
- 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。
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第18期では、テクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドに加え、提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても考えてゆこうと思っています。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。
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拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。
「システムインテグレーション崩壊」
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