ケンブリッジ語録#29 今どうなっているの?に"即"答できるか?
僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
多くのコンサルタントの琴線に触れ、成長を促すカンフル剤になってきた。現場感がみなぎるエネルギッシュな語録を書き留める。
今どうなっているの?に"即"答できるか?
「新しいサービスを立ち上げる」という全社プロジェクトを支援していた時のこと。諸々の事情により、クライアントのプロジェクトマネージャーや、プロジェクトオーナーがコロコロ変わってしまっていた。その時に痛感した語録。
「今どうなっているの?」というクライアントからの問に即答できないと、コンサルタントとしては2つ面で致命傷になる。信頼面と品質面である。
【 ①信頼面 】
クライアントのプロジェクトマネージャーやメンバーが変わる度に、こんなことを聞かれる。必ず聞かれる。
- 今どんな状況なの?
- 何がどこまで進んでいるの?
- 進捗は?
- 何日遅れ?
- リスクは何?
- 何が分かっていて何がわかっていないの?
- そもそもPJの目的は?
- てゆーかケンブリッジの価値ってなんなの?
そして即答できないとクライアントの信用をあっという間に失う・・・。なぜかと言うと、単純に「状況把握できてないの?こいつら大丈夫?」と思われてしまうからだ。ファーストタッチでこのやり取りをしてしまうとレッテルを貼られてしまい、本当に致命傷になる。そしてこれは次の品質面の問題にも直結する。
【 ②品質面 】
クライアントからのこうした問いに即答できないということは、プロジェクトをマネージできていない状態に陥っていると言える。
プロジェクトをマネージするということは「やるべきことの総数を明確にして、アウトプットと責任範囲を明確にして、進捗を管理すること」である。(もちろんメリハリは必要だが)
上流でも下流でもPMOでも基本的な考え方は変わらないと思う。もちろんフェーズによって抽象度は随分変わるけど。これはプロジェクトの単位に留まらない。チーム単位、個人単位、タスク単位、全部に当てはまる。
今、あなたのプロジェクトは本当にマネージできているだろうか?経営陣や、外部の人に"即"説明できる状態にあるだろうか?
コンサルタント木下さんのコメント
先日まで大規模PJでPMO支援をしてました。
そこでは、「今どうなっているの」の「今」は、先を見据えた上での「今」でないと意味がない、と考えていました。
例えば、【開発SEの報告】
「現在、○×機能を開発しています。少し遅れていますが、問題ありません」
⇒一応「今」の状況を報告している【PMOとして確認すべきこと】
「○×機能って、△月△日までに必要なものですよね?このままでは他チームのテスト開始に影響が出るのでは?」
⇒同じ「今」でも「今から見通せる未来」も含めて考える
当然、上記のような話は計画に落ちているべき話ですが、先を見据えた上で「今」を捉え、即答することは、上層部が判断するための材料を提供する意味でも大切と思います。
コンサルタント新谷さんのコメント
私も思うことをつらつら書いてみます。せっかくなので、榊巻さんとは少々異なる意見をタスク、個人、チーム、プロジェクト、といったすべてのレベルで状況を把握できていれば、素晴らしいですね。
ただ実態としては、プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、タスク、成果物、人の数が膨大になるため、すべてを網羅的に把握するのは難しいことが多いのではないでしょうか。
プロジェクト管理ツールを導入して、メンバー全員が各自のタスクの進捗状況を日々登録する、ということができれば可能かもしれませんが、そうした環境を準備できるプロジェクトは、意外と少ないように思います。
状況把握に躍起になると、情報収集に奔走することになり、管理側も報告側も負荷が高い「管理のための管理」状態に陥る危険がありそうです。
状況の把握が必要なのは、
-危うい状況を早めにキャッチし
-問題が大きくなる前に早めに手を打つ
ためだと思います。PMOとして、さまざまな制約条件の中でいかに効率的かつ勘所を押さえてプロジェクトの状況を把握して、ボヤのうちに手を打つかが腕の見せ所なのでしょう。そのためには、膨大な管理対象の中から、濃淡を付けて対応することが必要になりそうです。経験上PMOの仕事は段々増えていく傾向にあるように思います。
遅れても大勢に影響がないものは放置し、より重要な事項に集中しなければ、時間がいくらあっても足りない、ということになりかねません。PMOタスクのうち、定型的なものは仕組み化してお客様に引き継ぐ、といった対処も有効だと思います。私たちがPMOとしてお客様を支援する場合、いわゆる管理業務より、PJが進むにつれて日々発生する問題を様々な打ち手で解決し、PJを計画どおりに進めることが期待されることが多いのではないでしょうか。こうした問題解決に時間を割くためにも、状況の把握に使う時間は少なく抑えたい、と思っています。
とは言え影響を読み違えて、放置したりお客様に任せた件が、「とても厄介な問題」に成長して帰ってきた経験も多数あります。まだまだ精進が足りない、ということでしょうね。