世界で一番やさしい会議の教科書~問題解決の5層構造~
世界で一番やさしい会議の教科書~実践編~が出版された!
「ベストセラーの第2弾」という位置付けらしい。ありがたいことで。
- 会議ファシリテーションの8つの基本動作
- ファシリテーター7つの心構え
- よくある18の困り事と対策
- 会議で効く3つの図解パターン
- 定着4段サイクルと、浸透の6パターン
「会議ファシリテーションの8つの基本動作」は、このブログでも紹介している。そちらで概略が掴めるはずだ。
ブログ:「なぜこれほど日本の会議はクソなのか? 会議を変える8つの基本動作」
今回は「よくある18の困り事と対策」から、1つ取り上げて紹介したい。
【会議でよくある18の困り事】
1.誰も発言しない
2.議論が盛り上がらない
3.一部の人しか会議に参加しない
4.独演会が止まらない
5.発散や脱線が多すぎる
6.議論がかみ合わない
7.会話がまどろっこしく、スムーズに進まない
8.議論が間延びする
9.論点が多すぎて、議論が難しい
10.意思決定に時間がかかる(トップ合意編)
11.意思決定に時間がかかる(現場合意編)
12.決まったことが後から蒸し返される
13.時間通りに始まらない
14.大人数の定例会が難しい
15.プロジェクトの進捗報告会が難しい
16.電話会議が難しい
17.テレビ会議が難しい
18.オンライン会議が難しい
よくある困り事6.「議論が噛み合わない」
今回は取り上げるのはこれ。会議の噛み合わせ。
熱心に議論をしているのに、話が平行線な気がする。具体的に何がとは表現できないし、決して大きく脱線しているわけでもない。
しかし、話がかみ合っていない感じがしてならない。何がかみ合っていないのかが分かれば手の打ちようもあるのだが、正直よく分からない。でもきっと、かみ合っていないのだと思う・・・。
・・・こんな経験、誰もがしたことがあるはずだ。
噛み合わせが悪くなる原因はいくつあるのだが、ここでは一つの解決策として「問題解決の5階層」を紹介したい。
問題解決の5階層
前述の様に話がかみ合わないのは、構造的な議論のズレが原因であることが多い。実は議論には構造がある。特に問題解決の議論は、明確な5層構造になっている。これを問題解決の5 階層と呼ぶ。5 階層は事象、課題、原因、施策、効果の5 つの要素で構成されている。
【問題解決の5階層】
第1 階層「事象」:今、何が起こっているのか。業務やシステム、顧客、従業員がどんな状況にあるのかを指す。単なる事実であり、人の主観は入らない。
第2 階層「課題」:現状の困り事。解決したいと感じること。
第3 階層「原因」:課題が発生しているのはなぜか。理由があり、背景があるはずだ。
第4 階層「施策」:課題を解消し、現状を目指す姿に近づけるための打ち手。通常は原因を踏まえたうえでないと、有効な施策は出せない。目指す姿を見据えられていないと表面的な改善にとどまりがちで、本質的な施策を出せない。
第5 階層「効果」:施策を実行するには投資が必要になる。リスクも伴う。得られる効果の大きさも施策ごとに異なる。
・階層を意識するとズレに気付きやすくなる
このように、議論には5つの階層があるのだが、会議では、今どの階層について話しているのかを見失うケースがとても多い。
5階層のうち、どこの議論をしているのかをよく観察してみると、Aさんは「困り事=課題(第2階層)」の話をしているのに、Bさんは「施策(第4階層)」の話をしている、なんてことに気づけるようになる。これができると随分違う。
・階層は下から合わせる
階層がずれていることがわかったら、当然話している階層を合わせればよい。ここでのポイントは、下の階層から合わせていくことだ。下の階層の認識が合っていないと、それより上の階層の認識は合わない。
「事象=起こっていること」の理解がズレていたら、「課題=困り事」の理解が合うわけがない。逆に言えば、この階層のズレが分かってくれば、かみ合わせの悪さを軌道修正できる。
・今、どの階層について話しているのか?
・参加者の間で話の階層がズレていないか?
・話がかみ合わないのなら、下の階層の議論を先にやるべきではないか?
こんな視点で冷静に議論を観察できるようになる。ここで適切な投げかけをすれば、かみ合わせはよくなる。例を挙げてみたい。
・実際のプロジェクトでの会話
あるプロジェクトで「ペーパーレスの推進」という施策が打ち出された。しかし、その是非は賛否両論だった。
・ペーパーレスは効果があるという人
・ペーパーレスにしても意味がないという人
・ペーパーレスは手段であって目的ではないという人
・ペーパーレス以外にも有効な施策があり、ペーパーレスありきの議論は間違っているという人
・ペーパーレスで逆に工数が増えるという人こうなると、どこからどう議論すれば、みんなの思いがまとまるのか、見当がつかなくなる・・・。こんなときこそ、問題解決の5階層の出番だ。この構造を基に、どこに不満があるのかを確認していく。
例えば、ペーパーレスありきの議論が気に入らないと言っている人は、第4階層の「施策」がまだ出尽くしておらず、ペーパーレス以外にも施策があり得るのではないかと主張しているのだ。だから課題や原因に立ち戻り、改めて施策のアイデアを洗い直すところから仕切り直すと、ズレが解消できるかもしれない。
工数が増えると言っている人は、第5階層の「効果」に疑問を持っている。この場合は、得られる効果を丁寧に議論していく必要があるだろう。
こうしてみると、「ほかに施策があるのではないか?」と言っている人と、「ペーパーレスで逆に工数が増えるのではないか?」と言っている人は、違う階層を気にしていることが分かる。これを一緒に議論しても解消できない。1つずつ階層を分けて議論していくのがよいだろう。
こんな感じで、議論には構造があると言うこと、問題解決の場合5層構造になっているということが理解できているだけで、ずいぶんと噛み合わせが良くなるものだ。
実はこの5層構造の他に、「意義・目的」というレイヤーもあるのだが、それはまた別で解説する。ひとまずこの5層構造を頭に入れておくだけでも応用が効くはず。
この5層構造の話は、新刊も旧刊にも載っています。どうぞご贔屓に。