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橋本正徳の非営利な活動を報告します

正社員の仕事の価値観は「称賛のため」が28%(なんちゃって)

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非営利な活動、ボランタリーな活動は、「称賛」や「感謝」を得たい為にやっているのかもしれない。また、そのような意識は、「非営利」だけでなく、「営利」においても、同じ流れがあるように感じる。「『ボランタリー経済』と『インターネット』」で取り上げた「マネタリー経済」は、次のようなものだと考えることができる。

  • コンビニエンスストアで客が150円という「資源」を支払ってジュースを買う。コンビニエンスストアは、ジュースという「資源」を客に渡す。
  • 労働力を会社に渡し、給料をもらう

これを、「経済交換」というらしく、一方の「ボランタリー経済」では、別の価値観が作用しているのかもしれないと思ったりする。例えば、「社会的交換」と呼ばれているものが、そうかも知れないなぁ・・・と。

社会的交換理論は、実は一言で定義できる。 「人や組織間の関係を、有形無形の資源やり取りとみなすこと」である。 この意味でこれは理論というよりも、むしろ研究のための見方や視点と言ったほうがいいかもしれない。社会的交換理論は一九三〇年代に文化人類学で生まれた。

(略)

経済行為以外でも「交換」という観点から社会を分析できることがわかったのである。その後、この社会的交換理論は、社会学や心理学にも取り入れられるようになった。

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)』より

参照:社会学講座/社会的交換理論 - Scientia

マネタリー経済(経済交換)では、「金銭」「商品」という「誰から貰うか?」にあまり依存せず「具体性」のある「資源」が流通するが、ボランタリー経済(社会的交換)では、「愛情」「地位」など、属人性の高い「誰から貰うか?」に依存して「個別性」のある「資源」が流通する。例えば、「やった行為で誰かから称賛される」「やった行為で誰かから感謝される」など、「称賛」や「感謝」と「労働力」を交換するというのが、ボランタリー経済では主流ではないか?と仮説を立てることができる。

社会起業家になる方法」のなかで、シンクタンク・ソフィアバンク代表、多摩大学大学院教授の田坂広志さんは、インタビューの中で、「すべての日本人が社会起業家となる時代」ということを言っている。「企業の中においても、世の中に貢献するという社会起業家精神が再び見直されるようになる」という風なことが書いてあった。僕もそういう「流れ」を感じている。「金銭」や「商品」と「労働力」を交換することよりも、「称賛」や「感謝」と「労働力」を交換するということが、今までよりもクローズアップされてくるのだろうと考える(もちろん、「称賛」や「感謝」の向こうにライフタイムバリューなど「金銭」を求めているのかもしれないが)。また「マネタリー経済とボランタリー経済という視点からみると、社会的起業家と企業は、反対の経済原理から、互いに近づき合っているのです。従って、近い将来、この二つは融合していくでしょう。」とも述べているが、確かにその傾向を感じることができる。

「正社員」と呼ばれる人たちの労働への価値観は、「より責任のある立場で、大きな仕事がしたい」、「任せられて裁量の大きな仕事がしたい」「新しい分野を開拓していきたい」といった「称賛」をもらえるような「大きな仕事を積極的に」という価値観が28%を占め、次に「個人でこつこつ取り組む仕事がしたい」、「多くの人とかかわらず個人で仕事がしたい」という「コツコツと」という価値観が17%、「顧客に満足してもらえる仕事」、「世の中や人のためになる仕事」、「仕事を通じて所属する組織発展を」と自分以外のためにという「感謝」をもらえるような「顧客・世の中・組織発展のため」という価値観が16%を占める。その次に「報酬のため」という「金銭」をもらえるような価値観が14%になっている。我田引水かもしれないが、シンプルにまとめると、正社員の人は「称賛のため(28%)」「感謝のため(16%)」「金銭のため(14%)」になり、「社会的交換」を大事にしていると判断できる。もちろん、「称賛」「感謝」を得ると、より多くの「金銭」がもらえるかもしれないと思っている人が多くいると思うが、順序としては、「称賛」「感謝」が先で「金銭」が後だ。

参照:2007/12/5:働く上での考え方・価値観に関する正社員5049人の意識調査結果

「マネタリー経済」と「ボランタリー経済」が表裏ではないように、「経済交換」と「社会的交換」は表裏ではない。相互に補完するもの、もしくは、どちらかに内包されるものであるとおもうが、一歩踏み込んだ中の価値観のバランスとしては、「金銭」のような「具体性」の高いものより、「愛」などの「個別性」の高いものが求められている。企業の中では、まだまだ「経済交換」を中心にしないと、食べていけない。なので、僕をはじめ、非営利な活動を行う人の多くは、精神的な補完のため、「社会的交換」が中心の「非営利な活動」を行うのだ。しかし、世界中の、日本の、「経済の豊かさ」と「心の裕福さ」が高まり、「食べていけない」という状態が減っていくと、次第に、企業の中においても「社会的交換」を重要視していかざる得なくなってくると思う。「世界的不況」が逆に切っ掛けとなり、自分自身の「経済の豊かさ」と「心の裕福さ」に気付くこともあり得る。


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参照:
『善良』とは何か?
『ボランタリー経済』と『インターネット』
「非営利」と「営利」の補完作用
「非営利」を考える
社会的企業について


写真:iron fillings

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