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ソーシャルビデオは広告ではなくコンテンツ。米国の最新動向のまとめと事例紹介

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最近のソーシャルビデオ及びソーシャルビデオマーケティングに関する米国の動向を追っていると、ブランドという視点に立った場合、従来までのオンラインビデオとブランド型ソーシャルビデオを区別する方法として、オンラインビデオは広告であり、ソーシャルビデオはコンテンツであるという内容の記事をよく目にする。

そこで今回は、オンラインビデオとソーシャルビデオを区別する存在である、広告とコンテンツの違いを明らかにし、ソーシャルビデオがコンテンツであることの特長と、最近のソーシャルビデオの成功事例を紹介したいと思う。

【1】 オンラインビデオが広告でソーシャルビデオがコンテンツであるということ

まず、オンラインビデオ=広告 VS ソーシャルビデオ=コンテンツという取り上げられ方の背景に、広告がありきたりでつまらないものだという前提条件があるということを理解しておく必要がある。伝統的で退屈なテレビコマーシャルが、ここで言う広告を代表するものとして語られている。

もちろん、テレビコマーシャルの中にも面白い内容の広告がたくさん存在しているのは明らかである。しかし、オンラインビデオとソーシャルビデオの違いについて言及する場合は、一般論として広告を退屈でつまらないものであると定義していることを最初に断っておきたい。

一方、ソーシャルビデオがコンテンツであるという考え方は、ソーシャルビデオの定義を正確に反映させたものになっていると考えることができる。前回の記事を思い出してほしい。ソーシャルビデオとは、企業と消費者がコラボレーションによって価値を創り出すビデオの総体であると定義した。ソーシャルビデオは、消費者の意見を取り入れながら変化して行く。

そして、消費者同士がお互いに議論したり、コメントを加えたり、共有したりするためには、その対象となるビデオがそもそも面白くて興味をそそられるコンテンツでなければならない。つまり、コンテンツにはショートフィルム、コメディ、ドキュメンタリーを始めとしたエンターティンメント性が求められている。それが、ソーシャルビデオはコンテンツであるという考え方の根底にある。

では、このブランドの立場に立った時のソーシャルビデオが提供するコンテンツには、一体どのような特長があるのだろうか。以下に、ブランドの立場に立った時のソーシャルビデオコンテンツの特長をまとめてみた。

● コンテンツ化したブランド型ソーシャルビデオの特長

① 人の感情にアピールする

コンテンツは、見た人の感情にアピールし、心の奥深くに入り込んで行く。エンターティンメント性を持っているため、見た人に面白い、悲しい、苦しい、腹立たしいなど、何らかの感情を植え付けることが可能だ。そして、何らかの感情を植え付けることで、そのコンテンツを見た人たちの間で、議論や意見交換などのコミュニーケーションが生まれることになる。

② コンテンツは販売をしない

コンテンツは、見た人が何かを感じ取り、そこからコミュニケーションが生まれることを期待している。決して販売することが目的ではない。よって、見た人に自社の商品を売りつけようとしたり、営業スタッフの代わりとなるような要素を加えてはいけない。コンテンツは、あくまでも顧客との人間関係を大事にする。

③ コンテンツは自社の製品を説明しない

コンテンツは、自社の製品の機能や特長を説明しない。最も望ましいカタチは、製品について何もふれないことである。中でも、価格に関しては、一切言及してはならない。コンテンツは、広告と違って自社の製品に関して饒舌にはならない。

④ コンテンツは時間の制約を受けない

コンテンツに限って言えば、イーコマースビデオが守らなければならない60秒ルールが適用されない。見た人にアピールし、見た人の心に残ることが一番の目的であることから、再生時間の短い・長いは全く関係がない。人の感情にアピールすることができれば、長くなっても何の問題もない。

⑤ コンテンツは視聴者との接触を重要視する

コンテンツは、ビデオを見た人たちの間で、そのビデオを話題にどれだけ深い接触があったかを重要視する。視聴回数やインプレッション数を気にするのをやめて、どれだけの会話があったのか、どんな会話が取り交わされたのかを気にしなければならない。

⑥ コンテンツは利益を問わない

コンテンツの目的は、顧客との関係をより強固で持続的なものにすることである。目先の利益は問わない。よって、コンテンツ化したソーシャルビデオを利用したソーシャルビデオマーケティングが成功しかどうかの判断基準に、現実的な販売数値目標を置くことは間違いである。利益は、顧客との関係がより強固で持続的なものになった時に訪れる、副産物的なものであると考えることが重要である。

