起業と家族の応援・理解
最近、ちょっと考えさせられてしまうような悲しい事件が一つありました。私より1年ほど前に起業した友達から久しぶりに連絡があって、会社を閉めることになったというのです。その友達は45歳を過ぎても自分で開発をこなす優秀な技術者で、会社の方もやっと軌道に乗り出したと、去年の年末に会った時は嬉しそうに話していました。
彼の後を追うようにして起業した私にとって彼は身近な目標であり、実際起業する時もいろいろ相談に乗ってもらうほど頼りになる人間でした。その友達が、順調だと思っていた会社を突然閉めるというのですから本当に驚きました。
友達の話では、大口の取引先の仕事を失注してしまい、資金繰りが上手くいかなくなってしまったことが会社がおかしくなりだした直接の原因だということですが、その根本にはもっと深い問題があったらしいのです。友達に言わせると、最後まで奥さんの理解が得られなかったことが最大の原因かもしれないということでした。
起業当初から、彼の奥さんが猛反対しているという話は良く聞いていました。奥さんは友達に大手企業のサラリーマンを続けていてほしかったらしく、最後まで起業することに反対し続けていたといいます。それでも私の友達は、いずれわかってくれるだろうという思いから、奥さんの反対を押し切って起業しました。
結局、起業してからというもの、いつも奥さんと喧嘩になり、一日も心が休まる日がなかったということでした。そういう生活が2年も続いているうちに、私の友達も奥さんが応援してくれない起業にだんだん遣り甲斐が持てなくなっていったというのです。
友達からこの話を聞かされた時、私は何となくわかるような気がしました。私も起業してからは土曜日もほとんど家にいませんし、たまの日曜日に家にいても結局仕事のことが頭から離れません。妻と子供にしてみれば相当不満がたまっているはずです。ただ、私の場合救われているのは、一応妻が応援してくれています。実際本当のところはわかりませんが、表面上は応援しているように見えます。
実際に起業してみてわかったのですが、起業するということは想像していたよりもはるかに大変です。正直、毎日ボロボロになるまで神経をすり減らして働いているのに、これで家族の応援がなかったらちょっとやっていけないなと思います。せめて家族くらい応援してくれないと、何を励みに働いたらいいのかわかりません。それほど、家族の応援・理解というのは大切なような気がします。
起業にとって、ヒト・モノ・カネが重要だというのは当たり前のことで、本当はそれ以上に家族の応援・理解が重要なのでは。ということは、家族が応援してくれない起業はやるべきではないという結論になります。これはある意味で正しいような気がします。
ヒト・モノ・カネのすべてがなくて、家族の応援・理解だけある起業もどうかとは思いますけど。