お客様に一番近い人で、その会社の将来が見える
私の会社には月に1回、窓ガラスの清掃が入ります。清掃業者は、建物の管理会社が決めていますが、清掃担当者の方を観察していて気付いたことから、教育の着眼点をご紹介します。
ある日の出来ごと
日本を代表する某社では、次世代リーダー育成に関わる研修を、都内のウォーターフロント、景観の素晴らしい立地で実施しています。ある日のこと、研修前の朝早い時間に窓の清掃が入りました。その様子を観察していると、2名の清掃担当者に、1名の現場監督。3名体制で実施しています。
3名は、テキパキと機敏な動作で作業を進め、途中途中でお互いに声を掛け合っています。1つ1つの窓がきれいになっていくのと同時に外の景観がキラキラと注ぎ込んできます。そして、こころなしか、空間も清々しい空気に包まれています。その作業に見入っていた私は、あまりの見事な立ち居振る舞いとチームワークに、終わるころには拍手をしたくなるほどでした。
その光景を見てからしばらくたったある日、私の会社にも窓ガラスの清掃が入りました。
私の会社も、ウォーターフロントです。(プチ自慢?)左手にはみなとみらいの観覧車が美しい光を放ち、正面には横浜港で船が行きかい、右手には赤レンガ倉庫と言う絶好のロケーションです。先日のことがあったので、窓がきれいになったら、また、横浜のきれいな眺めが楽しめると、ワクワクしていました。
某社に比べて質素なオフィスのため、清掃担当の方は1名です。彼は「すいません、窓ガラス掃除します」といって室内に入り、「ブラインド開けていいっすか」と尋ね開け始めます。私も作業がしやすいように窓際にあった観葉植物を移動させ、他のブラインドを開けるのを手伝ったりしていました。
観察していると・・・なんとなく、先日見た光景と違います。
大きく違うのは、服装。そして、動作。
うーーーん、何かが違います。
終わるころ、私はとてもがっかりしていました。もちろん、清掃をしていただけるだけでありがたいことなので、文句は言えません。けれども、何かとても残念な気持ちなのです。
観察を続けること数ヶ月
そしてそれ以来、窓ガラスの清掃が入るたびに業者の方を観察するようになりました。観察していて気付いたことは、数ヶ月おきに業者が変わっているようなのです。そしてどうやら徐々に値段が安いところに移っていっているのではないかと思われるほど、身だしなみや言動がぞんざいになっていきます。
今では、"窓掃除がゆううつ"になるほどです。
教育の着眼点
某社で清掃を担当している人たちと、私の会社で清掃を担当する人と、一体何が違うのでしょうか?色々な違いが考えられますが、私は、教育システムだと思っています。
その教育システムの根幹は、"仕事に対するプライドの持たせ方"です。仮説ではありますが、某社で清掃を担当している会社は、理念を元に、自社のサービスがどうあるべきか、それを具現化する社員には、どのような立ち居振る舞いが求められるのかを明確に定義しているように感じます。また、それに合わせた技術やコミュニケーションを磨く、教育機会も用意されていることでしょう。そして社員一人一人、アルバイトに至るまで、それを実現するためのメンバーとして扱っていると感じられます。
一方、私の会社の清掃を担当している会社は、理念はあっても形骸化しており、作業をする方をその日その日の作業員としてしか見ておらず、関心を寄せているのは、その日の作業が滞りなく終わったかどうかだけではないかと感じます。
会社の姿勢が、現場で働く人を通じ、ユーザーに伝わっているのです。言葉を変えれば、お客様に一番近い人を見れば、その会社の将来が見えると言えます。
私たちは契約を更新していただけない時、"お客様の環境"や"価格"のせいにしがちですが、実は、お客様は突出した価値を見い出せなかいため、"値段"という"わかりやすい価値"を基準にせざるおえないということがよくあります。
もし自分の会社の取引の継続率が低いと感じられたら、今の会社のあり方を見直す時期かもしれません。
明日以降、"職場でできる教育"のヒントをご紹介します。