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「仕組みとしての見える化」と「環境としての見える化」

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プレーヤーが、マネージャーの役を任されたとき、戸惑うことのひとつは、「見るべき範囲」の違いだろう。

Mieruka


プレーヤーであれば、自分の担当するお客様であり、自分のやっていることのみを見ていればいい。しかし、マネージャーになると、そうはゆかない。自分に加え、部下のやっているコトを見なければならない。これは、勝手が違う。

自分でやっているコトを「見る」というのは、受動だ。見ようという意欲などなくても、自分のやっていることなのだから、当然に見えている。

一方、マネージャーが、部下を見ようとすると、それなりの努力と工夫がいる。会議の場で、個別に話しをする場で、報告をさせ、質問をする。あるいは、日報や週報を書かせたりもする。しかし、その説明には、常に語る側の主観がはたらく。

  • まずいことは、話したくない。
  • いいところを見せたい。
  • めんどくさい。

様々な主観は、説明にバイアスをかけ、事実なのか、推測なのか、そうしたいという意欲なのか、その点が良く分らない。

これは、本当にストレスがたまる作業だ。つい、感情的になり、「本当のところはどうなんだ!」、「もっとわかりやすく説明しろ! 」となる。

ヒトは、自分のものの見方というものを持っている。それに当てはめて、相手の話を聞いたり、状況を把握しようとする。

マネージャーになるということは、もともとプレーヤーで優秀だったからだ。だから、自分なりの成功体験や優れた方法論、視点というものを持っている。そんな彼等の思考の枠組みに照らして、部下を見てしまう。だから、「なんでそんなことが分らないんだ」、「どうして、やらないんだ」と感じてしまうのも無理からぬ話だ。

客観的に「見る」べき立場のヒトが、それができずにいらいらし、分りやすい報告ができない部下の無能を嘆いている。しかし、その分りやすさとは、自分にとっての分りやすさに過ぎない。部下にとっての分りやすさではない。

そんな当たり前のことにも気付かないままに、自分の努力不足を部下の能力や努力不足に転嫁しているマネージャーもいるのではないか。

こんな状況対処しようと、SFAで「見える化」の仕組みを作ろうと取り組むところもある。しかし、どうも肝心なところが抜けているように思えて仕方がない。むしろ、形式的な「見える化」の仕組みを導入することで、自分の努力不足を代替させよう、分らないので仕組みで解決しようという、拙速な思考停止の発想に見える。

本来「見える化」の実現には、「仕組みとしての見える化」と「環境としての見える化」という、ふたつの取り組みが必要だ。

例えば、SFAであるが、これは、「仕組みとしての見える化」対策だ。簡単に言ってしまえば、日報や週報の清書システムである。もちろん、こんな雑な話しをすると、「おまえは、SFAを何も分っていない」とお叱りを受けそうだが、実態は、そうだと思っている。本来、SFA(Sales Force Automation)は、定められた営業活動のプロセス・モデルやワークフローに基づき、その進捗を「見える化」する手段として作られたものである。しかし、そのような前提がないままに、使われているケースは少なくない。その前提がない以上、使われ方は限定される。結局は、週報、日報、数字の最終報告システム以上のものではないと申し上げている所以だ。

また、週報、日報を清書する仕組みを作っても、内容や質を作りこまなければ、「仏を造って、魂入れず」ではないか。紙に書いてで報告するのか、システムで報告するのかの形式的な違いはあっても、なんら根本の解決には、至っていない。

形を作れば、その利用量を増やすことで、仕事をしている気がしてくる。これは、考えなくていいから楽である。しかし、中身を造る、質を高めるとなると、ちょっと考えなくてはいけないので、簡単なことではない。内容や質に手を抜き、形式だけを造っているだけでは、本当の意味の「見える化」は、実現しない。

むしろ現場の負担感を増やしてしまい、情報の流れを阻害し、現場を見えなくしてしまうリスクもある。

「まずは、形から・・・」も悪くはない。しかし、多くの場合、「まずは」で終わってしまう。

別に、SFAを悪者にするつもりはない。ただ、「仕組みとしての見える化」対策だけでは、本当のところ、見える化は、実現しない。

そこで、必要なのが、「環境としての見える化」である。

言い換えれば、「部下と上司が、対話しあえる環境を作ること。」だ。

「誰が言っているのか」といった、形式論的な視点ではなく、「どんなことを言っているのか」という本質論的な視点で聞こうとする態度を持つこと。一緒に困り、一緒に答えを作り出そうという態度を持つことに他ならない。

部下の発言が、完全ではないと感じる場合、その多くは、すべてが間違っているのではなく、一部、それも情報不足から来る不完全さに過ぎない。あるいは、内容は正しくても、説明能力の稚拙さなのかもしれない。それを「間違っている」と全否定するのは、おかしい。

また、「何を言っているんだ」と感じる場合も、それは、今までの自分の経験や知識という一方的な基準に照らし合わせた感覚であって、客観的、あるいは、新しい視点での事実認識に基づいたことではない場合が多い。これを「自分に抵抗している」と感じるのは、自意識過剰とでも言うべきだろう。

このような態度では、部下は、話そうという気にはならないし、仮に意見を述べても、それを取り下げようとするだろう。

まずは、ありのままを受け入れることだ。そして、とにかく相手の話を聞く。そんな関係ができれば、部下は、相談をためらわない。報告という形式的な見える化の仕組みは、このような上司と部下が対話できる環境があってこそ、機能する。

「仕組みとしての見える化」と「環境としての見える化」は、「見える化」を進める上での両輪だ。プレーヤーを卒業し、マネージャーになるということは、「環境としての見える化」を自分の管理する組織の中に実現することである。

これができれば、「仕組みとしての見える化」も機能し始める。

「環境としての見える化」は、「間違っていてもいい、不完全でも話してみよう」という、部下の自発的行動を促す。そうなれば、部下は、活き活きとし始める。

話しを聞いてもらえる安心感は、部下のやってみようという意欲につながる。この意欲を組織の誰もが持てば、まさに、マネージメントのミッションである「組織力による目標の達成」に大きく貢献することになるだろう。


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