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クラウドコスト削減へ向けてのエージェント、Vantage「FinOps Agent」

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クラウドのコスト管理に携わっていると、「改善ポイントは山ほど出てくるのに、結局は現場が動けず積み残しになる」という構造的な課題に、誰しも一度は悩まされます。
推奨レポートは増える一方で、実行には複雑な調整が必要。気づけば現場は"推奨疲れ"に陥り、クラウド投資のROIを最適化できないまま時間だけが過ぎていきます。

そんな長年のパラダイムを根底からひっくり返す可能性があるのが、Vantageが今回発表した「FinOps Agent」です。
これは単なる新機能ではなく、コスト最適化そのものの在り方を再定義する、FinOpsの新しい地平線といっても過言ではありません。


1. 「分析ツール」ではなく、ついに「実行できるエージェント」が登場

従来のFinOpsツールは、"洞察を提示する"ところまでが役割でした。
つまり、「実際に誰が直すのか?」という最も重たい工程が人間に残されていたわけです。

FinOps Agentはここを根本から変えます。

観察し、学習し、そして行動する ----
FinOpsエコシステムが待ち望んでいた"自律的エージェント"へ。

分析と実行が途切れることで発生していた"価値の漏れ"を塞ぎ、インサイト→アクションまでをひとつのループとして完結させる。
FinOpsがようやく「監視の時代」から「自律実行の時代」に進む転換点と言えます。


2. 新しいFinOpsの専門家は、ダッシュボードではなく"Slack"に常駐する

新しいツールを入れるたびに、複雑な画面を覚えさせる必要があるのはよくある課題です。
FinOps Agentはここでもアプローチが違います。

日常的に使うSlackに常駐し、チームの「いつでも相談できる同僚」として振る舞います。

  • コスト質問

  • レポート生成

  • アクションの承認

これらを自然言語でやり取りでき、裏側では Vantage MCP や Docs MCP が知識とデータを補完。
既存ワークフローに自然に溶け込み、"使われるFinOps"を実現します。

Slackが、そのまま「能動的な最適化インターフェース」になるわけです。


3. 「AIにクラウドを任せて大丈夫?」を前提に、信頼をゼロから設計

AIにインフラ変更を任せることに不安があるのは当然です。
Vantageはそこを深く理解しており、はじめから"信頼をつくるための仕組み"が組み込まれています。

● 選択式の承認フロー

完全自動化するか、人の承認を必須にするかを選べる。

● 推奨事項のオプトイン/オプトアウト

必要な種類だけ反映させられる。

● 一時的な権限付与

必要な時だけ最小限の権限を付与し、作業後すぐに剥奪。

● 二重の監査ログ

Vantage監査ログ+AWS CloudTrailで完全な追跡性を確保。

これらは単なる"安全装置"ではなく、FinOpsにおける最大の心理的障壁----
「AIに触らせて本当に大丈夫なのか?」
を越えるための設計思想そのものです。


4. 削減実績ベースの料金体系が、顧客とベンダーの利害を完全に一致させる

特に注目すべきなのが料金モデルです。

Savings PlansやRIなどのコミットメント最適化について、
"実際に削減した金額の5%" が料金となります。

つまり、

  • 成果が出なければ Vantage の利益は0

  • 成果が出た分だけ両者にメリットが生まれる

という、非常にクリーンな成功報酬モデルになっています。

インフラ構成変更に関する料金は後日発表ですが、
2026年2月1日まではエージェントとの会話は無料で試せます。


■ 結論:FinOpsは「守り」から「攻め」へ。

Vantage FinOps Agentは、クラウドコスト最適化の実務を長年縛ってきたボトルネックを取り払います。

  • 分析して終わり

  • 推奨は出すが実行はできない

  • レポートの山だがアクションは進まない

こうした"受動的FinOps"を抜け出し、
"能動的で自動化されたFinOps"へと向かわせる決定打になる可能性があります。

最後に、ひとつ問いかけたいと思います。

コスト最適化の退屈な作業をエージェントが肩代わりしてくれたら、
あなたのチームは「本来の仕事」でどれだけ前に進めるでしょうか?

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