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シリコンバレー駐在のIT商社マン、榎本瑞樹(ENO)が綴る米国最新ICTトレンド

異種クラウド間のデータ移動を可能にする標準化動向

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米国市場では、ホスティング事業者、通信事業者が矢継ぎ早に発表したクラウドサービスの事例を頻繁に耳にするようになってきた。2010年は、これらのパブリッククラウドをどう活用して、社内のプライベート・クラウドとどう繋ぎ込むかが、エンタープライズ企業における目下の課題になっているようだ。

4月にニューヨークで開催された「Cloud Computing Expo」でも話題となっていた、いわゆるクラウド・フェデレーションが重要となってくる。(前述クラウド・フェデレーションで加速するプライベートクラウド参照

そこで、今回のエントリーでは、異なるクラウド間のデータ移動を可能にする標準化動向を見ていきたい。今週のシリコンバレーは、ストレージ・ネットワーキングの発展を目的とした業界団体「SNIA(Storage Networking Industry Association)」主催のシンポジウム「Summer Symposium 2010」に注目が集まっていた。

この手のカンファレンスは、日中は有償であるが、18:00以降のBoFは無料で公開され、殆んど日本人がいないので好んで足を運ぶ。BoFとは、「Birds of Feather」の略で、「同じ羽毛の鳥」という言葉から、共通の事柄に興味をもった人たちの集まりを意味し、ある技術の標準化の際、ワーキング・グループとして確立する前に、関心をもったテーマごとに議論する非公式なミーティング。

今回のBoFでは、グリッド・コンピューティング(分散コンピューティング)の技術開発と普及促進を目指している非営利団体OGF(Open Grid Forum)で協議されているオープン・クラウド・インターフェース(OCCI:Open Cloud Computing Interface)と、SNIAが4月に発表したCDMI(Cloud Data Management Interface)の2つの標準インターフェースの共同デモを世界で初めての試みるとのことで、興味深く参加した。

ちなみに、CDMIとは、パブリック及びプライベートのストレージ・クラウド間におけるデータ移動を容易にする規格で、保存するコンテンツのメタデータを保持するように設計されている。つまり、「保存されたデータ・コピーは地理的に分散させる必要があるか?」、「データ・コピーはいくつ作るのか?」などのサービス・レベルを定義することができる。そして、CDMIを適用することで、ストレージ容量に応じた課金の仕組みをつくるのに有効となる。

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上図が、CDMIのアーキテクチャーになるが、重要な側面は、既存のデータアクセス標準プロトコルを変更することなく、CDMIを利用できるとのこと。要するにAmazon S3のAPIやNFS、CIFS、WebDAVなどの従来ファイルアクセス・プロトコルなどのnon-CDMIプロトコル経由でストアされたデータとも共存できるということだ。

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上図に示したように、エクスポートされたCDMIコンテナは、クラウド環境における仮想マシンとして扱われる。詳しいホワイトペーパー「Cloud Storage for Cloud Computing」は、こちらからダウンロードできるので、SEの皆さんは抑えておきたい。

もうひとつの話題は、オープン仮想化フォーマット(OVF:Open Virtual Format)だ。OVFとは、異なる種類のハイパーバイザー間で、仮想マシンイメージを共有できるようにするための標準規格。つまり、VMwareでもXenでもHyper-Vでもどんなハイパーバイザーでも動作する仮想マシン・ファイルを作ることができる。

IT管理の標準化を推進する業界団体「DMTF:Distributed Management Task Force」では、2010年初頭に「OVF rev1.1」を公開し、アメリカ規格協会の米国標準規格として承認されれば、国際標準としてISOに提出するとのこと。

実際には、これらの規格を推進しているのが、VMware、Citrix、MicroSoft等の主要ハイパーバイザー・ベンダー他、IBM、Oracle、Dellなど大手ベンダーであり、既に実装されていることからも、デファクト・スタンダードになることは間違いないだろう。

幸いにもDMTFの会長であるWinston Bumpus氏(実は、2年前からVMware社の標準化アーキテクチャのDirectorを兼務)と情報交換することができたが、同氏曰く、「Citrixは、Project Kenshoというマルチ・ハイパーバイザー開発ツールセットを用意して無償で提供している。仮想化プラットフォーム間を移動可能な仮想アプライアンスが容易に開発できるため、顧客やISVにとってメリットある。」とのことで、「OVFの進展により、益々仮想アプライアンスの導入が、活性化してゆくだろう。」と意気込みを語っていた。

Interop Tokyoでも「仮想化アプライアンスのメリット、デメリット」と題した、パネル・ディスカッションを実施したが、まだまだ「仮想アプライアンスってどうなの?」という温度感であった。しかしながら、今年は、日本市場においても色々と動きが加速しそうだ。

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