内製化について考えてみました(2/3)内製化に立ちふさがる壁
労働集約型の産業にとって、就労人口の低下は大きな打撃です。つまり、情報システム部門は、質のいい労働力を外部から調達できない事態に直面しようとしているのです。
ナレッジの継続性を維持することやITスキルを競争優位戦略に反映させるためにも内製化は、必要になるでしょう。外注に依存し、ナレッジもスキルも流失してしまえば、それは企業価値を大きく毀損することになります。言うなれば、自社の戦略的価値を維持する安全保障対策としても、内製化は必要となるでしょう。
だからといって全てを内製化することは現実的とはいえません。中長期の視点から、継続性を保つべきナレッジは何か、競合優位を維持するためのスキルは何かを選別し、社内人材の育成と外注先との役割分担を考えなくてはなりません。
内製化を後押しする圧力は、強まりつつあります。しかし、実現は容易ではありません。
時代をさかのぼれば、このような議論はこれまで幾度となく繰り返されてきました。そもそも、外注を前提とした仕事の進め方が定着してきたのは、情報システム部門が抱えるコスト圧力への対応策だったはずです。社員として間接要員を持つよりも外注したほうが、コストが安くなるからです。いつでも切れる安全弁であり、リスク回避の手段となります。
SI事業者に大きく依存してきた訳ですから、内部の人材に開発や保守の経験はなくスキルの蓄積もありません。ローテーションで担当が変わることもしばしばです。一方で、SI事業者のエンジニアは長年同じシステムを担当しているので、社員以上に業務とシステムに精通しています。このような状況では、内製化などできるはずがありません。
ITを知らない経営者にしてみれば、本業ではないITなど、うまくできて当たり前です。「なぜこんなにもお金をかけなきゃならないのか」という意識が働くのは当然のことです。このような意識がある中で、内製化のために間接部門である情報システム部門の要員を増やすことなど、できるはずはありません。
スキル不足の壁と経営者の無理解の壁、情報システム部門は、その狭間に立たされ、身動きがとれません。
この壁を乗り越えて、内製化をすすめるにしても、全てを自前にすることや、パッケージのカスタマイズが当たり前という常識をそのままに労働集約型のやり方を継承していては、むしろコストはかさむだけです。
また、トレンドへの見識が低いままにレガシーなテクノロジーの蛸壷の中に安住し、リスクを冒して新しいことにチャレンジしないメンタリティを残したまま内製化しても、世の中からは取り残され、ITの戦略的活用など、おぼつきません。このような意識を変え、経営に対する働きかけを進めてゆかなければ、内製化は困難です。
では、どうすれば良いのでしょうか。SIerはどのように関わってゆけば良いのでしょうか。明日はこの点について考えてゆきます。・・・続く
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