ケンブリッジ語録#40 「1スライド1メッセージ」
僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
今回はこれ。
1スライド1メッセージ
資料を作成する時に、常に浮かんで来るこの語録。
パワーポイントのスライドを作る時に、一つのスライドには一つのメッセージしか載せてはならないという語録だ。
1スライド1メッセージ。
入社2年目に、PMとこんなやり取りをよくした。
私「資料作りました」
PM「ふむふむ」
(2秒くらい資料を見て)
PM「色々グラフが載ってるけど、このスライドで伝えたい事は何なの?」
私「え?えーっと、、、あれで、コレで、こうなって、こういうことも言えるかもしれないと・・・」
PM「・・・なるほど。一つのスライドにいくつもメッセージが入っているように聞こえるね」
私「そうかもしれません。だって色々言える事があるから・・・」
PM「色々言えるのはよく分かる。けど、さっきの榊巻さんの説明がないと全然伝わらない。まぁ、あっても伝わらないけど」
私「そうですね・・・」
PM「正直、資料だけだと理解できないんだよな。その原因の一つは盛り込みすぎでメッセージがボケていることじゃないかね。」
私「メッセージのボケですか・・・」
PM「一つのスライドでは一つのメッセージしか伝えてはならない。という原則があるんだよ。」
私「・・・」
PM「人間そんなに頭良くない。わかりやすく1スライド1メッセージにして、伝えたいことが子供にも伝わる様にしてようやく伝わる」
私「なるほど、感覚的には理解できます・・・」PM「じゃあ、改めて、このスライドで言いたいことを一言で言うとどうなる?」
私「うーん・・・」
PM「よし、じゃあ10分時間あげるから考えてきて」・・・
ぼやっとしたスライドを作ってしまうと、漏れ無くこのスパイラルに陥る。
でもこうやって丁寧に聞いてくれたから、考える力が伸びたんだろうなと思う。当時のPMに感謝したい。
資料は相手に何かを伝えたいから作るわけで、そこには「伝えたいこと」があるはず。
伝えたい事が伝わるなら、どんなダサい資料でもいい。伝えたいことが伝わらないならどんなカッコいい資料でもだめ。
そのためには「1スライド1メッセージ」の原則に沿って、「伝えたいこと」を一言で言えるようになってないと上手く伝わらないのだ。
年がら年中「一言で言うと?このスライドのメッセージは?」と聞かれたので当時の私は、(なんだよ。一言で言えなくたって良いじゃないか、伝わればいいんだから。一言にこだわり過ぎたら正しく伝わらないじゃないか)なんて思ったこともあった。
でもしばらく経って、そうじゃないんだと気付いたのである。
例えば、
「このスライドから、売上が年々増加してきているにもかかわらず、利益が伸びていないことが読み取れ、同時に2016年の利益だけは妙に高くなっている事がわかります。ここに改善のヒントがある気がしています。また、今年は売上も未達になる可能性があり、利益率の改善と売上の改善が両輪で必要。そのために、2016年の利益率の高さを分析し・・・・」という説明をされても何も頭に残らない。
でも、「このスライドで言いたいのは、"2016年の利益率の高さを原因分析して、今年の営業戦略に盛り込みたい"ということです」と1メッセージで言われると、少なくても何がしたいのかは伝わってくる。圧倒的に理解しやすくなる。
何が言いたいかというと、伝えたい事が多くてアレもコレもと、沢山伝えようとすると、結果的に"1つも"伝わらなくなる。ということ。いくら盛り込んでも伝わらなければ、何の意味もない。急がば回れ。結局、1つを的確に伝える事を積み重ねるしかない。
「1スライド1メッセージ」はこれを体現する一つの方法だ。