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イーコマースサイトにおけるソーシャルビデオマーケティング導入の成功事例。商品の返品率が下がったキディケア

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今回は、英国のオンライン小売事業事業者キディケアの事例を紹介したい。キディケアは、ベイビー用品専門のイーコマースサイト、キディケア・ドットコムを運営する英国のオンライン小売事業者だ。今年の2月に、やはり同じ英国の、モリソンというスーパーマーケットを運営す企業グループに買収されたニュースが話題になったことが記憶に新しい。

このキディケア・ドットコム、他店舗の方が安いことがわかるとプライスマッチに応じてくれたり、eメールでの質問には24時間以内で回答をくれたりと、カスタマーサービスの良さが評判のイーコマースサイトとしても有名だ。日本にファンが多いことでも知られている。

そして何よりも、ソーシャルビデオマーケティングを導入して大成功を収めたイーコマースサイトとして、最近業界でもかなり注目を集めるようになっている。しかも、始めてソーシャルビデオを導入したのが2006年ということで、ザッポスよりもかなり以前からソーシャルビデオを導入していたことになる。では、キディケア・ドットコムのソーシャルビデオマーケティング成功の秘密はどこにあるのか、そのポイントとノウハウを早速紹介しよう。

【1】 プロダクト、カスタマーサービス、カスタマーレビューの3種類のビデオを提供

キディケア・ドットコムは、プロダクトビデオ、カスタマーサービスビデオ、カスタマーレビュービデオの3種類のビデオをイーコマースサイト上に用意している。それぞれ3種類を順番に解説したい。

※ キディケア・ドットコム ⇒ http://www.kiddicare.com/

① プロダクトビデオ

プロダクトビデオは、キディケア・ドットコムが提供するビデオの中で、一番数の多い中心的なビデオだ。ほとんどの商品に用意されているが、サムネイルが小さいので少しわかりづらいかもしれない。見てもらえればわかると思うが、商品の機能や特長を伝える典型的な内容のプロダクトビデオだ。

キディケア・ドットコムのプロダクトビデオには、ザッポスなどの他のイーコマースサイトにはない特長がある。それは、ほとんどの商品に、プロダクトビデオが複数用意されていることだ。商品購入ページの上部左にあるサムネイルがそれで、簡単にスタッフが商品を紹介するプロダクトビデオと、商品の細部を詳細に説明するプロダクトビデオの2種類が用意されている。商品によっては、3種類のプロダクトビデオが用意されているものもある。

この複数用意されているプロダクトビデオを見つけた時は、正直言ってかなり驚いた。ことプロダクトビデオだけに関して言えば、このキディケア・ドットコムのプロダクトビデオは、ザッポス以上だと言っていいだろう。下の図を見ながら、是非視聴してみてほしい。

念のため、プロダクトビデオが見れる商品購入ページも紹介しておく。

⇒ Chicco Liteway Stroller - Glamour

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② カスタマーサービスビデオ

商品の発送などのカスタマーサービス関連の流れを説明しているビデオで、数はそんなに多くない。最上部の”トラックオーダー”や”ヘルプ”をクリックすると、右部分にカスタマーサービスビデオが表示される。カスタマーサービスビデオに関して言えば、質量ともにザッポスの方が上だろうか。

③ カスタマーレビュービデオ

カスタマーサービスビデオ同様、プロダクトビデオほど数はないが、カスタマーレビュービデオも用意されている。商品購入ページに、カスタマーレビュービデオを受け付けるリンクがちゃんと用意されており、キディケア・ドットコムのソーシャルビデオマーケティングに対する真剣な取り組み姿勢を垣間見ることができる。

ザッポスも始めているこのカスタマーレビュービデオだが、ソーシャルビデオマーケティングを成功させる上で今後かなり重要な意味を持ってくるビデオだ。カスタマーとの長期的な信頼関係を築くためにも、イーコマースサイトは今後是非導入したいソーシャルビデオである。

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キディケア・ドットコムのプロダクトビデオは、YouTubeを使わず、ベンダーのビデオ配信プラットフォームを利用して配信している。ただ、YouTubeチャンネルも開設しており、そこでも同じビデオを視聴することができる。

