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ソーシャルビデオコマースは確実にローンチした<Social Video Commerceに関するまとめ>

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今回は、ソーシャルビデオコマースについて、実際の事例を紹介しながら、その可能性について考えてみたいと思う。なぜなら、最近多くの事例が報告されているソーシャルコマース、F-コマースの分野において、ソーシャルビデオが顧客とのコミュニケーションを実現するための方法として、かなり重要な役割を果たしているからだ。ソーシャルビデオの存在なくして、ソーシャルコマースとF-コマースの成功などあり得ないと言っても、決して過言ではないということを理解してもらえるはずだ。

そこで今回は、以下3つのポイントについて明らかにしたいと思う。

 ① ソーシャルビデオコマースとは何か

 ② ソーシャルビデオコマースの事例

 ③ ソーシャルビデオコマースの今後と可能性

それでは、ソーシャルビデオコマースについて順番に追ってみたいと思う。

 

【1】 ソーシャルビデオコマースの概要と特長

まず、ソーシャルビデオコマースについて明らかにすることから始めたい。ソーシャルビデオコマースとは、ソーシャルビデオを本格的に活用した、ソーシャルコマースまたはF-コマースである。2種類のソーシャルビデオ、ブランディングビデオとイーコマースビデオ(プロダクトビデオ、ユーザーサポートビデオ、ハウルビデオ)を必ずフェイスブックページに用意した、ソーシャルビデオ中心のコマースモデルのことを言う。

では、ソーシャルビデオコマースにおいて、ソーシャルビデオが果たす役割とは何か。それは、ソーシャルビデオが持っている特長の一つであるインタラクティブ性を活かし、コミュニケーションとコミュニティに基づいたコマースモデルを作り上げることに他ならない。そして、ソーシャルビデオコマースは、ソーシャルビデオの公開から取引が始まるまでの間、以下のプロセスを繰り返すことになる。

 ● ソーシャルビデオコマースのプロセス

 ①ビデオ ⇒ ②会話 ⇒ ③親近感 ⇒ ④信頼関係 ⇒ ⑤購買・取引

詳細については以下の図を参照してほしい。

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次に、ソーシャルビデオコマースの特長についても触れておきたい。ソーシャルビデオコマースで使用するビデオの種類は、圧倒的にプロダクトビデオが中心となる。ただ、今まで紹介してきたザッポスに代表されるようなイーコマースビデオとは、ビデオを視聴してから商品を購入するまでのプロセスに違いが出てくる。

ザッポスを始めとしたイーコマースビデオを導入したイーコマースやソーシャルコマース(F-コマース)の場合、商品紹介ページに配置されているプロダクトビデオを見終わった後、商品紹介ページに一度戻ってから商品購入ページに移動することになる。つまり、プロダクトビデオから直接商品購入ページに移動することができない仕様になっている。

いろいろな商品をプロダクトビデオを見て確認してから、購入する商品を決めたいという時などはこの仕様でも問題ないのだが、プロダクトビデオを見終わった後すぐに商品購入ページに移動したい時は、このプロセスは多少不便に感じてしまう。プロダクトビデオ上に、商品購入ページに移動するためのリンクボタンがあればこの不便さが解消されるわけで、ソーシャルビデオコマースのプロダクトビデオにはその機能が実装されている。

よって、通常のイーコマースサイトやソーシャルコマース(F-コマース)でプロダクトビデオを用意する際は、ビデオ配信プラットフォームとしてYouTubeの利用も考えられるが、プロダクトビデオがコンテンツの中心となるソーシャルビデオコマースの場合は、YouTubeではなく有料のビデオ配信プラットフォームを利用することが必要条件となる。

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【2】 フェイスブックページを利用したソーシャルビデオコマースの事例

