寓話「アップデート星人、現る!」
むかしむかし、ある村にアップデート星人がやって来ました。
友好的なアップデート星人は、村人達が知らなかった技術や医術を教えて大歓迎を受けました。
そこで村人達は、アップデート星人が帰ってしまわないように、村長になって欲しいと頼みました。
アップデート星人は、快く引き受け、その日からアップデート星人による「改革」が始まりました。
アップデート星人は、まず、「古いものを改め全て新しくしなければならない!」と宣言しました。
そして、全てのルールやしきたりを新しいものにかえました。さらに、教会の建物も次々と新しく建て替えました。
また、村人達にも、それぞれの家を新しく建て替えるよう指示をだしました。
村人達も異議なくこれに応じ、村は全く新しい活気に満ちたものになりました。
さて、全てが新しくなり、ようやく村が落ちつきを取り戻した頃、アップデート星人である村長は、また宣言しました。
全てを新しくしなければならない!
古いものは滅びなければならない!
村人達は、またかと驚きましたが、崇拝するアップデート星人の言う通り、全てを新しくしました。
こんなことが何度か繰り返されたあと、ひとりの子供がふと漏らしました。
みんなどうしてこんなバカなことをやってるの? 新しく作っては壊し、壊しては新しいものを作る。
こんなことを繰り返すのに、なんの意味があるの?
はっと我に返った村の長老は、村人たちに向かって叫びました。
「この子の言う通りじゃ。我々はいつの間にか、我々らしさを失ってしまった。
みんな、自分達の着てる服装を見てみろ。
多少みてくれは良いかも知れんが、動きにくい、暑い、それに余計な金が掛かる。
これでは、昔の服装の方がよかった。 そうは思わんか?!」
村人達は、どうみても不釣り合いな自分の服装を確かめながら、次々と大きく頷きました。
それから村人達は、村長を辞めてもらうために、アップデート星人の家を訪れました。
しかし、玄関先から声を掛けても反応がありません。
しかたなく、ひとりの若者が扉をこじ開け、村人達はアップデート星人の家の中に次々と入って行きました。
しかし、やはりアップデート星人の姿はありません。
ただそこには、古ぼけた一本の木片が、地面に突き刺さっているだけでした。
<モラル>
・アップデートはすべてを新しくするのではなく、過去からの積み重ねの上に成り立つものである。
・熱狂の正体は、案外無意味なものかもしれない。
(ペロー風にあとがき解説を「モラル」としました(*^^*))