スティーブ・ジョブズ 二つの映画を観て
今日公開の映画「スティーブ・ジョブズ」を観てきた。先週は映画「スティーブ・ジョブズ1995 〜失われたインタビュー〜」を観た。
両方とも観て損した気はしない。が、1995インタビューの方が圧倒的に印象的だった。おかげで本まで買ってしまった。(参考:『創造とは何か?を知る「ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995」』 @suaddさんから)
もっとも、そりゃそうだろ本物と比べるなよ、と言われるかもしれない。しかし、1995インタビューを観た人は数少なく、「スティーブ・ジョブズ」を観る人の方がはるかに多いだろう。
人間模様を中心に、大学時代からアップル復帰までを描いた「スティーブ・ジョブズ」は、それなりだったが、アップルを追い出されてからJobs Familyをもって、スティーブ・ジョブズ2.0に進化したところは、分かり難い。
1995インタビューからアップル復帰の間に、CSK大川会長付として、Oracleのラリー・エリソンさんとジョブズ夫妻を京都の桜祭りでお迎えしたことが思い出される。
メディアなどでは、映画「スティーブ・ジョブズ」で描かれたようにbig EGO mountain(エゴのかたまり)と言われていたのだが、実際に御伴すると、実に静かに桜やご馳走を味わう方だった。吉兆前の川で舟遊びをしたときの笑顔は忘れられない。ジョブズ夫妻は主に奥様がリードをとり、スティーブはお任せといった面持ち。そして大川さんは、「少年の様な目をしていた」と表現していた。
これは推測に過ぎないが、アップルをたたき出されてNeXTやPixarでの日々、そして奥様・家族との生活の中でスティーブ・ジョブズさんは、次なるモードに進化したのではなかろうか。少年のような無垢のパッションと感覚を持ちながら、動だけでなく静を持ち合わせる。そして、人の心をもっと分かった上で、信じるものを追求する。でなければ、例えば、マイクロソフトとのアライアンスをあれだけ推進したり、なかなかできることじゃないでしょう。
それから、13歳のときビル・ヒューレットにアプローチしてヒューレット・パッカードと縁が出来て、そこで大いなる刺激と学びがあったことや、ウォズニアックとの最初のプロダクトBlue Boxで零細チームが世界に影響を及ぼす力があると気がついたことなど、entrepreneurship=起業家精神のきらめきについて映画「スティーブ・ジョブズ」は触れていないので、LSDでぶっとんで夢想を追う変人と思う観客もいるかもしれない。
なお、映画「スティーブ・ジョブズ」では、早くからお金のことをよく知っているヤツと描かれていたが、実際はそうでもなかったそうだ(ウォズをダマしたのは本当らしいが)。マイク・マークラのくだりも、ちょっと違うところがある。その他、事実と異なる脚色部分については、アップル・ウォッチャーの方々にお任せしたい。
それから、二つの映画とも、基礎知識があった方が分かりやすい。予備知識ゼロだと意味不明というか、気づきもしない点もあり。Wikipediaをさらっとみるだけでも一助になるかと(ネタバレにもなるわけですが)。
博士論文にもアップルの事例研究を書かせていただいた。三回忌、ご冥福を祈り、感謝です。
<追記>
@fshin2000 えふしんさん曰く「確かに映画としてはどうかと思ったが、JOBS語録の宝庫として見ると興奮できる。」・・・そう思います。映画「スティーブ・ジョブズ」は観て損した気はしません。
校條浩さんとのやりとりから:
本荘修二 もの凄いエンジンが、ステアリングを得たとき、世界を動かせるのかと。
Hiroshi Menjo 最近のシード投資では、創業者が2人組でないと投資しない、というところが多い。まさに「エンジンとステアリング」ですね。