次に、フェイスブック内でソーシャルビデオコマースを実現している、実際の事例を紹介したい。

(1) Advance Auto Parts 

   http://www.facebook.com/advanceautoparts

フェイスブックファンページの左メニューの上から5番目に「Videos」という項目がある。それをクリックすると、Videosページが表示される。次に、どれでもいいので、ページ上のサムネイルをクリックしてみてほしい。ビデオ再生プレイヤーが立ち上がり、再生ボタンをクリックすることでプロダクトビデオの再生が始まる。

ここで注目してほしいのは、ビデオ再生プレーヤーの右下にある「Buy Now」という黄色いボタンだ。この黄色いボタンをクリックすると、商品の写真が表示される。そして、その商品の写真をクリックすると商品購入ページへのリンクが表示され、そのリンクをクリックすることでadvanceautoparts.comの商品ページに移動し、そのまま商品を購入することが可能になっている。

このAdvance Auto Partsのフェイスブックファンページのプロダクトビデオは、米国のLiveclickerというビデオ配信プラットフォームを利用しているらしく、インタフェースとプロセスがやや複雑な気がする。フェイスブックが提供してるAPIを利用して、もう少しシンプルな実装を実現することも可能だ。

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以下は、同じような実装を実現している、その他のフェイスブックページを利用したソーシャルビデオコマースの事例になる。是非アクセスして、プロダクトビデオを再生してみてほしい。

(2) OnlineShoes.com

   ※ソーシャルビデオコマースとしては、ザッポスの上を行く靴のオンライン小売事業者。

   http://www.facebook.com/Onlineshoescom

(3) eBags

   ※ バッグ専門のオンライン小売事業者。フェイスブック内にショップもオープンしている。

   http://www.facebook.com/eBags

(4) The Vitamin Shoppe

   ※ ビタミン専門のオンライン小売事業者。インタフェースが上記の3つよりもシンプル。

   http://www.facebook.com/THEVITAMINSHOPPE

いずれのサービスも、プロダクトビデオがフェイスブックファンページの中心的な役割を担うコンテンツとして配置されていることがわかる。たとえば、つい最近ローンチしたばかりの、会員制のアパレル専門イーコマースサイトであるギルトのフェイスブックショップにおける、ビデオの使い方と比較してみると面白い。ギルトがフェイスブックショップに配置しているソーシャルビデオは、ブランディングビデオに分類されるもので、配信プラットフォームもYouTubeを利用している。また、先の事例で紹介したようなリンクボタンもない。

以前紹介したトリンプとラコステも、ギルトと同じようにビデオを活用していたことから、アパレルはまだブランディングビデオとしての活用方法の方が多いようだ。

※ ギルトのフェィスブックショップ ⇒ http://www.facebook.com/GiltGroupe

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【3】 ソーシャルビデオコマースの今後と可能性

最後に、ソーシャルビデオコマースの可能性について考えてみたい。ソーシャルビデオコマースは、先に紹介した事例からもわかる通り、現時点ではフェイスブックファンページを利用するケースがほとんどである。よって、ソーシャルコマースがF-コマースと言い換えられるように、ソーシャルビデオコマースもF-ビデオコマースまたはフェイスブックビデオコマースと言い換えることができる。

では、ソーシャルビデオコマース(F-ビデオコマース)は、果たして今後普及して行くのだろうか。私は、コマースに特化したソーシャルビデオの活用方法として、今後も数多くの事例が登場してくると考えている。そう考える理由は以下の通りだ。

■ ソーシャルビデオコマースが普及すると考える3つの理由

① ビデオの公開機能が標準で用意されている

フェイスブックには、ビデオの公開機能が標準で用意されている。ビデオコマースを始めるに当たって、フェイスブックに標準で用意されているこのビデオ公開機能は、フェイスブック内にコマースビデオを導入する障壁をかなり取り除いてくれる。このことは、イーコマースサイトにビデオを導入する際の大変さを考えてもらえればわかるはずだ。