※ キディケアのYouTubeチャンネル ⇒ http://www.youtube.com/user/Kiddicare

【2】 キデイケア・ドットコムに見るソーシャルビデオマーケティングの成功要因

キディケア・ドットコムのビデオプロダクトマネージャーであるクリス・ウッドは、ソーシャルビデオマーケティングを導入した成果として以下の3点をあげている。

 ① 英国以外の海外の顧客が増えた。

 ② 売上高が20%アップした。

 ③ 商品の返品率が下がった。

中でも、1番の成果として、売上高のアップではなく返品率が下がったことをあげていることが印象的だ。クリス・ウッドによれば、ビデオを導入する前は、顧客は取扱説明書を読まないため、少しでも使い方がわからない商品があればすぐに返品してきたという。ところが、ビデオを用意してからは、使い方をビデオ見て学習することができるため返品率が格段に下がったという。

このプロダクトビデオの効果については、キデイケア・ドットコムの顧客自身も認めているという。プロダクトビデオの存在が、商品をより理解するために役立っているというのだ。

では、キデイケア・ドットコムが、ソーシャルビデオマーケティングを導入して成果を得ることができた理由はどこにあったのが、その成功要因を下にまとめてみた。

● ソーシャルビデオマーケティング5つの成功要因

① プロダクト、カスタマーサー、カスタマーレビュー3種類のビデオを用意

カスタマーのニーズに合わせて3種類のソーシャルビデオを用意しているのは、他を探してもザッポスくらいのものだ。しかも、プロダクトビデオだけでも、商品によって複数用意していたり、きめ細かい対応には感心させられる。カスタマーレビュービデオを用意してあるのも、カスタマーのニーズを掴む上で重要な意味を持っていると思われる。

② ビデオは全て自社生産

社内にスタジオを用意し、ビデオの撮影から編集まで全ての作業を社内で生産しているという。クリス・ウッドは、自分たちで商品の特長・魅力を伝えることが最高のカスタマーサービスであるという考えから、ビデオの自社生産は必須であると断言している。

③ ほとんどの商品にプロダクトビデオを用意

キデイケア・ドットコムの現在のビデオ保有数は2,784本。毎月、20本の新しいビデオを生産しているという。顧客をガッカリさせないためにも、ビデオの本数は重要な意味を持っているという。

④ 商品のプレゼンは自社のスタッフが行う

キデイケア・ドットコムは、商品のプレゼンを担当するスタッフを社内オーデションを行って選抜しているという。しかも、上手にプレゼンするためのトレーニングも継続して続けているそうだ。ザッポスのように、いろんなスタッフにプレゼンをさせるのではなく、限られたスタッフだけにプレゼンをさせるというやり方はちょっと珍しい。

⑤ 自社のイーコマースサイトとYouTubeの両方にビデオを配備

キデイケア・ドットコムも、ザッポスと同じように自社のイーコマースサイトとYouTubeの両方にビデオを配備している。顧客のビデオへの接触機会を増やすためにも、自社のイーコマースサイトとYouTubeの両方にビデオを配備することは、今では常識になりつつある。

以上が、キデイケア・ドットコムが、ソーシャルビデオマーケティングを導入して得ることができた成果と、その成果を生んだ成功要因だ。こうしてみると、かなり実践的で参考になりそうなものばかりである。

【3】 今回のまとめ

今回取り上げたキディケア・ドットコムには、本当に驚かされた。ザッポスライクなソーシャルビデオマーケティングを、ザッポスが導入する以前から取り入れていたというのだから本当に凄い。その戦略も、ザッポスと同じ部分もあれば、全く異なる部分もあったりで面白い。

キディケアとザッポスにおける最大の共通点は、両社とも顧客とより接触するためにビデオを活用しているという点だ。そして、利益を増やすことよりも、顧客と信頼関係を築くことを一番に考えているところも共通している。

このキディケア・ドットコム、イーコマースサイトのソーシャルビデオマーケティング導入の成功事例として、イーコマースサイトを運営する担当者にもっとしてほしいサービスだ。これを機会に、キディケア・ドットコムの名前がたくさんの人に知られるようになることを願っている。

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