40代・50代の閉塞感は"絶望"ではなく"羽化"の前兆だ──転職ではなく「転身」という選択
ふと、夜中に目が覚めて天井を見上げたとき。あるいは、通勤電車の窓に映る疲れた自分の顔を見たとき。
こんな言葉が脳裏をよぎることはありませんか?
「自分の人生、このままでいいのだろうか」
「自分自身の可能性を信じることができれば、どんな遠い夢も手の届くところにある。」
これまで脇目もふらずに走り続け、それなりの役職や評価も手に入れた。なのに、なぜか心が満たされない。前方に広がるレールが、急に色あせて見えてしまう──。
もしあなたが今、そんな「40代特有のキャリア閉塞感」を感じているのなら、まずお伝えしたいことがあります。
それは、あなたが弱いからではありません。
あなたが今、「サナギ」の時期にいるからです。
窮屈な殻の中で感じる閉塞感は、絶望のサインではなく、あなたが次のステージへ飛び立つための「羽化(変容)」の前兆なのです。
そして、その新しい世界への扉は、決して遠くにあるわけではありません。実はあなたのすぐそばにあり、静かに開かれる時を待っているのです。
1.「転職」の限界と、「転身」という可能性
多くの人は、この閉塞感を打破するために「転職」を考えます。
しかし、同じ業界、同じ職種、似たようなポジションへの水平移動(転職)では、一時的な気分転換にはなっても、根源的な問いは解決しません。
今、私たちに必要なのは、場所を変えるだけの「転職(Job Change)」ではなく、自分自身のあり方を変える「転身(Transformation)」です。
- 転職: 既存のスキルを切り売りし、他者の作ったルールの中で戦うこと。
- 転身: 自分の経験を再定義し、自らがルールを作る側へ回ること。
40代・50代は、体力勝負のゲームから降りて、蓄積した「実践知」を武器に、戦うフィールドそのものを変える時期なのです。
2.宮沢賢治に学ぶ「軽やかな転身」
ここで、ある一人の先人の生き方をご紹介したいと思います。
詩人・童話作家として知られる宮沢賢治です。
彼は一般的に「作家」として知られていますが、その人生をつぶさに見ていくと、驚くほど軽やかに「転身」を繰り返した人であることがわかります。
彼はある時は地質学者として石を調べ、ある時は農学校の教師として教壇に立ち、またある時は農業技師として現場で汗を流しました。そして夜になれば、物語を書き、チェロを弾く。
彼は「私は作家だ」「私は教師だ」という肩書きで、自分の限界を設定しませんでした。
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
という目的(Purpose)のために、その時々で自分の持てるカード(科学・芸術・宗教・情熱)を総動員し、役割を自在に変え続けました。
これこそが、真の「サードキャリア」の実践です。
一つの専門性に固執するのではなく、自分の経験を社会のニーズに合わせて柔軟に形を変え、貢献していく生き方。賢治のこの軽やかさこそ、現代の私たちが目指すべき「転身」のモデルではないでしょうか。
3.未来を取り戻すためのスモールステップ
「自分には賢治のような才能はない」と諦める必要はありません。
また、いきなり会社を辞めたり、遠くへ旅に出るような大きな決断をする必要もありません。
実は、見渡せばあなたの半径数メートル以内に、変わるための材料は山のように転がっているからです。
40代からの転身において最も大切なのは、忙しい日常の中で見過ごしてきた、その「身近にある宝」に気づく感性を取り戻すことです。
そのために、今週末からできる小さな実験を提案させてください。
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「いつもと違う」を手に取る
今日、駅前の書店に立ち寄って、普段なら絶対に読まないジャンルの本を一冊買ってみてください。あるいは、リビングで今まで観たことのない分野の映画を観てみるのもいいでしょう。遠くへ行かなくても、手元のスマホ一つで未知の世界にはアクセスできます。 -
「行ってみたかった」を叶える
通勤途中で気になっていた看板のお店に入ってみる。いつもの散歩コースを一本変えてみる。そんな、日常の隙間にある「小さな冒険」を自分に許してあげてください。 -
「心の揺れ」を観察する
その時、あなたの心はどう動きましたか?
「意外と面白い」とワクワクしたのか、「やっぱり合わない」と違和感を持ったのか。その「感覚」こそが、あなたの次の行き先を示す羅針盤になります。
特別な場所に行かなくても、あなたのすぐ手元、見慣れた景色の中にこそ、未来への鍵は無数に隠されています。
その小さな「ワクワク」や「違和感」を火種にして、次の行動を選んでみる。
そんなささやかなスモールステップの積み重ねが、1年後に振り返ったとき、あなたのキャリアをまったく違う場所へと運んでいるはずです。
4.さあ、人生のハンドルを握り直そう
40代からのキャリアは、誰かに評価されるためのレースではありません。
自分が本当にやりたかったこと、社会に残したい価値を追求する冒険です。
閉塞感というサナギの殻を破り、あなたらしい色の羽を広げて、新しい空へ飛びませんか?
そのための具体的な地図は、私の著書にも記されています。 ;)
『ビジネス経験を活「40代から大学教授」という最高の働き方』
共に学ぶ仲間のみなさんへ、多くの共感とメッセージをありがとうございます。
ぜひレビュー欄で「あなたの転身ストーリー」を聞かせてください。
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皆さんの声が、次の社会を動かす風になります。
これからも一緒に、”転身の時代”を育てていきましょう。