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クラウドの使い方:リホスト、リライト、リビルド

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クラウドは何のために利用するのか。「TCOの削減、構築や開発のスピード、あるいは変更への柔軟性」などをあげることができるが、それはどのような使い方をするかによって大きく変わってくるだろう。

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クラウドの使い方には、リホスト、リライト、リビルドの3つのタイプがある。

リホスト

アプリケーションやミドルウェアーなどのシステム・ロジックに変更を加えることなく、ハードウェアをオンプレミスからクラウドに変更する使い方だ。受け皿となるクラウドはIaaSとなる。

リライト

システム・ロジックを変更することなく、アーキテクチャーやOSの異なるクラウドに変更する使い方だ。UNIX系やメインフレーム系からx86系のIaaSやPaaS環境へ移行する場合がこれに当たる。

リビルド

システム・ロジックだけではなく、業務の流れや使い方と言ったビジネス・ロジックも変更し、クラウドを使うやりかただ。このようなケースでは、IaaSやPaaS上に独自のシステムを開発することも可能であるが、ビジネス・ロジックを変える訳なので、既存のシステムにこだわらず、開発の生産性やスピードなどを考慮し、SaaSを使うという選択肢もある。

どれが多いかという統計が見つからないので、あくまで推測の域を出ないが、ビジネス・ロジックに独自性の少ない電子メールやコラボレーションなどのオフィース系アプリケーションについては、SaaSへの移行が進んでいる一方で、独自性が高く(と考えられている)基幹系については、リホストが多くを占め、リライトもそれに続いているのではないだろうか。

今後を考えれば、SaaSの活用を前提としたリビルトが拡大するのではないだろうか。その理由として、ビジネス環境の不透明性の拡大とビジネス・スピードの加速が上げられる。

本来であれば、各社各様の個別業務に対応して、独自システムを構築できれば、いいのだが、そのような時間的な余裕は与えられないだろう。また、IT予算は、未だコストとしての意識が強く、ビジネス環境が不透明であるが故に投資対効果の算定も難しく、「少ないコストでミニマムスタート」という判断が働きやすい。

このような状況の中では、新たなITニーズに対する受け皿として、SaaSへの期待が高まるのではないかと思っている。

また、冒頭に申し上げた「TCOの削減、構築や開発のスピード、あるいは変更への柔軟性」といったメリットを最大限に享受するためには、リビルトが前提となるだろう。今後は、そちらにシフトしたクラウドの使い方を模索する動きが拡大するのではないだろうか。

中堅・中小企業のクラウド活用も拡大するだろう。現時点で見る限り、中堅・中小企業のクラウド利用は限定的であり、将来についても明確な利用拡大が予測されているわけではない。これは、ITの導入や運用を自社ではまかなえないので、ITベンダーに丸投げしているところが多いことに原因がある。

つまり、ITベンダーにとって、クラウドは、儲けの少ない商材であるため、顧客に対して積極的になれない。任せている相手が消極であれば、当然、顧客は積極的にはなれない。そんなところが、背景にあるものと考えている。しかし、これも時間の問題ではないかと思っている。

大企業あるいは中堅・中小を問わず、ITは間接的な事務仕事の生産性ばかりでなく、本業の競争力強化や差別化にとってもますます重要性を増すことになるだろう。このような状況にあって、クラウドはコストやスピードにおいて有力な選択肢となる。それを顧客が、認識するようになったとき、クラウド利用は一気に加速するのではないか。特に中堅・中小は、変化点からの変化の加速度は大企業以上である。

そのときの備えができていないITベンダーははたしてこれまで同様のビジネス構造を維持できるだろうか。ならば、いち早く、この流れに自ら先鞭をつけ、ビジネスを牽引するというシナリオもある。

クラウドの利用は、今後も拡大してゆくであろうことは、論を待たない。しかし、その使われ方の違いにより、もたらされる顧客価値もビジネス・モデルも変わってくる。そんなことも念頭に据えた戦略や施策を考えてゆくことが必要になるだろう。

 

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