海外アパレル大手3ブランドのF-コマース対応を比較。Urban Outfitters、ZARA、H&Mのフェイスブック活用度合いは?
今回は、世界規模でビジネスを展開している、アパレル大手のUrban Outfitters、ZARA、H&MのF-コマース対応について比較してみた。Urban Outfitters以外のZARAとH&Mについては、日本でも店舗を展開しているので興味があるところだ。結果は、意外なことに3者3様。それぞれの特長が出ていて面白い結果となった。
【1】 Urban Outfitters(http://www.facebook.com/urbanoutfitters)
まずは、F-コマースで成果を上げている事例から紹介したい。Urban Outfittersは、日本にまだ進出していないこともあって、知名度はいま一つかもしれないが、世界的な規模で見れば本国アメリカ以外にカナダ、アイルランド、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、ベルギー、イギリスに出店している世界的なアパレルブランドとして知られている。
1970年に設立され、元々は自社ブランドを中心に扱っていたが、最近はエヴィスジーンズ、ラコステ、ディーゼルなどの他ブランドや、iPhoneケースや家具なども扱っている。どちらかと言えば、セレクトショップに近い業態にシフトしてきている。このUrban Outfittersだが、オンライン販売に力を入れているブランドとしても知られている。つい最近発表された第2クォーターの業績が、それを如実に物語っている。なんと、全体の売上が対前年比で20.9%も落ち込んでしまったにもかかわらず、オンライン販売による売上は反対に16.6%も伸びているのだ。
そして、このオンライン販売の売上増にF-コマースが貢献しているという報告が、最近アナリストたちから発表され、業界で話題になっているらしい。ということで、早速Urban Outfittersのフェイスブックショップを調べてみたところ、他のショップにはないちょっと面白いコンテンツを取り入れていることがわかった。
※ 情報ソース元 ⇒ ニューヨーク・ファッション
① 商品購入ページへのリンクが可能なショップマガジン
8月25日にローンチしたばかりの、ショップマガジンというコンテンツがあるのだが、これがなかなか面白い。「THE EARLY FALL OUTFIT GUIDE」というタイトルのスライド式のコンテンツで、クリックすることで8人のモデルの写真を見ることができるようになっている。しかも、ただのカタログではなく、そのモデルの商品のパーツをクリックすると、それぞれの商品の購入ページにリンクされる仕組になっているのだ。
つまり、写真のシャツの部分でクリックすればシャツの購入ページにリンクされ、靴の部分でクリックすれば靴の購入ページにリンクされるわけである。この機能は実際に使ってみるとかなり面白い。また、このショップマガジンは、メニューとして個別に用意されているのではなく、「いいね!」ボタンを押したユーザのニュースフィードにポストされる仕組になっている。この点も、今までのフェイスブックショップにない方式を導入していて特長的だ。
このショッピングマガジン、8月25日のレディス版に続いて、9月2日にはメンズ版も公開されている。是非試してみてほしいコンテンツだ。
② 商品購入ページへのリンクが可能なインタラクティブカタログ
もう一つ商品購入ページへのリンクが可能なコンテンツとして、インタラクティブカタログと彼らが呼んでいる、写真をクリックすることで該当する商品の購入ページにリンクされる仕組がある。この写真も、ショップマガジン同様ニュースフィードにポストされてくるので、簡単にクリックして使ってみることが可能だ。
Urban Outfittersの場合、、フェイスブックショップ内で決済が可能な最近のF-コマースの事例と違い、既存のウェブサイトとの密な連携を最大限に利用したモデルである。しかし、細部に渡ってUrban Outfittersらしい工夫が施されている点が、ユーザ視点で見て面白いと感じた。今後も面白いコンテンツをいろいろ発表してほしいものである。
【2】 ZARA(http://www.facebook.com/Zara)
現時点で、ZARAはF-コマースには対応していない。フェイスブックファンページにアクセスしてみればわかるのだが、ビデオと写真以外に見るべきコンテンツもなく、他のF-コマースに対応しているブランドと比較すると、どうしても内容的にも機能的にも見劣りしてしまう。ところが、ページをよく見てみたところ、9月6日に「ショップ・オンライン・US」と名付けられた、F-コマース機能を実装したフェイスブックストアをローンチすることがアナウンスされていたのである。
ZARAのフェイスブックページで、左メニューの一番下にある「Shop Online US」というボタンをクリックしてみてほしい。9月6日にオープンするというアナウンスのページが現れるはずだ。メールアドレスを登録しておくと、オープンしたことを知らせる招待状が届くしくみになっている。
ZARAは、スペインのアパレルグループINDITEX傘下のブランドだ。男女はもちろん、子供服も展開している安価なファストファッションブランドとして、日本国内でも人気が高い。実は、ZARAの親会社であるINDITEXは、全世界78カ国に5,154の店舗を構えている上に、2010年度の売上高も2,960ミリオンユーロ(対前年比11%増、利益は9%増)という世界でもトップクラスのアパレルグループである。
ただ、そのINDITEXグループ唯一の泣き所と言ってもいいのが、米国市場において苦戦していることだ。ちょっとビックリしたのだが、米国での売上は全体の11%しかないとのこと。そして、その米国でのシェア拡大のために計画されたプロジェクトが、9月6日にオープンするZARAの「Shop Online US」ということになるらしい。
アナリストの見解によれば、ZARAブランドは、米国内に50の新しい店舗を出すよりもF-コマースを選んだということになる。つまり、INDITEXグループにとって、今回オープンするフェイスブックストアは、米国市場での浮沈をかけた一大プロジェクトということになるわけだ。
このZARAの「Shop Online US」については、オープン後にまた改めて紹介したいと思う。
※ 情報ソース元 ⇒ ブルームバーグ・ビジネスウィーク
【3】 H&M(http://www.facebook.com/hm)
最後に紹介する、日本でもファンが多いH&Mもオンライン販売の対応が遅れているブランドになる。フェイスブック内にファンページは用意してあるものの、ショップはまだオープンしていない。情報によれば、2012年の春にフェイスブックショップのオープンが予定されているとのことだ。
そんなH&Mだが、最近ファッション雑誌のElle.comとのコラボレーションによるオンラインショッピングサイト「H&M and ELLE Present Stylelist」をオープンし、業界内で話題を呼んでいる。機能的には普通のオンラインショッピングサイトなのだが、早速成果が出ているという報告が発表されている。
H&Mのスポークスマンのコメントによれば、今後もオンライン販売の比率を高めて行きたいということなので、F-コマースへの対応もスピードを上げてくるかもしれない。コマース以外のコンテンツに関して言えば、比較的面白い内容のものが揃っているので、今後に期待したいところだ。
※ ElleとのコラボレーションECサイト ⇒ H&M and ELLE Present Stylelist
【4】 今回のまとめ
日本でも有名なファストファッションの2大ブランドZARAとH&Mが、F-コマースはおろか、Eコマースへの対応も最近始めたばかりだという事実にはかなり驚かされた。両ブランドとも、リアルな店舗に頼り過ぎてきたことが、Eコマースへの対応の遅れを招いてしまったのだろうか。
ただ、両ブランドとも、フェイスブックファンページのファンの数は、F-コマースの分野で先行する先行するUrban Outfitters以上である(Urban Outfitters:802,840人、ZARA:10,007,738人、H&M:8,115,238人)。そう意味では、やり方次第では両ブランドともかなりの成功が期待できると言っていいだろう。
それにしても、9月6日オープンするZARAの「Shop Online US」が楽しみだ。一体、どんなF-コマースの世界を見せてくれるのだろう。
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