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イーコマースとソーシャルコマースにとってオンラインビデオはなぜ重要なのか?

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オンラインビデオの洪水が、私たち消費者のオンラインショッピング経験を大きく変えようとしている。ほんの少し前までは、オンラインショッピングを利用する上で購入のデシジョンをサポートする重要なコンテンツと言えば、商品の詳細な特長を伝えるテキストと、商品をできるだけ魅力的に見せようとする写真だった。そして、それを補完するユーザの評価とレビュー。

今までのオンラインショッピングを利用する消費者は、ほとんど以下のプロセスで、商品を購入する際のデシジョンを行っていたと言っても過言ではない。それは、イーコマースサイト上の商品カタログページに用意されている、商品の特長を伝えるテキストや評価・レビューを読んでその商品の仕様、品質、使用感などを確認し、更に写真を見てその商品のデザインや色などを確認する。

このスタイルは、アマゾンが登場してからほぼ10年間も続くことになる。オンラインショッピングにおけるコンテンツの王様は、長年に渡ってテキスト、写真、評価・レビューが独占し続けてきたのである。しかし、このほぼ10年間変わることなく続いてきたオンラインショッピングのスタイルが、オンラインビデオが普及することによって、今まさに変わろうとしている。

商品の質感、耐久性、機能などを伝えるプロダクトビデオ、返品の方法や商品の使い方を説明するカスタマサービスビデオ、消費者が商品の感想を直接評価・コメントするハウルビデオなど、オンラインビデオが重要なコンテンツとして存在感を増してきている。そして、このようなオンラインビデオをコンテンツの一部に取り込んでしまうというイーコマースサイトの新しいスタイルは、今後もさらに加速して行きそうな勢いを見せている。

そこで今回は、なぜオンラインビデオがイーコマース及びソーシャルコマースにとって重要なコンテンツなのかという、オンラインビデオの導入を検討する上で避けて通ることができない、最も重要で本質的な問題を明らかにしたいと考えている。オンラインビデオが持つ重要性を理解することで、少しでもオンラインビデオを導入するオンライン小売者が増えることを願っている。

■ オンラインビデオとは

本題に入る前に、まずオンラインビデオとはそもそも何なのかということを明らかにしておきたい。オンラインビデオの定義、オンラインビデオの種類、オンラインビデオの特長などを明らかにすることで、オンラインビデオの重要性が自然と見えてくるからである。ここでは、オンラインビデオを以下の通り定義する。

  •  オンラインビデオとは、インターネット環境を利用して流通・視聴するビデオの総称である。

「インターネット環境を利用して流通・視聴する」としてあることから、オンラインビデオには、インターネット環境を利用して一度ダウンロードし、ダウンロードし終わった後に、ローカルな環境で視聴するビデオも含まれると考えるのが正しい。そしてオンラインビデオの種類は、どうカテゴライズするかによって、大きく3つのパターンに区分することができる。

① 視聴環境:有料 or 無料

オンラインビデオを視聴するユーザの立場から見て、有料サービスと無料サービスに区分することができる。例えば、米国では有料のオンラインビデオサービスが、かなりの勢いでユーザ数を伸ばしている。例えば、iTune、アマゾン、ネットフリックス、最近日本でもサービスを開始したHuluなどが有名だ。日本でもNHKや一部のテレビ局が有料のオンラインビデオサービスを提供しているが、米国ほど成功しているとは言い難いのが現状である。

一方、無料のサービスは、一般企業がYouTubeを利用したり有料のビデオ配信プラットフォームアービスを利用して、自社のウェブサイト、イーコマースサイト、フェイスブックストア上で、テレビコマーシャル、プロダクトビデオ、カスタマサービスビデオ、ハウルビデオなどを配信する利用方法が一般的である。ユーザは、全て無料で視聴することができる。業種を問わず、様々な企業が試みている利用方法だと言っていいだろう。

イーコマースとソーシャルコマースで利用されるオンラインビデオは、無料のオンラインビデオサービスに分類される。

② コンテンツ:エンターティンメント or エンタープライズ

配信するオンラインビデオの内容を基準にして、エンターティンメントビデオとエンタープライズビデオに区分することができる。エンターティンメントビデオとしては、映画、ドラマ、ミュージッククリップ、ドキュメンタリーなどのコンテンツがあげられる。ユーザが、楽しみや娯楽のために視聴するオンラインビデオだ。そして、どちらかというと、エンターティンメントビデオは有料サービスとして提供されることが多い。

一方、エンタープライズビデオは、企業が消費者や取引先に向けて配信する、テレビコマーシャル、プロダクトビデオ、カスタマサービスビデオ、ハウルビデオなどのコンテンツがあげられる。ほとんどが、自社のウェブサイト、イーコマースサイト、フェイスブックストア上から無料で配信される。

イーコマースとソーシャルコマースで利用されるオンラインビデオは、エンタープライズビデオに分類される。

③ 流通場所:自社のウェブサイト or ソーシャルメディア

オンラインビデオを流通する場所を基準にして、自社のウェブサイトから配信するタイプとソーシャルメディアから配信するタイプに区別することができる。ここで言う自社のウェブサイトには、企業のコーポレートサイト、イーコマースサイト、コンテンツの配信・ダウンロードサイトなどが含まれる。視聴環境によって区分した、有料サービスと無料サービスの両方のパターンが考えられる。また、コンテンツの種類でもエンターティンメントビデオとエンタープライズビデオの両方が考えられる。

