門川町高糖度トマト組合の取り組みから迫る!-チーム農家で活躍するkintone-
こんにちは、葉月へちまです。
今年もkintoneの魅力を積極的にお伝えしていきたいと思います!(kintoneがどういうサービスかについてはこちらをご参照ください)
今年最初に訪れたのは、宮崎県門川町にあるトマト農家です。
これまでも各地取材してきましたが、農家ははじめて。
農業とIT。
変わった組合せですが、kintoneはどのように活用されているのでしょうか?
今回もサイボウズ社の中村龍太さんにくっついて取材をさせていただきました!
◯門川町高糖度トマト組合とは
在籍しているメンバーは2014年頃、宮崎県の農業補助事業の一環で助成金を受ける過程で集まったそうです。
現在8名が在籍。週に一度互いの農園を訪問して意見交換を行う勉強会や出荷数を確認し合う会議を行っています。
お互いの良いところを共有し成長するために日々活動されてるんですね。
【メンバー】
前列に座っていらっしゃるのが、
- お馴染み、サイボウズ株式会社の中村龍太さん
- 新門トマト農園の新門剛さん(55)
後列は向かって左から
- トマけん農園の中田健人さん(24)
- JA日向本店販売部門川選果場係長の黒木陽一さん
- 森とまと農園の森雅也さん(44)
- NaKaTa農園の中田英治さん(55)
- 中田農園の中田博文さん(49)
- 津島農園の津島伊佐雄さん(59)
諸事情により集合写真を撮る前に帰られた、
- 七八蕃茄園の林田直人さん(39) (写真左端)
さらに、今回会議に参加されなかった、和農園の河野和教さんを加えたメンバーが、主にkintoneを使用されているとのことでした。
○kintone活用の経緯
組合の中心人物である新門さんが、
「クラウドシステムを利用してデータをひとつのところで管理し、共有したい」
と森さんに相談したところから、すべてが始まったそうです。
森さんは農業現場にkintoneを導入しているNKアグリ株式会社さんをご存知でした。
NKアグリ株式会社さんは、「植物工場による野菜の生産・販売、機能性野菜の研究開発・流通」を行っている会社です。
ちなみに龍太さんは副業でNKアグリ株式会社さんにも在籍されてます。その繋がりで龍太さんと森さんは知り合ったのだそうです。
森さん自身一度kintoneを触ってみて、「これは使える」と確信。kintoneの使用に踏み切りました。
まだ使用し始めたばかりですが、森さんはkintone導入で収穫予測、出荷管理ができるようになることによって10%から20%の増収が見込めるとおっしゃっていました。
組合全体の年商は現在、3億3千万円程。さらに今後kintoneに生産管理アプリを加えることで生産が揃うことにより5%から10%、あるいはそれ以上の増収も可能とのこと。森さんのkintoneへの期待値の高さが伺えました!
○kintoneによる市場価格の安定と売上の向上
kintoneはトマト組合の皆さんで閲覧・編集されてますが、一番使用頻度が高いのはトマトの選果場で出荷データの管理をされているJA日向の黒木さんなんだそうです。
組合のメンバーでない黒木さんがどうしてここで関わってくるのでしょうか?
【門川町高糖度トマト組合とJA日向関係】
実は、門川町高糖度トマト組合さんとJA日向さんの関係は普通の農家と農協の関係とは少しちがっています。
まず、通常の農家と農業組合の関係がこちら。
農協は農家と販売店を繋ぐ存在です。
でもこの方法だと、たとえば多く収穫できた時は安く買い叩かれてしまうし、逆に少なかった時は価格が高騰してしまいます。値段が安定しません。
そこで門川町高糖度トマト組合とJA日向は
という仕組みを考案。
市場を通さず直接各販売店(スーパーなどの業者)に掛け合うため、余った分は直売店で販売することもできますし、注文数より収穫数が少なかった場合も値段の交渉がしやすい。だから価格が安定する、というわけです。
農業技術が進歩したといっても自然の産物ですから収穫数を安定させるのは難しいですから画期的なシステムですよね。
そして、私が今回の記事で一番お伝えしたいことは、この価格の安定とその結果の売上向上にkintoneが大きく関わっているということなのです!
