音楽配信がシングルCDを追い抜く
音楽配信サービスの売上が、初めてシングルCDを上回った。日本レコード協会の発表によれば、平成18年の有料音楽配信サービスの売上金額は、前年比56%増の534億7,800万円と初めて500億円を突破。一方、シングルCDの売上金額は、前年比4%増の508億4700万円。初めて音楽配信サービスが、シングルCDを上回ったことになる。
また、参考までにシングルとアルバムを合わせたCD全体の売上金額はどうかというと、1998年ピーク時の5,878億7,800万円から相変わらず減少し続けており、2006年は前年比4%減の3,445億1,800万円。
音楽配信サービスの売上を除いた音楽ソフト全体の売上も、同じく1998年の6,074億9,400万円をピークに年々減少し続けており、2006年の売上は4,084億800万円と、もう少しで4,000億円を下回りそうだ。
この数字が音楽業界に与えたインパクトは結構大きくて、音楽ソフト全体が、シングルCDのように近い将来音楽配信サービスに追い抜かれてしまうんじゃないかと心配している人が業界内でも増えている。中には、CDが近い将来市場から消えてしまうんじゃないかと言い出す人までいるほどだ。
確かに、音楽配信サービスの売上金額がシングルCDを追い抜いてしまったことは、音楽業界にとって重要な問題だと思う。でも、だからといって、数年後に音楽配信サービスが音楽ソフト全体をも上回ってしまうとは考えにくい。
これはあくまでも個人的な意見だが、近い将来が何年後かは別にして、CDが市場から消えてしまうことはありえないし、音楽配信サービスの売上金額が音楽ソフト全体の売上金額を追い抜くには、まだ相当な時間がかかるのではないかと考えている。というのも、同じCDでもシングルとアルバムでは、置かれている状況がちょっと違う気がするから。
まず、シングルとアルバムではレコード会社の力の入れ方が違っている。レコード会社が本当に買って欲しいのはアルバムであって、シングルはアルバムを買ってもらうためのプロモーションに過ぎない。ということは、レコード会社の力の入れ方にも差が出てしまう。レコード会社が本当に売りたい商品がアルバムだとすれば、シングルが売れないのは当たり前だ。
次に、価格が高過ぎる。アルバムは平均すると2,500円くらい。この価格は、実は昔のLPレコードと比べても同じ水準だ。一方、シングルの値段は1,000円。最近ではDVD付で1,500円なんていうシングルもあ。シングルレコードがその昔500円だったことと比較しても、この1,000円~1,500円という価格はどう考えてみても高過ぎる。
よほど熱心なファンならともかく、1曲聴いてみて良かったらアルバムを買ってみようかなと考えているリスナーにとって、シングルの1,000円~1,500円はちょっと手を出しにくいんじゃないかと昔から疑問に思っていた。それだったら、音楽配信サービスの1曲150円で十分だし、曲によっては無料で視聴も可能だ。
結局、レコード会社が本当に売りたい商品ではない上に価格も高いとなると、売れなくても当たり前なんじゃないかというのが結論。思い切ってシングルはなくしてしまって、音楽配信サービスとアルバムだけにしてしまってもいんじゃないだろうか。実際に韓国では、シングルCDを作らないアーティストが増えているらしい。
ちなみに、僕は生まれてから一度もシングルCDを買ったことがない。アナログではシングル派とアルバム派がいたけど、CDにもいるんだろうか。