日本と日本人は「GM化」しつつあったのでは?
今週は「APECだ、TPPだ」ということで、ニュースなどでも「経営のグローバル化」に関する特集が増えている。
昨日(11/9)は、
- NHKニュースで日本企業の人材流動化(現地人の登用)
- TV東京 「ガイアの夜明け」では、「中国進出工場でのスト回避」
と、立て続けに2時間見たが、その感想が表題である。
「中国進出工場でのスト回避」については、問題を生じている企業の工場において
- 現地労働者用の食事がまずい一方、日本人幹部は別室で上手いものを食べている
- 日本人管理職は、労働者に話しかけない
- 日本人だけで重要な会議を行い、労働者は蚊帳の外
などの問題点が指摘されていた。
これを見て、GMが撤退した工場跡にTOYOTAがGMとの合弁企業(NUMMI)を設立して成功した物語を思い出した。
ビジネススクールのリーダーシップ系の授業で教科書によく出る「日本式管理の良いところ=TOYOTAの現場主義」の象徴として、工場長などの幹部が現場の労働者と同じ食堂で「同じ釜の飯を食う」ことによるTeamSpiritが挙げられている。
ところが、アジアの進出先では、経営者側に立った一部の日本企業は、鉄則を忘れてかって米国企業が犯したのと同じ過ちを犯していることが往々にしてあるということなのだろう。
そう、この問題を抱えた中国進出企業は「GM化」していたのである。
今までは、欧米企業に追いつけ追い越せ、先進国市場での現地生産という”上目使いの海外進出”だったが、「低賃金を求めたアジア進出、日本人のものづくりは優れている」という意識が、いつの間にか我々日本人に「驕りの意識」を持たせていたのではないか?と感じた次第である。まるで、「GM は世界一の自動車メーカー」というプライドが捨てられなかったのと同じように。。
結局、この特集の中では、社長さんや工場長さんが改心して、リーダー級の中国人労働者から意見を吸い上げる会議を行ったり労働者と同じ食堂で食事することとなり、食事のメニューも改善され、労働者のムードが一変するというHappyEndになっていた。ここが、最後まで意識を変えなかったGMとの違い=日本人の柔軟性として、救われた気持ちになった。
一方、「現地人の登用」の話は、「GM化」から立ち直る話として見ることはできるだろう。
但し、その結果、「幹部の椅子」を巡る競争は激しくなり、日本企業の中でも、日本人だからという事実は優位性でも何でもなくなるということを忘れてはならない。
ここを忘れてしまうと、「NUMMIの成功から何も学べずに滅んでしまったGM」と同じように、頭では現地人登用の重要性を理解していても、「俺たちは本社社員だから」とタカをくくって何も行動を変えなかったGMの社員と同じような羽目になってしまうのである。
「TOYOTAに学べ」という号令の下、GM本社から合弁会社のNUMMIへ、お偉いさんや若手幹部が何度も来社して工場視察しても、本社に帰れば「あれはよその出来事」として、忘れてしまう。毎年新たな管理職が同じように見学者としてやってくる。でも、何も変わらない。。まるで、政権交代があっても政治家が何も変えられないように。。
ところで、本家のGMは、いったん債務整理された後、早くも再上場されようとしている。
労働者への年金負担を切り離しさえすれば、キャッシュフローは回っているという判断で、どこかのファンドが支援するような話も出ているようだ。これもまるで、高齢化での年金負担を抱えた「ニッポン丸」に酷似しているように思われる。
そもそもGMが凋落した原因の一つとして、世界の自動車需要が小型化・低燃費化に向かうトレンドの下、「ガソリン大量消費・SUV」というある種の「ガラパゴス市場」に固執し続けたことがあるだろう。これも、国内・先進国市場だけしか見ていない日本企業との類似性を想起させられる。
「ニッポン丸」の場合は、「年金債務=高齢者」を切り捨てて、若者だけの国や企業にしたら誰か助けてくれるだろうか。