⑦ コンテンツの最終目的は顧客との関係

コンテンツの最終的な目的は、顧客との関係である。よって、顧客に対して直接商品の購入を依頼するようなことはしてはならない。なぜなら、直接商品の購入を依頼してしまうと、一度は購入してくれるかもしれないが、購入と同時に顧客は関係を断ち切ってしまう。しかし、購入を依頼することなく関係を継続することができれば、顧客は永久に商品を購入し続け、営業スタッフの代わりとして商品を他の消費者に薦めてくれる。

以上の説明で、コンテンツ化したソーシャルビデオが、従来までのオンラインビデオ広告とは明らかに異なる特長を持っていることがわかっていただけたかと思う。ポイントをもう一度整理しておこう。

  •  ブランド型ソーシャルビデオは、広告ではなくコンテンツである。
  •  従来までのオンラインビデオ広告と違って、積極的に販売することが目的ではない。
  •  よって、製品の特長、機能、価格等については言及しない。
  •  視聴回数やインプレッション数ではなく、顧客と接触した内容を重要視する。
  •  顧客と長期的な信頼関係を築くことが最終的な目的である。

【2】 コンテンツ化したソーシャルビデオの最新事例

次に、コンテンツ化したブランド型ソーシャルビデオの最新事例を紹介したい。どれもユニークなものばかりで、必ず参考になるはずだ。

① デンタイン(Dentyne)の「シングルライフ」

まず紹介したいのが、米国の老舗チューインがムのブランド、デンタインが展開する「シングルライフ」シリーズ。内容は、見ていただければおわかりの通り、男女二人がフェイスブックにプロフィールを登録し、交流を始めるまでの過程が収められている。デンタイン・チューインガムの説明が一切出てこないばかりか、再生時間も3分56秒とかなり長い。従来までのオンラインビデオ広告とは全く異なるアプローチを取っており、コンテンツ化したブランド型ソーシャルビデオのお手本とも言えるべき内容になっている。

今回紹介した「エピソー1」以外にあと3本公開されているので、ぜひ全ての作品を視聴してみてほしい。また、フェイスブック・ファンページも用意されているので、こちらも是非覗いてみてほしい。

※ デンタインのフェイスブック・ファンページ ⇒ http://www.facebook.com/Dentyne

■ デンタイン「ザ・シングルライフ エピソード-1」


② プリティ・ソーシャルの「マイ・ソーシャル・タトゥー」

次は、プリティ・ソーシャルの「マイ・ソーシャル・タトゥー」。この「マイ・ソーシャル・タトゥー」は、今年の5月30日に公開されるやいなやすぐに話題になったビデオなので、ご存知の方が多いのではないだろうか。自分のフェイスブックの友人の顔写真を、腕に印刷するというショッキングな内容のブランド型ソーシャルビデオだ。再生時間は、1時間31分と、先に紹介したデンタインのシングルライフよりは短い。

こちらもフェイスブック・ファンページが用意されているので是非アクセスしてみてほしい。

※ プリティ・ソーシャルのフェイスブック・ファンページ ⇒ http://www.facebook.com/prettysocial

■ プリティ・ソーシャル「マイ・ソーシャル・タトゥー」


両作品の共通点は、どちらも最初見た時はフェイスブックの宣伝用のビデオかと勘違いしてしまうほど、ブランド色が消えている点だ。そして、どちらの作品も見た人の心に残る。コンテンツ化したブランド型ソーシャルビデオが、明らかに従来型のオンラインビデオ広告とは一線を画しているということがを、この二つの事例は証明している。

【3】 今回のまとめ

ことブランドという視点に立って考えた場合、従来までのオンラインビデオが広告で、ソーシャルビデオがコンテンツであるという区分の仕方は、単純ではあるものの、ポイントを的確に捉えている非常に良い区分方法だと思う。

一方、ブランドが提供するソーシャルビデオがコンテンツであるという定義は、かなり強烈なインパクトをブランドに対して与える。なぜなら、ブランド側に相当な創造力が求められるからである。ブランドは、確実に自立を迫られる。従来までのように全てを広告代理店任せというわけにはいかなくなるからだ。

顧客との関係を重要視する以上、最低でも最初の戦略だけはブランド側が考えなければならない。戦略を一緒に考えるパートナーも、もしかしたら広告代理店ではなく、ビデオ制作会社やビデオ配信事業者なのかもしれない。それくらい、従来までの古い発想を捨てて取り組む必要性が出てくる。

ソーシャルビデオマーケティングは、膨大な制作費用が捻出できずにオンラインビデオ広告の出稿を諦めていた、ベンチャー企業や中小企業にこそトライしてほしい戦略の一つである。そして、顧客と接点を持つことが好きでたまらない企業であれば、必ず成功を収めることができるに違いない。

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