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「セルフサービス型IaaS」と「フルサービス型IaaS」

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IaaSには、ふたつのサービス形態があることをご存知だろうか。ひとつは、セルフサービス型IaaS、もうひとつは、フルサービス型IaaSだ。これは、NISTの定義にはないが、我が国でサービスを提供しているIaaSは、概ねこのふたつのタイプに分類される。

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前者は、AmazonのAWS、Google のCloud Platform、IBM のSoftLayer、Microsoftの Windows Azure Platform、HPのHelion、NTTコミュニケーションズのBizホスティングCloudnなどに代表されるもので、標準化されたシステム・リソースや運用メニューから、ユーザー自らが調達や管理を行うタイプのサービスだ。NISTの定義にあるIaaSは、このタイプに該当する。

*NISTの「クラウドの定義(日本語訳・PDF)は、こちらからダウンロードできる。

後者は、SI事業者が提供しているサービスが多く、標準化されたシステム資源や運用管理メニューはあるものの、お客様の個別の要望に応じて、自由度の高い構成や運用管理サービスをカスタマイズして提供してくれる。NSSOLのabsonne、NTTコミュニケーションズのBizホスティングEnterprise Cloudなどが、これに該当する。

セルフサービス型IaaSは、ユーザー企業自身がシステム構築や運用管理のエンジニアを抱えている企業が使うサービスで、米国ではこのタイプが主流だ。

一方、フルサービス型IaaSは、システムの構築や運用をアウトソーシングしている企業には、便利なサービスで、我が国では、普及している。また、このタイプのサービスは、SI事業者が、自身の開発したシステムを、本番運用の受け皿として提供し、継続的なストック収益を上げるための手段として使用される場合も少なくない。

この違いは、どちらが優れているかと言った優劣の問題ではない。IT利用に対する日米の考え方の違いによるもので、後者のようなサービスが我が国で広く受け入れられているのは当然と言える。しかし、フルサービス型は、コスト高を招くことは避けられない。標準化されたシステムを自分で運用管理し安く利用するか、個別対応を依頼しコスト高を覚悟するかのトレードオフになることを覚悟しなければならない。

そんな両者の中間的位置づけとして、AWSやAzureなどのセルフサービス型IaaSを使い、これに構築や保守、運用管理サービスを付加し、お客様には、見かけ上フルサービス型IaaSとして提供するITベンダーも増えてきた。SCSK、NRI、日立製作所などは、自社でフルサービス型IaaSを提供する一方で、このようなサービスをも提供している。

トレンドを見れば、セルフサービス型IaaSに圧倒的な勢いがある。AWS、Google、IBM、Microsoft、HPといった米国クラウド・ベンダーは、千億円単位の投資で熾烈な争いを繰り広げている。残念ながら、我が国のITベンダーにそのような勢いは見られない。

NSSOLのabsonneようにSIと運用管理サービスを前面に押し立て、個々のお客様を強力に「お・も・て・な・し」できるクラウドサービスを提供するという戦略もないわけではないが、このようなことができる企業は限られている。結局は、コストパフォーマンスの高いセルフサービス型IaaSを仕入れ、独自の付加価値をセットにしたサービスを提供するという選択肢が残ることになるだろう。

ただ、こうなると、セルフサービス型IaaSの費用は丸裸にされ、そこからの高収益は期待できない。独自の付加価値で稼ぐしかないが、そこが人月だけで付加価値の少ない「作業」では、当然たいした利益など期待できない。如何にして、その付加価値を高めてゆくかである。

そのあたりのアイデアについては、追々このブログでも紹介してゆこうと思う。

 

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