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リーダーシップと組織マネジメント論の転機 "常識"は間違いだらけ

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昨日、もう一つのブログで「書籍『トータルリーダーシップ ウォートン校流「人生を変える授業」』を読んだ」を書いたが、近年の経営論をみていると一つの転機を迎えていることが分かる。

従来の経営論、特にマネジメントについてのものは、狭くフォーカスされたものであり、単純な"常識"に影響されたものに留まっていた面がある。最新の研究や議論は、例えばダニエル・ピンクの「Drive」(モチベーション3.0)は、人がヤル気を出すメカニズムを勘違いして経営システムがつくられてきた、真実は多くの人々が盲信してきたものとは異なると喝破している。簡単だが、TEDでのプレゼンでもそれを聞くことができる。


YouTube: ダニエル・ピンク 「やる気に関する驚きの科学」



「トータルリーダーシップ」でWharton Schoolのフリードマン教授は、仕事、自分自身、家庭、コミュニティの4領域をトータルで向上することの重要性を説いている。本書は Be a better leader, Have a richer life なる副題がついている。全体観からみることが必要というのは、人間というものを考えれば、当たり前のことでもある。

さらに、MITの研究は、チームのパフォーマンスが、個人のIQではなく、C Factorに影響されると示している。C Factorを上げるには、女性をチームに加えるのが有効という。つまり、IQの高い人を集めても、C Factorつまり社会的スキル、言い換えればチームワークができなければ結果は出ないということだ。その点、女性の方が男性より、優れているのだ。(参考:「MIT Unravels the Secrets Behind Collective Intelligence – Hint: IQ Not So Important」)

ノーベル賞受賞者のハーバート・サイモンは、これをベクトルで表した。メンバーのベクトルが共通の方向に向かわなければ、個別のベクトルが大きくても、組織のパフォーマンスは上がらないというモデルだ。当たり前にみえるが、現実のマネジメントはそうなってはいない。採用をみてもそうだ。おじさんばかりの著名企業の組織は、合意を形成するために、あきれるほどの手間・時間・エネルギーをかけるのが茶飯事だ。

Googleの「Project Oxygen」も、同様な結果を示した。かつ、技術信奉が強いGoogleに衝撃を与えたのである(上記のように、当たり前なのだが、人は"常識"に引っ張られる・・・もっともGoogleは科学的に調査・研究したから進歩できた)。
「Google流マネジメント」は部下も上司も高い技術力があれば足りる、という考え方だった。しかし「技術力」の優先順位は最も低くなる、ということが分かった。「聞き上手になる」「細かすぎる指示はしない」などが、技術より重要と示されたのだ。
データの鬼、Googleが解析した「よい上司を製造する8つの条件」 - DNA
Google’s Project Oxygen – 8 point plan to help managers improve - RAPIDBI
Google’s Quest to Build a Better Boss - NY Times

個人が自分のスキル向上を目指すにあたっても、組織がマネジメントを考えるにしても、こうした新たな事実と理論に目を向けなければ、成果はおぼつかないだろう。
しかし、大半の個人も組織も、旧来型の認識で動いている。これが進化するには時間がかかる。
したがって、他人や他社の行動に引っ張られず、それらは他山の石として、自らの道を行くことだ。

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