イーコマースサイトの場合、ビデオの公開機能が用意されていないため、YouTubeや有料のビデオ配信プラットフォームを利用しなければならない。作業的には大したことはないのだが、フェイスブックのように何もせずにビデオの公開ができるのは、イーコマースサイトを運営する側から見ればやはり負担が少なくて嬉しい。

特に便利なのが、ウェブカメラがあれば簡単に撮影もできてしまう点だ。ビデオの撮影からアップロード作業まで、全ての作業をフェイスブックが提供している標準機能で行えるのは、ビデオコマースを始める上でかなり便利である。簡単なプロダクトビデオを制作したり、ユーザがハウルビデオを制作する時などに活躍しそうだ。また、アップロードできるビデオのファイル形式が豊富な上、再生時間も20分までと比較的長い。ちょっと長めのカスタマサービスビデオを公開したい時なども、これであれば全く心配ない。

以上のことからも明らかなように、フェイスブック自体がビデオの利用に向いているという点が非常に大きい。ビデオを利用しないのが勿体ないくらい、フェイスブックはビデオを非常に重要視しているサービスであると言える。つまり、ソーシャルコマース及びF-コマースは、ビデオの存在なしでは考えられないコマースモデルだと言っていいだろう。

② ビデオに対する反応がすぐにわかる

フェイスブックはインタラクティブだ。よって、ファンページ上に公開したビデオを見た顧客の評価やコメントをすぐに取得することができる。この、顧客のビデオに対する反応がすぐにわかる点は、ビデオコマースを始めるに当たって非常に重要である。なぜなら、ビデオに対する反応を、次のビデオの制作に活かすことができるからだ。ソーシャルビデオは、基本的にブランド側と顧客側が共同で創り上げるものである。よって、常に顧客の反応を気にかけておく必要がある。

顧客からの反応をビデオの内容に反映させることは、質の高いソーシャルビデオを生み出すために欠かせない作業の一つだ。ソーシャルビデオを公開するプラットフォームとして、顧客からの反応がすぐに取得できるフェイスブックほど最適なものはない。

③ 最高のファンサービスが提供できる

フェイスブックを利用するユーザは、ビデオのようなリッチコンテンツを求めている。よって、ファンページやフェイスブックショップ内にビデオがあるかどうかは、訪れたユーザに満足してもらえるかどうかという点で非常に重要になってくる。普段からビデオに慣れ親しんでいるフェイスブックユーザにとって、あって当然の場所にビデオがないことは非常に不自然なことだ

ソーシャルビデオは、フェイスブックファンページやフェイスブックショップに「いいね!」ボタンを押してくれたユーザを、単なるユーザ以上のファンにするために欠かすことができないコンテンツである。最高のファンサービスを提供するためにも、ソーシャルコマース及びF-コマースにおいて、ビデオほど重要な意味を持つコンテンツはないと言ってもいいだろう。

【4】 今回のまとめ

最近ローンチしたF-コマースの事例を見ているとわかるのだが、使い方は千差万別ではあるものの、ページ内にビデオを用意していないフェイスブックショップはほとんどないと言っていい。フェイスブックショップを開設したブランド側がビデオの重要性を十分に理解していることと、フェイスブックにビデオの公開機能が標準で用意されていることが原因ではないかと考えている。

ビデオが当たり前のように導入されている現状から見て、あとポイントになってくるのは、ビデオの使い方だろう。ソーシャルビデオコマースは、ビデオをコンテンツの中心に据えたいと考えている小売事業者にとって、検討してみる価値があるコマースモデルであることは間違いない。

ソーシャルビデオコマースが持っている最大の価値は、ユーザや顧客をファン化することができる点にある。ソーシャルコマースとF-コマースの目的が、コミュニティ上での販売とファンの創造であることを考えれば、両方にとってビデオが重要な意味を持ってくることは必然である。そういう意味では、今後どんなユニークなソーシャルビデオコマースが登場してくるのか楽しみでしかたがない。

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