技術や機能よりも使いやすさ
立場が変わると、今まで見えていなかったものが見えてくるようになるから不思議だ。僕は去年まで、SNSをお客に売る側にいたわけなんだけど、売る側にいると、お客が欲しがっているものが技術的な目新しさや豊富な機能にあるとつい錯覚してしまいがちだ。その結果、「弊社のSNSには技術的に優れた機能がこんなに実装されているんです」みたいなセールス・トークに終始してしまう。
そして、ライバルの会社が実装していない機能をことさら強調し、今後も豊富な機能が実装される予定であることを誇示するために、実現されるかどうかもわからない開発ロードマップなるものを用意することになる。ベンダーが得意とするお決まりのパターンっていうやつだ。
結局、僕はなんにもわかっちゃいなかった。お客が技術的な新しさや機能の多さだけを重要視していると、完全に勘違いしてしまっていた。
誤解のないように言っておくと、技術や機能が重要じゃないと言っているわけではない。技術的に陳腐だったり、必要な機能が実装されていないのは最悪だ。僕が言いたいのは、売る側にいると、必要以上にこの二つのことだけに気を取られてしまいがちだということ。
逆の立場になってみるとそのことが良くわかる。SNSを実際に運営してユーザーから感想やら要望やらが毎日届くようになると、今まで見えていなかったいろんなものが見えはじめてくる。最初に痛感したのは、ユーザーは技術的な新しさや機能の豊富さよりも、使いやすさを重要視するということ。
どんなに技術的に新しくて機能が豊富でも、SNSの基本的な機能が使いにくければユーザーはクレームをあげてくる。当たり前の機能が当たり前のように使えることは、サービスとして最低限実現していなければならないこと。むしろ、ユーザーはそれ以上の使いやすさを新しいサービスに期待している。
「ミクシィと同じレベルの使い勝手」ではサービスを提供する側の姿勢としては失格なわけで、「ミクシィ以上の使い勝手」を実現しなければならない。それが実現できてはじめてユーザーは新しいサービスに満足してくれる。
日本のユーザーがマイスペースよりもミクシィを好むのは、ミクシィがマイスペースよりも技術的に優れているからでも機能が豊富だからでもない。ミクシィの方がマイスペースよりも使いやすいからだと僕は思っている。そしてそのミクシィでさえ、ユーザーが毎日使う機能っていくつあるだろうか。