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デザインのないソリューションなど売れるわけがない

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「ソリューションがあるからといって、ビジネスにはなりませんよ。」 

昨日から始まったITソリューション塾の講義が終わり、いつものアルコール消毒会が始まった。その席で、ある中堅SIerの新規事業開発の責任者の方に、こんな話をさせて頂いた。かれは、クラウドを活かしたサービス・ビジネスの新規開発を任されている。

「中国では、大都市の郊外にマンションの建設ラッシュが続いていると聞いています。設備も立派で、近代的な建物であり、なんの不満もありません。しかし、まわりに病院もなければ、学校もない。それをなぜ作らないのかと聞けば、『そんなものは売れませんからね』という答えが返ってきたそうです。御社のソリューションもそのマンションと同じじゃありませんか。立派なマンションはあっても、そこに人を呼び込むビジネス全体のデザインがなければ、うまくいかないと思いますよ。」

 お酒の勢いもあって、少々失礼なことを言ってしまったかもしれないが、どうも図星だったようだ。

SIビジネスは、今好調である。ひとり1.5人月働いても需要をまかないきれないという話も聞く。しかし、いつまでこんなコトが続くのだろうか。

単金は上昇傾向とは言うが、たいして上がらないままに、2016年問題も重くのしかかる。一旦需要が落ち込めば、もともと利益率の低い人月ビジネスは、厳しい状況に追い込まれることは火を見るより明らかだ。

受託開発の需要がなくなるとも思わないが、ユーザー企業は、自ら開発し「所有」するシステム、サービスを「使用」するシステムへとこれまでにも増してシフトしてゆくだろう。しかし、未だそういうことに関心のないSIerも多く、ユーザーとの意識の乖離が甚だしいことを、先日発表されたIPAの「IT人材白書2014」は伝えていた。

そういう世間の実情からみれば、この方の会社はしっかりと未来を見据えて取り組まれている。しかし、残念ながら、ソリューションはあってもビジネス・デザインがない。デサインがわかりにくければ、「全体計画」といっても良いかもしれない。

技術もあり、実績もある、優秀な人材にも事欠かない。だからこそ、ソリューションという手段に関心が向いてしまうのかもしれない。しかし、起点は顧客に有る。プロダクトやサービスではない。

その顧客をどうすれば、振り向かせることができるか、使いたいと思わせるか、使い続けたいと思わせることができるか。そういうデザインがないままに、手段だけがひとり歩きしている。

これまで、多くのSIerは、既存の顧客からのリピートで十分にビジネスが支えられた。しかし、もはやそういう時代ではなくなった。当然、「売り方」も変わる。

そういう発想の転換が求められているのだと思う。それは、「ビジネスをデサインする」という発想であり、手段である「ソリューションを作る」という発想からの転換だ。「いいモノを作れば良い」ではうまくいかない。良いモノとは、結果である。良いモノとお客様に感じさせ、是非使いたいと思わせ、使っていることに満足を与え続ける物語をつくり、ひれをお客様に提供し、結果として、お客様が「良いモノ」と認めてくれる。

そんなビジネス・デザインなくして、新しいビジネスが生まれることはないだろう。

■まもなく出版されます。

「システムインテグレーション崩壊 ~これからSIerはどう生き残ればいいか?」

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