営業やエンジニアは自分の将来を考えてみてはどうだろう
「好況のときは良いが、不況になり開発案件が減少すると、真っ先に仕事が無くなるのが多重下請け構造のピラミッドの底辺にいるITベンダーだ。多重下請け構造の労働集約型産業では、必ずこうした企業が“雇用の調整弁”となる。このため、その調整弁役を進んで引き受けるようなブラック企業にも、格好のビジネスの場をIT業界は与え続けている。」
この問題提起は、SIerの経営者や幹部に向けたものだろう。しかし、私は、この現実をSIerに勤める営業やエンジニア自身が、自分の将来のこととして受け止めてみるべきだと思う。
これまでのやり方を変えようとしない企業は、これからの時代が求めるスキルを伸ばす機会を与えてくれない会社だ。いまの需要が一巡したとき、いったい何が残っているのか。忙しく働いたことへのプライドは残るかもしれない。しかし、新しい時代が求めるスキルや感性を磨くことができなければ、いずれは時代に取り残されてしまうだろう。
それが不安なのであれば、とっととそんな会社は辞めて、新しいことにチャレンジさせてくれる会社に転職した方が良い。自分で会社を始めるのもひとつの方法だろう。いずれにしろ、自分が生き残る道を模索すべきだ。
経営者の方に申し上げたい。そういう社員を増やしたくなければ、経営のあり方を大きく変えるべきだ。その方法は、ひとつではないし、各社の事情もあるだろうから、拙速に申し上げられるものではない。
ここに一枚のチャートがある。昨日のITソリューション塾・第16期の最終講義で話をした中の一枚だ。エンジニアや営業のモチベーションを高め、かれらを支えとして改革を進めるために何をすれば良いかを整理したものだ。
まず、経営は利益志向の収益基盤を持たなければならないだろう。売上規模は大きくても利益の出ないSIerは少なくない。かつては、売上が増えれば、利益も増える関係にあったが、もはやそういう時代ではない。
「売上高1000億円・営業利益50億円の企業から売上高100億円・営業利益50億円の企業へ」とは、少々極端なたとえではあるが、継続的に高い利益率を維持してゆける企業へと変わってゆかなければならないだろう。
このような経営体質を実現するためには、「高くても売れる」付加価値の高い魅力的なサービスを提供し続ける事業基盤をつくることだ。工数を増やすことではなく、顧客価値を徹底して追求し、その成果への対価を収益の基盤とする必要があるだろう。
このような企業体質に転換してゆくためには、そこで働く社員が、この経営目標を達成することへのモチベーションを持ち続けなければならない。
エンジニアであれば、自らの技術力と生産性を高めることが評価されなくてはならないだろう。稼働率や工数を増やすことではなく、常に新しい技術に取り組み、改善を重ね、少ない工数で高い品質を実現することを業績として評価しなければならない。
また、営業は、経営方針と一致した業績評価基準を与える必要がある。全営業一律に売上や利益の目標を与えるのではなく、それぞれに与えられたミッションや事業計画にきめ細かく対応した目標を与え、これを業績評価と一致させなければならない。
先日のブログでもこの点については触れたが、どんなに製品やサービスがすばらしくても、あるいは、経営や事業方針が時代に沿ったものであっても、それをおこなうことでエンジニアや営業が評価されなければ、現場力を引き出す事はできない。手間のかかることかもしれないが、そういうきめの細かな評価制度を運用することが大切だ。
現場が幸せになれない企業は、優秀な人材から去って行く。その兆候があるのなら、早く手を打たなくてはならない。「手遅れ」にならないうちに・・・
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営業にモチベーションを与えられないビジネスなど売れるはずはありません
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