やっぱり子供には受けないセロニアス・モンク
先週の日曜日の昼下がりのことだ。大好きなセロニアス・モンクの演奏を聴きながらビールを飲んでいると、子供が「この下手なピアノを弾いているのはだぁれ?」と聞いてきた。
なるほど、やっぱり子供にはセロニアス・モンクは受けないようだ。まあ、無理もないかもしれない。こっちにしてみれば、子供ごときにセロニアス・モンクの良さがわかってたまるかといったところだ。大人でさえ、セロニアス・モンクの良さがわからない人間がいっぱいいるのだから。
一応子供もピアノを習っているのだが、ちゃんとしたピアノ教育を受けている人間の耳には、セロニアス・モンクの弾く旋律はどうやら不協和音に聞こえるらしい。わざとこういう風に弾いているのだと説明しても、結局理解できないみたいだ。
個人的に、セロニアス・モンクはジャズ・ピアニストの中でも一番好きなピアニストである。彼の前では、どんなピアニストでも影が薄くなってしまう。テクニックだけで言ったら、それはセロニアス・モンクより上手いピアニストなんてたくさんいる。
正直、子供が習っている先生の生徒の中にも、テクニックだけならセロニアス・モンクに負けない生徒がいるかもしれない。実際、子供のピアノ発表会を見に行ったことがあるのだけれど、とんでもなく上手い小学生が何人もいて、ビックリした記憶がある。彼らのテクニックといったら、本当に大人顔負けだった。
ただ、ここからが重要だ。人を感動させることができるのは、何もテクニックだけとは限らない。テクニックがなくても、人を感動させることはできる。もちろん、基礎的な技術が必要なことは前提での話だが。
セロニアス・モンクの凄さは、他を寄せつけないその独自性にある。誰にも真似ができない、彼だけの世界。とにかく、一度セロニアス・モンクの魅力にはまってしまったら、二度と抜け出せなくなってしまうほど、聴く者を引きつけて離さない何かがある。特に、ソロでの演奏に彼の真骨頂があると思っている。
ジャズという音楽ジャンルの中の、ソロ・ピアノというカテゴリにおいて、セロニアス・モンクは確固たるブランドを築いてしまったのだ。たとえ子供に受けが悪くても、そんなことは大した問題ではない。