デジタル化によってライブ盤の魅力は増したと思う
どちらかと言うと、スタジオで録音されたアルバムよりもライブ盤の方が好きだ。綿密な計算の基に、何日もかけてスタジオで録音されたアルバムもそれはそれでもちろんいいのだが、アーティストの実力をよりストレートに伝えてくれるライブ・アルバムの方に魅力を感じてしまうのである。アーティストの素顔や本音を垣間見ることができるような気がするのも、ライブ盤が好きな理由の一つかもしれない。
そのライブ盤に関してだが、アナログからCDに変わって魅力がより増したと思っている。ことライブ盤に限って言えば、どう考えてみてもアナログよりもデジタルの方が向いている。そう思う理由は二つあって、まず、アナログとCDでは記憶できるデータ量があまりにも違いすぎるからだ。アナログは、A面とB面を合わせてもせいぜい45分くらいしか録音できない。
結局、できるだけ完全なカタチでライブを収めるために、2枚組みや3枚組みにしなければならなくなる。実際、アナログのライブ・アルバムには2枚組みが多かったように記憶している。ただ、たとえ2枚組みになったとしても、時間にすればたかが90分である。ライブを完全なカタチで収めるには、やはり物足りない。その点CDであれば、大抵のライブ・アルバムを1枚に収めることができる。
ところが、CDがもたらしたもっと画期的なことは、アナログではとても収めることができなかった未発表ライブの演奏も、すべて完全なカタチで収録したBOXセットによるコンプリート盤が登場したことである。価格が高いのがたまにきずではあるが。
ファンにしてみれば、好きなアーティストのライブはできるだけ完全なカタチで再現して欲しいわけで、CDはそれを可能にしてくれたわけだ。アナログであれば、それこそ何十枚組みにもなってしまうコンプリート盤も、CDであれば数枚に収まってしまう。ファンにしてみれば、こんなに嬉しいことはない。
音に関しても、好き嫌いはあると思うが、中にはアナログよりも音質の向上したアルバムもあったりする。アナログは、本当に録音状態の悪いライブ・アルバムが多かった。その点、CDはライブ演奏を再現するのにも向いているのかもしれない。
というわけで、デジタル化は、音楽が持つライブの魅力を伝えることにかなり貢献しているように思うのである。たとえば、マイルス・ディビスは、デジタル化の恩恵に与っている代表的なアーティストだと言ってもいい。素晴らしいライブ演奏が、ほぼ完全なカタチで残されている。まさにデジタル化のおかげだと言っていい。
オールマン・ブラザーズ・バンドの「フィルモア・イースト・ライヴ」、リトル・フィートの「ウェイティング・フォー・コロンブス」あたりもCDになって魅力が増したアルバムだ。