商品の返品を奨励するザッポスのイーコマースビデオ
● イーコマースビデオがもたらす3大メリット
① 訪問者数&コンバージョンが増える
② 商品の返品が少なくなる
③ 問合せ件数が少なくなる
イーコマースビデオの導入メリットとしてよく紹介されるのが、①の訪問者数&コンバージョンが増えるというメリットである。イーコマースサイトの商品ページに商品動画を配置することで、訪問者数とコンバージョンが増加し、その結果イーコマースサイトの収益が増大するというパターンである。これは、直接売上が増えることによって、収益も増大するというプラスのパターンである。
しかし、イーコマースサイトの利益を増大させる要因は、売上を増やすことばかりではない。発生するコストを減らすことによって、利益を増大させるマイナスのパターンも、イーコマースサイト事業者にとっては重要な戦略の一つである。中でも、商品の返品率を下げることと、顧客からの問合せ件数を減らすことは、利益の増大に大きく貢献する。そして、この二つのコストをマイナスさせることに、イーコマースビデオが大いに役立つ。
イーコマースビデオがもたらすメリットと言えば、とかく訪問者数&コンバージョンを増やして収益を増大させるという、プラスのメリットばかりが注目されがちである。ところが、商品の返品を少なくしたり、問合せ件数を少なくして利益を増大させるというマイナスのメリットも、イーコマースサイトを運営する事業者にとっては非常に重要な要素の一つだ。
あのザッポスも、イーコマースビデオが持っているマイナスのメリットにとっくに気がついている。そのことを証明するために、ザッポスのプロダクト・マネージャーであるローリー・ウィリアムズが、最近のインタービューで自社のイーコマースビデオ戦略について言及している部分があるので要約してみた。商品動画が用意されている商品の方が、返品率が低いことをちゃんと認めている。
※記事自体は2011年5月3日に掲載 ⇒ GannettLocal Blog
● プロダクト・マネージャー、ローリー・ウィリアムズのインタービュー要約
・ザッポスのイーコマースビデオは僅かの予算と限られた商品ではじまった
・昨年、イーコマースサイトの訪問者10%に対して効果測定を行った
・商品動画を配置してある商品の方が良く売れる
・商品動画を配置してある商品の方が返品率が低い
・商品動画はザッポスの企業文化を守るためににも自己生産している
実は、商品動画が商品の返品率を下げる効果があるというローリー・ウィリアムズのインタービューを目にして、ザッポスの有名なある一つのイーコマースビデオの存在を思い出した。それは、ザッポス以外の企業であれば到底用意しないであろうと思われる、顧客に自社の商品の返品を薦めるカスタマーサポートのための動画である。
その動画はすぐに見つけられる。zappos.comのトップページ上部に「365Day return Policy」という薄緑色をしたアイコンがある。そのアイコンをクリックすると、「Shipping and Returns」というページが表示され、そのページの下の方に問題の動画がある。YouTubeでも視聴可能だ。
※ Shipping and Returnsのページ ⇒ http://www.zappos.com/shipping-and-returns
■ Blogs.zappos.com
見ての通り、商品に満足がいかなければ返品を促す内容になっている。普通に考えれば、会社の不利益になるようなことを、わざわざ動画まで作って配信することは考えにくい。どちらかと言えば、あまり目立つ見せ方はしないだろう。ところが、ザッポスは平然とそれをやってのける。いつも顧客が中心にいる。そこが、ザッポスのカスタマーサービスが最高だと言われる所以だ。参考までに、ザッポスが商品動画とは別に用意してあるカスタマーサービス動画は全部で1,000本以上あり、見て楽しむのであれば断然こっちのカスタマーサービス動画に軍配が上がる。
ザッポスの商品動画やカスタマーサービス動画を見ていると、ザッポスが、単に利益拡大のためにイーコマースビデオを導入しているのではないということがよくわかる。ザッポスは、顧客との関係をより緊密で強固なものにするためにイーコマースビデオを導入しているのである。最近、米国のオンライン小売事業者におけるいろいろなイーコマースビデオの導入事例を調査してみてわかったことがある。それは、イーコマースビデオを導入する本当のメリットは、顧客との関係をより緊密で強固なものにする点にあるということ。
イーコマースビデオは、自社のイーコマースサイトを訪れる顧客との関係をもっと強力なものにするために、もはや欠かすことができない重要な戦略になっている。
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