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『ニューミュージック・マガジン』がすべてだった時代

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昔、『ニューミュージック・マガジン』(1980年1月号から『ミュージック・マガジン』にタイトルを変更)という音楽情報雑誌があった。今はインターネットがあるせいで、音楽情報雑誌なんてそれほど重要ではないのかもしれないが、当時のロック小僧にとって『ニューミュージック・マガジン』という音楽情報雑誌は、レコードに付いてくるライナー・ノートと並ぶ貴重な情報源だった。毎月これほど発売日が待ち遠しい雑誌はなかった。

当時は、ロック小僧が辿るお決まりのパターンというのがあった。洋楽を聴き始めの頃というのは、みんなアーティストの写真がたくさん載っている『ミュージック・ライフ』を愛読する。そして、徐々に『ミュージック・ライフ』では物足りなくなって、どちらかというと記事が多い『ニューミュージック・マガジン』に乗り換えるというのがお決まりのパターンだった。

私も、小学生の頃は『ミュージック・ライフ』を愛読していたのだが、中学に入ると同時『ニューミュージック・マガジン』に乗り換えたように記憶している。当時は、『ニューミュージック・マガジン』を読み始めることが、通なロック・ファンになるための登竜門みなたいな雰囲気があった。

『ニューミュージック・マガジン』の大きな特徴は二つある。一つは、アルバムの評価を100点満点で採点していたこと。新しく出たアルバムを、それぞれの担当の音楽評論家が、80点、95点とかテストの採点をするみたいに評価するのである。そして、読者はその評価を見て一喜一憂するわけだ。好きなアーティストの新しいアルバムが低い評価だったりすると、結構落ち込んだりしたものである。

もう一つの特徴は、ロックに軸を置きながらも、ロック以外のいろんな音楽を扱っていたこと。ブルース、ソウル、サルサ、ジャズと本当にバライエティに富んでいた。ロック以外の音楽の情報も入手できるということが、当時の『ニューミュージック・マガジン』に大きな深みを与えていたことは間違いない。

実際、私がロックを皮切りにブルース、ソウル、ボサノバあたりも聴くようになったきっかけを作ってくれたのは、『ニューミュージック・マガジン』だと言っても過言ではない。私が今持っている音楽に関する情報の土台を作ってくれたのは、紛れもない『ニューミュージック・マガジン』である。

そんな多大な影響を与えてくれた『ニューミュージック・マガジン』だが、読まないようになってから20年以上は経っただろうか。読まなくなったのは、やはり”ニュー”が取れて『ミュージック・マガジン』に変わったあたりからだ。”ニュー”が取れた『ニューミュージック・マガジン』は、だんだん私に必要のない存在になっていってしまった。もちろん、私自身がジャズを演奏する立場になって、若い頃のように音楽の情報を一生懸命入手する必要がなくなったというのも大きな理由の一つかもしれない。

でも、一番の理由は、10代の頃と違って、今は音楽以上に大切なものがいくつかある。あの頃のように、音楽がすべてではなくなってしまった。

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