一方、ソーシャルメディアから配信するタイプは、YouTubeやフェイスブック上から配信するパターンがほとんだ。視聴環境によって区分した有料サービスは、ほとんどが自社のウェブサイトから配信されることから、ソーシャルメディアを流通場所として利用するのは、主に無料サービスということになる。コンテンツの種類は、アーティストがミュージッククリップを配信する場所と活用していることから、エンターティンメントビデオとエンタープライズビデオの両方が、流通場所として利用していることになる。

イーコマースとソーシャルコマースで利用されるオンラインビデオは、自社のウェブサイトとソーシャルビデオの両方に該当する。

以上が、オンラインビデオを視聴環境(有料か無料か)、コンテンツ(エンターティンメントかエンタープライズか)、流通場所(自社のウェブサイトかソーシャルメディアか)といった3つのポイントから捉えた場合の分類方法になる。このようなポイントから分類してみることで、オンラインビデオが多様な特長を持っているということを理解することができる。

■ イーコマースとソーシャルコマースにおけるオンラインビデオの重要性

では、次にイーコマース及びソーシャルコマースにとって、オンラインビデオがな重要なのかという理由について考えてみたい。オンラインビデオの重要性を明らかにすることで、オンラインビデオに対する重要性の高まりが、ソーシャルメディアの人気に乗じた一過性のブームではなく、今後何十年も続くであろうと思える重要なトレンドであることを理解してもらえるはずだ。

① エモーションを創造する

オンラインビデオは、テキストや写真などのコンテンツに比べて、人間のエモーショナルな部分のより奥深くに入り込むことができる。それは、オンラインビデオだけが、人間の耳と目に同時に情報を提供できるからだ。しばしば、オンラインビデオの持つリッチコンテンツ性が話題になるが、リッチコンテンツだからオンラインビデオが重要なのではなく、リッチコンテンツであるために、視聴した人間のエモーショナルを創造することができる点が重要なのである。

オンライショッピングにおいて、このオンラインビデオが持つエモーショナルな創造性は非常に高い効果を発揮する。イーコマースサイトやフェイスブックストアに配置されているプロダクトビデオが提供するのは、ただ単に商品をより詳しく説明することができるという効果だけではない。自社のスタッフが、直接映像と音声を使って商品の魅力を語りかけることで、消費者の心の奥深くに潜んでいたエモーショナルな意識を呼び起こし、商品購入のためのデシジョンに重要な影響を与えることができるという効果を生む。

また、消費者が自分でクリエイトするハウルビデオにいたっては、プロダクトビデオ以上にエモーションを創造することができる。ハウルビデオは、消費者が商品を購入するに至った経緯、実際にサイトを利用してみた感想、届いた商品を使ってみた使用感などを、リアルに映像と音声とで語りかけるオンラインビデオである。このハウルビデオは、単なるテキストで表現された評価・レビューと違って、見た者のエモーショナルな部分を一瞬で刺激するという効果を持っている。

消費者に生まれたエモーションは、販売にプラスの効果をもたらす以外に、ブランドと消費者の間に親密な関係を築くという効果を持っている。いわゆる、エモーショナル・ファンが創造に大きな貢献を果たすのである。

② ストーリーを短時間で表現できる

オンラインビデオは、テキストや写真と違って、ストリーを表現することができる。しかも短時間で。テキストもストーリーを表現することは可能だが、膨大な情報量となるため、理解するまでに相当な時間を要することになる。映像と音声を使って、短時間でストーリーを表現できるのはオンラインビデオだけだ。

オンライビデオには連続性がある。そもそも映像自体、テキストと写真を連続的に表現したものである。写真のように、その瞬間を表現するよりも、連続したストーリーを表現することに向いている。しかも、表現力が豊かであることから、視聴した人間は、そのストーリーを短時間で理解することができる。

このオンラインビデオの持っているストーリー性は、ブランドの歴史、ビジョン、カスタマサービスの内容などを説明する際に非常に高い効果を発揮する。例えば、企業が提供する情報の中には、読んだけでは簡単に理解することが難しい内容のものが少なくない。オンラインビデオは、そうした比較的理解することが困難な内容のコンテンツを、ストーリー性を持って表現することに向いてる。

③ 真実を伝えることができる

オンラインビデオは、真実を伝えることに向いている。もちろん、テキストと写真も真実を伝えることは可能だ。テキストと写真では、真実を伝えることが難しいという意味ではない。ただ、テキストと写真は、オンラインビデオに比べれば修正が遥かに容易だ。また、テキストや写真は、作成した人間を偽ることができるが、オンラインビデオは、内容はともかく作成した本人が顔を出すことで責任だけは明確になる。

例えば、評価やレビューは、やり方によっては他人に依頼し、偽りの高い評価とレビューをポストしてもらうことが可能だ。それは、実名と顔を隠すことができるからに他ならない。ところが、オンラインビデオを利用した評価とレビューは、たとえ依頼されたとしても、顔を公開しなければならない。そのオンラインビデオに登場している人間が語っているという事実だけは、隠しようがないのである。

このオンラインビデオが持っている、真実を伝えることができるというメリットは、今後普及が見込まれるハウルビデオや、ブランド対消費者、または消費者同士がエンゲージメント(交流)するための利用方法として効果を発揮するだろう。

以上が、イーコマースとソーシャルコマースにとってのオンラインビデオの3大重要性だ。この3つ以外にも、ユビキタスな環境で視聴できる、ソーシャルメディアでシェアされやすい、SEO効果が高いなどがあげられるが、最も重要なポイントは上の3つである。この3つの重要性が、オンラインビデオの存在価値を高めていると言って間違いない。

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