ウェブサイトやイーコマースサイトへの導入を検討する価値がある5種類のビデオ
ブランド、小売り事業者、通販事業者などのB2C向けのビジネスをしている企業が自分たちのウェブサイトやイーコマースサイトにビデオを導入する場合、今すぐにでも検討する価値がある5種類のビデオがある。
● ブランド、小売り事業者、通販事業者が検討する価値のある5種類のビデオ
① プロダクトビデオ
② ブランディングビデオ
③ カスタマサービスビデオ
④ インタラクティブビデオ
⑤ ショッパブルビデオ
ウェブサイトやイーコマースサイトが達成しなければならない課題や目的、業種、ビジネスモデルによって、導入しなければならないビデオの種類は変わる。プロダクトビデオはオンラインショッピングサイトのコンバージョンレートを上げたい場合に、ブランディングビデオは消費者とのエンゲージメントを深めたい場合に、カスタマサービスビデオは電話やメールによる問い合わせを減らしたい場合に、インタラクティブビデオはユーザをキャンペーンサイトやスペシャルサイトに誘導したい場合に、ショッパブルビデオは商品をトータルコーディネイトで販売したい場合に向いている。
それぞれの種類のビデオについては記事でも何度か取り上げたが、新しい事例がたくさん見つかったので、改めて整理してみた。私の解説よりも実際に見るのが一番だと思うので、是非サイトにアクセスしてみてほしい。
1. プロダクトビデオ
プロダクトビデオは、写真やテキストだけでは伝えられない商品の機能、特徴、用途を説明するためのビデオだ。時間は30~60秒前後と短い。内容は、自社のスタッフが商品を手に取り説明するパターンが多い。イーコマースサイトに掲載している全ての商品にセットされているのが望ましいが、数多くのビデオを用意するにはかなりの制作コストがかかるため、ビデオの制作は自社で対応する場合が多い。
プロダクトビデオは、スタッフが話す商品の特徴や機能の説明が音声で耳に入ってくるのと、写真だけでは伝わらない質感や雰囲気が映像で目から入ってくるため、テキストや写真よりも情報量がかなり多い。そのため、プロダクトビデオには、写真やユーザレビューを見て商品の購入を迷っている買い物客の、商品購入の意思決定に大きな影響を与える効果がある。
プロダクトビデオを導入した企業からは、コンバージョンレートの向上、訪問客の滞在時間の増加、買い物客のリピート率向上などの効果が報告されている。
プロダクトビデオはイーコマースサイトに導入するものであるため、どんなでも業種にも導入できる。ただ、プロダクトビデオ導入先進国である米国の成功事例を調べると、アパレルのイーコマースサイトが多いのに気がつく。アパレル以外では、家具、ゴルフ用具、生活雑貨などのイーコマースサイトでもプロダクトビデオ導入の事例が多数報告されている。
コストがかからないのと、自分たちでも制作ができるため、イーコマースサイトにとっては最も導入が簡単なビデオだ。
● キディケアのプロダクトビデオ
● ジョイアスのプロダクトビデオ
2. ブランディングビデオ
ブランディングビデオは、ブランドや企業が大切にしている企業文化、ビジョン、商品コンセプト、ウェブサイトのイメージなどを伝えるためのビデオだ。時間は30秒前後が多く、プロダクトビデオよりも短い。内容は、コマーシャルと変わらないクオリティが求められるため、広告代理店や映像製作会社が間に入る場合が多い。コストもそれなりにかかるが、自社対応はほとんど考えられない。ビデオの本数も、最高のブランディングビデオが1本あれば十分である。
ブランディングビデオは、ブランドまたは商品のファンに送るメッセージだ。ファンが永遠に自分たちのファンでい続けてくれるロングエンゲージメント効果がある。ブランディングビデオは、プロダクトビデオのように直接コンバージョンレートの向上に効果はないが、目に見えないブランドイメージの維持と向上に効果がある。
ブランディングビデオは、ブランドや企業のウェブサイトに導入するものであるため、プロダクト
ビデオと違って商品を選ぶ。また、イーコマースサイトよりはウェブサイトやスペシャルサイトに
導入する事例が多い。業種として最も相性が良いのは、世界中に大勢の顧客がいるブランドだろう。小売り業の中では、ブランドイメージを大切にするアパレルが向いている。
3. カスタマサービスビデオ
