【速報】スタートアップ企業の登竜門「DEMO Conference 2011」
スタートアップ企業の登竜門「DEMO
Conference 2011」が、今年も南カリフォルニアのパーム・スプリングスで開催され、今回で19回目を迎えた。このカンファレンスは、スタートアップ企業が投資家やIT企業のバイヤーを前に新製品のデモンストレーションを披露する形式で「ローンチ・パッド」などと表現されるもの。いわば起業家と投資家のお見合いパーティだ。製品情報やデモ動画は直ぐにでもインターネット上から入手できる時代になったけれど、参加者の目的は休憩時間や懇親会でのネットワーキングにある。運転資金を調達したい起業家とイノベーションに賭ける投資家の意思が双方にマッチするからだ。このカンファレンス出身者(卒業生)には、VMware,
Salesforce.com, Symantec, Ironport(Cisco)に加え、Palm, Boingo,
Tivoなどエンタープライズ向け製品からコンシューマ向けの製品まで幅広い。
今回のテーマはクラウド、ソーシャルメディア、モバイル。鼻息荒い起業家たちが登壇し、6分間の短いプレゼンを実施した。プレゼンと言ってもパワーポイントは一切使用せず、デモンストレーションとプレゼンスキルが勝敗を分ける。殆どがα、βバージョンのプロトタイプで、中には動かないなどのアクシデントも発生したが、オーディエンスも暖かく見守る雰囲気があり、成功すれば拍手が沸き起こる。これもDEMO Conferenceらしい光景だ。出展企業は53社、総勢1,000人を超える人々が世界各国から集まり熱い議論が繰り広げられた。
今年のキートレンドは、何と言っても「ソーシャルメディア」。53社のうち15社がソーシャルメディア関連の新製品や新サービスを世の中に送り出した。
ここでは、カンファレンス参加者からの投票で選ばれる「People’s Choice Award」を受賞し100万ドルを手にしたGutCheck社の新サービスを始め、他アワード受賞者を紹介してみたい。
100万ドルを手にした「GutCheck」オンライン・マーケティング
マーケティングに従事している人であれば、商品開発や販売戦略策定において、ターゲット顧客からの生の声を収集するのに苦労している人も多いだろう。結構なコストと時間をかけた割には質が悪かったなどの経験されている方もいるかもしれない。
GutCheck社の提供するオンライン・マーケティング・サービスは、ターゲット顧客の消費者の中から抽出した人と1対1のチャット・インタビューを実施して情報収集し集計してくれるというプラットフォームを提供している。同サービスは、DIY(Do it yourself)というコンセプトの元、Webインターフェースからセルフサービスで簡単に実施できるようになっている。マーケッターは、GutCheckのWebサイトにサインアップして、ターゲット顧客のプロファイリング(性別、年齢、地域、年収など)を作成、ヒアリングしたい質問をカスタマイズするだけで、後はGutCheck側で集計・分析してレポートしてくれるという仕組み。インタビューは1件当たり$40と従来のOne to Oneリサーチサービスの10分の1のコストで実現。インタビューしたターゲット顧客の数だけ支払うPay as you goモデルになっている。
同社のブースでインタビューしたので動画をご覧ください。
YouTube: DEMO Conference 2011 Spring People's Choice Award GutCheck
これでオンライン・ショッピングも失敗しない?
Zugara社の提供する「The Webcam Social Shopper」 は、オンライン・ショッピングをする購買者向けにバーチャルな試着室を提供することで、購買率を向上させるもの。今回のデモでは女性がパーティに来ていくドレスを自宅で選んで購入するという想定。バーチャルに映し出された試着室では、次々と色々なドレスを試着してお気に入りのものを、モーションキャプチャーによって手に取ることができる。隣の席に座っていた女性の参加者によれば、「よくオンラインで買い物するけど、ファッション・モデルの写真イメージで購入して、手に入れたら自分のイメージに合わず後悔することも多い」とのことで、同じ経験をした女性も多いのではないだろうか。
その他のアワード受賞者は、Manilla 社のコンシューマ向けのアカウント管理サービスで、電話やインターネット、電気料金の支払い、クレジットカードの決済、銀行のオンラインバンキングなどのオンラインアカウントを整理して、一つのダッシュボードに表示、複数のID/パスワードを一元管理してくれるというもの。請求書は同社に送付され、PDFで閲覧することができる。支払い期限の前にリマインドメールを送信してくれるので、支払い遅延するリスクも軽減できそうだ。
Manilla社のアカウント(請求書)管理画面
もう一つは、Nimble 社のNimble。FacebookやTwitter、Linked-inなどの複数のソーシャルメディアを一つのスクリーンで管理するもので、カレンダーやタスク、コンタクト情報なども同期する。ユーザー情報などの機密データは暗号化され、Webベースで提供するもの。SRM(Social Relationship Management)と言うらしい。
Nimble社のソーシャルメディア管理画面
その他、Facebookのファンページのレイアウトを変更してカッコよくみせてファンを増やす「FetchFans」、FacebookやTwitterからのキーワードをリアルタイムに検索して、市場のトレンドがわかる「Trendspoter」などソーシャルメディアのビジネス活用を支援する製品やサービスが多かった。これらの新サービスの台頭によりエンタープライズ企業でのソーシャルメディアのビジネス活用が加速するだろう。
今回のDEMO Conference 2011視察は、前回のエントリーで書いた「2011年IT業界におけるTOP 10予測 by IDC」を改めて実感する結果となった。つまり、ソーシャルメディアやクラウド、ユニファイド・コミュニケーション、モバイルなどの各々のテクノロジーが融合し、イノベーションを起こして新たな市場が形成されている。今回披露された新製品や新サービスは、まさに「ソーシャルメディア」x「モバイル」、「ソーシャルメディア」x「クラウド」、「ユニファイド・コミュニケーション」x「ソーシャルメディア」といったテクノロジーの組わせであった。