○kintoneの使い方
こちらはJA日向選果場にある機械です。
この機械でトマトの糖度、つまり美味しさを測り、選別していきます。
トマトの糖度はSからDランクに分けられ、個数がすべてデータとして記録されます。
黒木さんは日々この選果機からトマトのランクごとの収穫数のデータをUSBに移し、事務所のパソコンからkintoneに移していらっしゃるそうです。
こちらのkintoneへ取り込まれた前週の収穫実績のデータを元に、
組合のメンバーが翌週の収穫数を予測して入力します。
週に一度の会議の日は黒木さんがkintoneで入力された情報とあわせ、どの店舗へいくつか販売したかの販売実績を加えて資料を作成。
組合メンバーに配布し、会議の中で過不足の調整を行います。
ちなみに、私が取材した日の資料がこちら。
まだ、当日風が強くてハウスの修繕に追われていた新門さんの予測が入っていないのですが、本人に電話で聞いてみると、この表の販売と出荷予測は大体同じくらいでオッケーとのこと。
うーん、そこまで予測を信頼していいのか。素人には分かりかねたので森さんに聞いてみました。
森さんいわく、
「kintoneを導入してから誤差は確実に少なくなってます。だから信頼を置いていますよ。以前の予測は勘と経験だけで行っていたため当たらなかったんです」
とのこと。
出荷予測が正確に行えていなかった頃は、急な出荷増による単価の下落や出荷減による欠品で得意先の信用がない事による発注減がありました。
kintoneで実績数を記録することでそうしたトラブルが減ったのだそうです。
kintoneを導入し始めたのは5月からということですが、半年の間にもう効果が出ているということに驚きました!
さらに、みなさん口を揃えて
「kintoneにみんなで入力することを決めてからサボることがなくなった」
とおっしゃっていました。
農場を経営する上で、毎日の記録と、今後の予測はとても大切。それが分かっていても、つい記録しそびれてしまう日が、個人個人で動いていたときはあったそうです。
これまでkintoneを通じたデータや情報の共有について、単純に便利だということをお伝えしてきましたが、クラウドシステムで密なコミュニケーションをはかることで、モチベーションの維持に繋がるというのは今回新しい発見でした!
〇今後の活用への展望
さらに新門さんは、生産管理のための各農家の栽培記録をもっと細かく取り、グラフや数値にしていく予定とのこと。
こちらはまだ試作段階ですが、各農家の栽培メモを残すことの意味を尋ねると、
「数値化することで、良い人も悪い人もはっきりする。良い人の栽培方法をみんなで吸収して、成長していきたい」
という答えが返ってきました。
本来ライバルである農家同士が、遠慮なく意見を言い合うことで最終的に全体の成長に繋げる。
ITの取材をしていて、そんな先進的な取り組みをされている農家さんと出会うとは。
今回も興味深い事例を取材することができました!
〇最後に
今回の取材までは、農家って肉体労働がメインの大変な仕事だと思ってました。
実際、時期によっては夜明けから日が沈むまで作業することもあるそうですし、天候に左右されてうまくいかないこともあるとおっしゃっていましたが、働かれている皆さんの様子をみて、印象が大きく変わりました。
新門さんや森さんは元々会社員をされていたそうですが、農業をするために自らの意志でこの宮崎の地に来られたんだそうです。
「「食」という生活の基盤に関わる仕事をしたいと思った。やりがいがあるから農作業を肉体労働と考えたことはあまりない」
とおっしゃっていました。
本当に好きなこと、やりたいことを仕事にしているんだなあということが伝わってきて、お話を聞いているこちらまで気持ちが良くなりました。
トマト組合さんの今後の活躍も楽しみですね!