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書評「イノベーションの神話」 Scott Berkun著

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日本マーケティング協会の月刊マーケティング・ホライズンに過去に記した書評の再掲をあと一つだけ。数年前の本だが、本質論を突いているものだ。

イノベーションの神話」 Scott Berkun 著、村上雅章 訳、オライリー・ジャパン

先進国の大企業で、かつてないほどイノベーションが求められている。しかし、大組織のほとんどはイノベーションに向いていない。その理由の一つは、異なる常識であり、イノベーションへの誤解だ。

本書は、「イノベーションに必要なアイデアはどのように生まれるのか」、「なぜ、解決策よりも『問題』が重視されるのか」、「イノベーションが普及するために必要な条件は何か」などについて実際の姿を明らかにする。

本書中からいくつか紹介しよう。

イノベーションを引き起こすのは容易ではない。ただし選ばれた特別な人間にしかできないような奇跡でもない。一見、すでにやり尽されているかのように見えても、イノベーションの機会はある。しかし、新しいアイデアは突如として天から降りてくるのではなく、継続して一つの物事に接する日々の積み重ねからうまれる。つまり、大企業でもやりようはあると言えよう。

なお、「問題を20日で解決しなければならないとしたら、私は19日かけてその問題を定義する」とはアインシュタインの言葉だ。大切なことは問題をどう解決するかではなく、何が問題なのかをつきとめることだ。ゆえに、問題意識があいまいで単に情報収集しているだけの大企業は、何も得られないだろう。

また、既存組織の訓練や経験は、イノベーションに対する逆風になることが多い。本書は、マネジャーが乗り越えるべき5つの難関を示す:1)アイデアの寿命(時間と予算を投資し、メンバーに精神的な余裕を与え、アイデアの展開や仕上げをサポート)、2)環境(才能ある人々が最高の仕事を行える場をつくる)、3)保護(攻撃からイノベーションを守る盾になる、後押しする)、4)実行、5)説得(粘り強く関係者を説得)。

巻末にイノベーション関連の豊富な書籍が著者の採点付きでリスト化されているのも、参考になる。

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