ケンブリッジ語録#8 「意識します」で変わるなら誰も苦労しない。変わるためには「仕掛け」が必要だ
僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
多くのコンサルタントの琴線に触れ、成長を促すカンフル剤になってきた。現場感がみなぎるエネルギッシュな語録を書き留める。今回はこれ。
「意識します」で変わるなら誰も苦労しない。変わるためには「仕掛け」を用意しろ
失敗したり、「ここが良くなかったね」「改善した方が良いよ」というフィードバックを受けると、「次から気をつけます」「意識します」「注意します」「頑張ります」となってしまいがちだ。
とりあえずその場は逃げられるし、楽だからこう言って逃げてしまう。他に改善する方法も思いつかないし。「え?何が悪いの?」という人もいるかもしれない。でも、「意識」だけで変わるのは相当頑張らないとむりだ。ルーチンワークのように仕事の手順を覚えれば済むような話ならともかく、コンサルティングや企画仕事、プロジェクト仕事のような不定形な仕事ではなおのこと。
だから「次から気をつけます」だけの人は同じことを何度も繰り返す。
自分としては真剣に改善したいと思っているのに、全然改善できない。なぜなんだ!?
僕も昔、この状況に陥りました・・・。
そんな時、「意識します!で改善できないなら、仕掛けに落としこむしか無い」と言われました。
「意識します」と「仕掛け」の違い
恥ずかしながら、以前の僕は「お客さんの話が聞けない、自分の主張を押しすぎる」という傾向にありました。ケンブリッジに入りたての7年ほど前のことです。コンサルタントとしてこれではイカンと思っていたのですが、「意識します」だけじゃどうにも改善されませんでした。
当時考えていた、意識で対応する方法はこんな感じ。
「会議で自分の主張をゴリ押ししないように意識する。そんな時はお客さんの話をちゃんと聞くように気をつける」
自分としてはそこそこしっかり考えたつもりだったけど、全く改善されない・・・。そこで「仕掛け」に落としてみたのがコレです。
「会議で同じことを2回主張したらOUTと捉える。こうなったら自分が話すのはやめて、お客さんの話を聞くようにする」
違いがわかりますか?
「注意します」じゃ自分でダメな状態になっていることに気付けない。「仕掛け」に落ちていれば、自分で状況を把握しやすくなります。自分で気付けなくても周囲にトリガーを引いてもらうことだってできる。「あ、榊巻さん、いま同じこと2回言ったよー」と。
そして仕掛けのトリガーが引かれたら、自分が話すのをやめてみる、という対策が打てるようになる。意識する、という抽象度の高い状態はダメ。トリガーを明確に決めてトリガーが引かれたら取るべき行動をきちんと決める。そんな風にしてようやく「仕掛け」に落ちるのです。
仕掛けで自分の行動が変えられるようになると、それが自然と習慣化してくる。そうなれば仕掛けは必要なくなる。というワケ
別の例を見てみましょう。
目的から逆算して考えていないから作った成果物のクオリティが低い、という悩みを抱えているコンサルタントがいました。
彼が考えた意識での対策はこれでした。「何か成果物を作成するときは、その後の使われ方をイメージすること」
これは「意識」で解決する対策です。イメージしよう!と思うかは本人の気持ち次第。どの程度イメージしたらよいか?も本人のさじ加減一つ。この対策で効果があるかないかは「意識」という目に見えない不確実なものによって大きく左右されてしまいます。他人からも見えずらい。「相変わらずクオリティが低いよ。使われ方イメージしたの?」と言われても、「イメージしたんですけどね・・・」となってしまうだろう。これではダメだ。
仕掛けに落とした対策がこれ。「何か成果物を作成するときは、着手する前に、その後の使われ方をフォーマットに沿って書き出し、イメージがずれてないかPMに見てもらう」
ここまで落ちていれば、明解にアクションが起こせる。さらにこんなこともできるようになります。
仕掛けに落ちていると、次の一手も打ちやすくなる
打った対策が、効果的なのか、そうでないとするなら、どこが問題なのか、どこを直せば効果が出るようになるのか判断できるようになります。例えば、
毎回書き出していて、PMにも見せていて、それでもクオリティが改善しないなら、別の原因があるはず。次はそっちに手を打てばいい。
毎回書き出しているが、PMに見せれていないなら、「PMに見せる」という行為自体が何らかの事情で難しいのかもしれない。PMが怖いとか、PMが忙しすぎて捕まらないとか、PMの時間を使うのが気が引けるとか・・・。そうなるとこれを解消する手立てを考えなければならない。
毎回書き出すことすらできてないなら、もっと強制力のある仕掛けを用意しないといけないだろう。
目に見える仕掛けに落としておかないと、どこがボトルネックで上手くいってないのか全然見えなくなる。仕掛けになっていればトライ&エラーが高速で回せるようになるのです。
さて、あなたの改善アクション、どうなっている?「意識します!」「頑張ります!」になっていませんか?
~コンサルタント為野さんのコメント~
プロジェクトに入った当初、一番に白石さんに言われたのがこれだったので、榊巻さんの語録を見て胸が熱くなりました。
白「Cc.にチームのメーリスを入れ忘れたの、2回目でしょ?」
私「あ!また忘れました」
白「2回やったからイエローね。3回目やったら別室呼出だよ」
私「き、気をつけます...」
白「気をつけるってどうするの?悪いけど信用できないんだよね」
私「??(気をつける以外になにかあるのか?)」
白「自分に自信がおありなんだね。具体的なアクションまで落とさないとまたやるよ」
私「はい...(気をつける以外になにがあるのか?)」
上記のようなやりとりの後、具体的なアクションを私一人で思いつけませんでした。
「Cc.にメーリスを入れる!」と紙テープで書いて、PC画面の下に貼り付ける、という具体的なアクションを白石さんに示してもらい、今も張っていて、これ以降忘れたことはありません。
当時のフィードバックノートを振り返ると、以下のようなことが書いてありました。
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何かに失敗して、今度から○○に気をつけます、もうしません、は駄目。もう二度としないために、具体的なアクションまで落とすこと。
例えば、メールのCc.にチームメーリスを入れ忘れたら、PCの見えるところにシールをはり、Cc.にチームメーリスを入れる!と書く。例えば、「あれやった?どうなっているの?」といわれる前に、その日のToDoを書き出して、優先順位をつけて毎朝白石さんに見てもらう。何か注意されて、直したいと思ったら、行動レベルに落とすこと。
自分の「気をつける」を信じるな。
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フィードバックノートも、私の仕掛けの1つです。
ある方法で上手くいかないなら、違う方法を試すしかない。「意識」で上手くいかないなら、「仕掛け」を試してみる事をお薦めします。
「意識します」で
変わるなら誰も
苦労しない。
変わるためには
「仕掛け」を用意しろ