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シリコンバレー駐在のIT商社マン、榎本瑞樹(ENO)が綴る米国最新ICTトレンド

クラウド熱が冷め、現実味を帯びてきた米国クラウド業界

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ITとビジネスを結びつけ世界をリードする企業向けIT最大のイベント「Interop Las Vegas」が今年もラスベガスで開催された。関係者によると、今年の出展社は300社、来場者は18,000人を超えたとのことで、昨年と比較して、景気回復の兆しが伺える。

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クラウドの潮流は、もう終わり?

昨年のInterop Las Vegas(昨年のブログ参照)は、何はともあえれ、クラウド、クラウド、クラウドっとクラウド一色だったが、今年は違う。どのカンファレンスに出ても、展示会場においても、クラウドという単語を全面に押し出しているベンダーは少ない。

かといって、クラウドはバズワードだったのだろうか?というと、そうは思わない。つまり、クラウドの潮流が浸透して、ビジネスとして現実味を帯びてきたと言えるのではないだろうか。各ベンダーは、クラウドのビジネス・モデルの中で、自分の立ち位置をはっきりして、何を提供すべきかがわかり、各カテゴリーにおいて具体的な製品、ソリューションが出揃ってきている。顧客視点でみれば、パブリック・クラウドの活用やプライベート・クラウドの構築の有用性を実感してきているということだろう。

前述したガートナーのハイプ・サイクルで例えると、ピーク期を過ぎて沈黙期から啓蒙期へ進んできていると言える。

昨年から新設された「クラウド・コンピューティング・ゾーン」では、Amazon, IBMなどの大手クラウド・サービス事業者に加えて、今年は中小ホスティング事業者もクラウド事業者へと変身し、リーダーの地位獲得に向け鼻息あらい。製品ベンダーのみならず、Rack Space, Teremark, Hosting.comなどのホスティング事業者がブースを構え、殆どのブースにおいて、大手エンタープライズ企業のクラウド事例を聞くことができたことからも裏付けられる。

今年のトピックスは、「Virtual Data Center」(仮想化データセンター、クラウド指向データセンターと呼ばれる次世代データセンター)。サーバー仮想化に加え、ネットワーク仮想化、ストレージ仮想化、更には、それらの運用管理を自動化していこうという流れを提唱するベンダーを数多く見かけた。つまり、AmazonやGoogleなどのパブリック・クラウド・サービスを活用するだけでなく、プライベート・クラウドを自社のデータセンター内で構築していきましょうという流れが活発化してきている。

仮想化環境の進展とともに出揃い始めた仮想アプライアンス

「仮想アプライアンス」という概念は、オープンソースを中心に4,5年前から市場に出回り始めていたが、ようやくエンタープライズ企業の要求に耐えうるレベルの製品が出揃い始めた。VMwareを中心とした企業の仮想化環境が進展とともに、クラウドの潮流も後押し、仮想アプライアンスの普及が広がり、今後数年で大きく伸びると予想できる分野。

仮想アプライアンスの定義は、ベンダーによっても定義に違いが見られるが、IDCによると機能面から定義するのであれば、ソフトウェア・アプライアンスと 仮想アプライアンスは同意語とみなすことができる。しかしながら、技術面から定義するのであれば、仮想アプライアンスはVMwareやXen等のハイパー バイザーなしに業界標準のx86系サーバーに直接インストールすることができないとしている。つまり、仮想アプライアンスとは、OSとソフトウェアをセッ トにしたイメージ・ファイルという形態で提供される製品を意味する。

要するに、VMwareやXen等のハイパーバイザー上で動作し、仮想化されたシステ ム環境があれば、ユーザーはイメージ・ファイルをインストールするだけでアプリケーションを即座に実行でき、コストも5分の1程度というメリットがある。

IDC調査結果によると「仮想アプライアンスの適用に興味のある分野」は、ITインフラが圧倒的に多い。つまり、従来のルーター、ロードバランサー、ファイアウォールなどの物理アプライアンスの主戦場であった分野は、仮想アプライアンスの波が押し寄せてきているとも言える。

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(IDC:The Market for Software Apps)

展示会場を歩くと、ルータ分野では、新興系ベンダーのVyatta社がシスコのローエンド・ルーターに対抗して、仮想ルーター・アプライアンスを披露し、WAN最適化分野では、BlueCoat社がProxy SG Virtual Applianceを出展、ロードバランサー分野では、Citrix社が、NetScaler VPXを出展するなど、各ベンダー製品が出揃ってきた感があり、今後の展開が楽しみだ。

「Best of Interop」アワードは、10GスイッチのArista Networksが受賞

昨年は、VMwareのvSphere4であったが、今年は久しぶりのネットワーク機器の受賞となった。Arista Networksは、サン・マイクロシステムズの共同創設者であるアンディ・ベクトルシャイム氏が創設した10Gスイッチベンダー。

初めて同社を訪問したのは、2008年のことであったが、当時は高密度、低価格の10Gスイッチという印象で、あまり魅力的ではなかった。しかしながら、元シスコで、Nexusスイッチとともに、Data Center 3.0を推進していたジェシュリー・ウラル氏がCEOに就任してから、「クラウド・ネットワーキング」を提唱し、いっきにクラウド環境を支えるネットワーク・スイッチ・ベンダーへと軸足をシフトしている。

同社のvEOS(virtualizaed Extensible Operating System)と呼ばれる仮想OSは、VMware vSphere 4と連携してvSphereのコントロール・パネルと連動して動作することを実現している。つまり、同社のネットワークスイッチは、企業のデータセンターにある物理サーバーと、クラウドを提供する仮想サーバーとの間のつなぎ役となる。これにより、IT管理者は、物理スイッチ機器と仮想アプライアンス型のスイッチが混在したいわゆるクラウド型データセンター環境を一元管理することができるのだ。

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アワードを受賞したシャーシ型の「Arista7500」とアンディ・ベクトルシャイム氏

その他のアワード受賞者はこちらから。

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