書籍紹介 6:「地球温暖化は解決できるのか」小西雅子
このブログはマーケティングがテーマなのですが、 コトラーが「マーケティング3.0」で定義したようにマーケティングの目的は「世の中をよりよくすること(Make the world a better place.) 」です。従来型の企業目線、顧客目線、モノ中心から脱却し、 危機に面している我々が住む地球を守らないと、そもそも企業活動は意味がなくなります。多くの心ある企業がこの目的に向かってシフトしはじめています。ネスレやユニリーバなどはそのリーダー企業です。2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を企業活動目標に取り入れ、定量的な目標を掲げコミットしています。企業 X 顧客(生活者)X 地球で解決しようという試みです。これは国連、政府、NGO、企業、生活者が共創することによって はじめて実現できる壮大な試みですが、指数関数的に破壊されていく地球環境をとめるには、じつは時間がありません。
このような状況においてマーケティングは何が貢献できるでしょうか?国やNGO、CSRに任せておいてよいのでしょうか?コトラーは、マーケティングも、マーケティングこそ、その責務を担うべきだと論じています。なぜならこのような活動が広く推進されるためには、生活者をしっかりと共創に巻き込む必要があるからです。そのためにマーケティング・コミュニケーションが重要なのです。一部の良識ある人たちが活動している、だけでは遅いのです。
我々は社会課題解決を顧客のニーズとしても捕まえ、この課題をマーケティングで解決することでビジネスと社会課題の解決を行い、持続可能な世界にしていくことを実現していくことをこれからのマーケティング=エンゲージメント・マーケティングとしています。
ではそのためにはまず何をするか?というと「社会課題の理解」です。これは我々が参画しているポーターが主幹者のひとりでもあるCSV推進団体「Shared Value Initiative」の トレーニングの中でも強調されていました。前置きが長くなりましたが、この本は大きな社会課題の一つ、地球環境についてやさしく解説してくれています。この手の本はどうも専門的になりすぎ、初心者でもありマーケターでもある私にはなかなか理解できない本ばかりでしたが、この本はそんな私にも地球環境の現状や様々な活動などをやさしく解説してくれています。特に世界が協力して温暖化対策を講じていくCOPでの活動の試行錯誤は人類が試されているかのように映ります。そしてたどり着いたCOP21、いわゆるパリ協定ではようやく共有価値化され守るべき枠組みと目標が定められました。偉業とも言えるべきモメントでした。しかし、その後アメリカ大統領に選ばれたトランプ氏はこの偉業からの脱退を決めました。
日本は、90年代は環境大国として温暖化対策、CO2の削減などをリードしてきました。そして京都議定書でリーダーとしての役割を果たしたのですが、その後の政治の混乱、政権を担う政権党の考えで、現在ではむしろ後進国として後塵を配しています。日本人は地球環境の恩恵をもっとも享受している国の一つですが、故にそのありがたさが欠如しているのかもしれませんが、Z世代、ミレニアル世代を中心に社会課題意識が高まり(弊社調査では18歳から24歳は74%が「非常に関心がある」「関心がある」と答えています。全体では55%。n=1200)、企業が解決にコミットしているかどうかは商品・サービスの選定意向(18歳から24歳は28.2%、全体は24.8%)にも影響しています。
これからのマーケターは顧客と同様に地球にもエンゲージメントする必要があります。