混沌とエネルギーに満ちあふれたベトナム・ビジネスの今を垣間見る
6月5日から滞在しているベトナム・ホーチミン市から本日帰国する。IT関連の地元企業や日系企業などに伺い、ベトナムでのビジネスの現状や可能性について、興味深い話をいろいろと伺うことができた。
ところで、「ホーチミン市はどんなところですか?」という興味をお持ちの方に、この街を象徴するいくつかの写真をご覧頂こう。
若い人たちのエネルギーがあふれるところ。ベトナム全体の平均年齢29歳(日本は45歳)、人口9000万人、2025年には1億2000万人に達しようとの勢いだ。そんな国の経済の中心ホーチミン市には1000万人がすんでいるという。バイクが生活の足、まさに、足のように車や人の混雑の中、狭い路にも入り込んでくる。そのエネルギッシュな勢いに圧倒される。
その一方で、近代化もすすんでいる。地上265.5メートルのビテクスクコ・フィナンシャル・タワーは、その象徴とも云える。決して、高層ビルが林立しているといった状況ではないが、街の中心部そして郊外に真新しいビルが建ち、発展の勢いを感じさせてくれる。
しかし、発展しようという勢いの中、未だ混沌と雑然もこの街のひとつの特徴だろう。
小柄で気さく、そしてとても器用で丁寧。人についてはそんな印象をうける。街中の市場の屋台や店先には整然とものが並べられている。掃除もまめに行われていて、とても清潔な印象だ。
そんな街のいくつかの会社を訪問した。ひとつは、General Solutions。ベトナム人の経営するIT企業である。20名ほどの社員を抱えOSSのERPパッケージ、openERPに関連した受託開発を行っている。顧客は主に国内だが、欧米からの開発委託もこなしているそうだ。発展がすすむ中ERPの需要も伸びてきているようで、国内ビジネスの成長を支えに若い人たちが頑張っている姿が印象的だった。ちなみに会話は英語。この街でビジネスをするには英語は欠かせないとのこと。
次は、ご存知「サイボウズ」のベトナム開発拠点。日本に留学経験のあるベトナム人の現地責任者に話を伺った。流ちょうな日本語とこちらの質問に見事なまでに適切な回答をしてくれる優秀さに感動した。今後も採用を増やしてゆこうとのことだ。
「いま何ができるかより、勉強することが好きな人を採用するように心がけています。技術は変わるので、それに対応できない人材は使えません。」
なるほどと思った。
ちなみに、この会社は設立以来、ほとんど退職者はいないらしい。定着率が必ずしも良くないこの国で驚くべき話だが、こういう人材についてのポリシーがあり、また、そういう人を大切にする企業風土が、この会社の魅力となっているのだろう。
ちなみに、この会社もベトナムの他の会社同様、当初の定着率は必ずしも良くはなかったそうだが、今ではそれも少なくなってきたとのこと。そこには、こういう人材についてのポリシーとそういう人を大切にする企業風土をしっかりと育ててきたことが背景にあるのだろう。また、設立する前から、協力会社で一緒に仕事してきた社員がほとんど退職していなかったので、長く働いてくれた社員が半分ぐらいいるとのこと。そういう魅力とやりがいがこの会社にはあるようだ。
もうひとつ、フランス人が経営するIT企業を訪問した。この会社もopenERP関連の開発を手がけている。流石にフランス人、最初に伺った会社と比べ彼等の開発したUIは実に洗練されていた。また、アジャイル型の開発体制で、欧米やベトナム国内の開発需要に応えているという。フランス人4名、ベトナム人25名で、50名ほどの体制に持って行きたいが、なかなか優秀な人材が集まらないとのことだった。
こちらは上流のコンサルティングから開発、サポートを広く行っているとのことで、ベトナム国内にも多くの顧客を抱えている。特に、欧米企業との合弁やベトナム拠点などは、親会社がERPは当たり前の文化であり、そういう企業を中心に導入が進んでいるとのことだった。
先のベトナム企業もこの会社も、共に日本など眼中にはないようだ。彼等は、国内と欧米に目を向けている。このホーチミンでITビジネスへの期待が高まるなか、日本の存在は必ずしも大きなものではないとの印象である。
他にも日系企業のブレインワークスさんとパソナテックさんを訪問させていただいた。こちらは、ITではないので、紹介は省かせていただくが、日本からの片道切符でこの地に根を下ろす覚悟で来られている日本人から話を伺った。大きく発展しようとしているASIAN諸国の勢いを感じて仕事をしたいとのこと、こういう人たちが、この国で活躍されていることを嬉しく思った。
「賃金の安い労働市場」。そんな思い込みを持ちながらこの国へ来たが、けっしてそれだけではないことを感じることができた。日本には感じられない勢いがある。仕事の質の高さは我が国と変わるものではない。
ベトナムに住み、長年貿易の仕事をされてきた方とも話をさせて頂いたが、その仕事の器用さと丁寧さは、見事なモノだとのこと。こういう感性が、この若い国の勢いと発展を支えていくのだろうと話を伺いながら考えていた。
ベトナムという国のポテンシャルをしっかりと感じるとともに、これからの日本のことについても、あらためて考える機会となった。
*お詫びと訂正(6/9 12:35)
「ほとんど退職者はいないらしい。」との記述をにつきまして、ご本人より以下のコメントを頂きました。
「離職率はベトナムは日本と違って出はいりは激しいです。 うちも退職率が以前高かったのです。特に社員数が少ないので、4-5人やめるとしたら退職率は十数パーセント~になってしまいます。しかし、去年からは落ち着いてきました。 また、設立する前から、協力会社で一緒に仕事してきた社員がほとんど退職していなかったので、長く働いてくれた社員は半分ぐらいいます。」
説明が不適切であったことをお詫び申し上げますと共に、上記の通り訂正させて頂きます。
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「問われるIT営業の存在意義、求められるアカウント営業」
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