カスタマサービスビデオは、先に取り上げたプロダクトビデオやブランディングビデオと比べるとかなり違った性質を持っている。カスタマサービスビデオの内容は、オンラインショッピングサイトを利用する買い物客からの電話やメールによる問い合わせや質問に対する回答がほとんどだ。例としては、商品の操作方法、商品の組み立て方法、商品の返品方法などがある。時間に制限はなく、10分を超えるものも珍しくない。演出やイメージは問われないため、プロダクトビデオと同じように自社のスタッフが自ら主演して制作する場合が多い。
カスタマサービスビデオは、商品を購入した買い物客からの電話やメールでの問い合わせや質問への模範回答である。頻繁に発生する問い合わせや質問への回答を中心にしているので、電話やメールでの問い合わせ件数が減り、カスタマサポートにかかるコストが抑制できる効果がある。また、初心者や女性などに多い、商品の組み立て方法や操作方法がわからないという理由で商品を返品する件数が減り、商品返品率が下がる効果も報告されている。
プロダクトビデオとブランディングビデオが商品の売上向上やイメージアップなどの前向きな効果をもたらすのに比べると、カスタマサービスビデオは地味な印象を持たれてしまいがちである。しかし、カスタマサポートにかかるコストの抑制や商品返品率の低下は、結果としてイーコマースサイトの利益につながるため導入の効果は高い。
カスタマサービスビデオは、FAQを用意している全てのイーコマースサイトに導入が検討できる。ブランドやアパレルよりは、組み立て方法や操作方法が難しいアウトドア用品、家具、電化製品、コンピュータなどのジャンルに向いている。
● クラッチフィールド・エレクトロニクスのカスタマサービスビデオ
4. インタラクティブビデオ
インタラクティブビデオは、ブランドや企業が指定したシーンで一旦再生が止まり、ユーザが次のアクションをクリックして選べる双方向タイプのビデオだ。今まで紹介してきたプロダクトビデオ、ブランディングビデオ、カスタマサービスビデオは、視聴することをやめない限りはそのまま見続けるしかないが、インタラクティブビデオは、次に見るビデオを選んだり、広告であればスキップもできる。コンテンツの企画力が重要なため、制作は外部に委託する。よって、制作コストはビランディングビデオと同じようにそれなりにかかってしまう。
インタラクティブビデオは、ここで取り上げた5種類の中で最もコンテンツ色が強い。プロダクトビデオのように直接売上に貢献したり、カスタマサービスビデオのように問い合わせ件数を減らすなどの目に見える効果はない。ファンサービスの要素が強いことから、ブランディングビデオと同じようにブランイメージの維持と向上に効果がある。
インタラクティブビデオそのものは、2008年頃からYouTubeに投稿されており別に新しいものではない。ただ、最近のインタラクティブビデオビデオは、より娯楽性が強くなっており、ゲームとして楽しめるインタラクティブビデオも登場している。
ユーザを誘導するためのトリガーとしての効果が期待できるため、オンラインショッピングサイトよりは期間限定のキャンペーンサイトやスペシャルサイトへの導入が向いている。コンテンツ色が強いことから、業種はあまり選ばない。海外でも、アパレル、自動車、食品、製造などの導入事例が報告されている。
5. ショッパブルビデオ
ショッパブルビデオは、昨年頃から導入するブランドが目立つようになった新しいタイプのビデオだ。ビデオ単体としてではなく、コンテンツとしても十分に楽しむことができる。モデルが着ている洋服をマウスでクリックすると、その洋服の商品説明ページに飛び、そのまま商品が購入できてしまう、プロダクトビデオとインタラクティブビデオの両方の機能を持ち合わせているビデオである。プロのモデルを起用して制作も外部に任せるため、制作コストはビランディングビデオと同じようにそれなりにかかってしまう。
ショッパブルビデオを導入することで、オンラインショッピングサイトは、今までのように商品を
単体で販売するのではなく、トータルコーディネイトで販売することができる。また、買い物客に
、今まで経験したことがないわくわくするようなショッピング体験を提供できる。
ショッパブルビデオは、ビデオを中心としたミニオンラインショッピングサイトだ。ブランド、シ
ーズン、セールなどの特定した商品をトータルで販売したい場合に効果がある。また、帽子、トップス、ボトム、靴をトータルコーディネイトで販売したい場合にも効果がある。よって、低価格・大量販売の商品よりは、ブランドなどの高級品やアパレルなどに向いている。
制作コストさえ下がれば、今後導入するブランドや企業は増えてくるはずだ。タブレットでアプリと組み合わせて利用するのにも向いている。