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共創でマーケティングを変える!

エンゲージメント・マーケティング事例:Starbacks 震災復興支援プログラム

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本書で何回も取り上げてきたスターバックスはエンゲージメント・マーケティングに於いて世界的なリーダーシップをとっている企業です。関係者(顧客、スタッフ、生産者、地域など)とのオーガニックなエンゲージメントを大切にしています。広告費の代わりにこれら関係者とのエンゲージメントを強くすることにお金をかけています。例えば、生産者への農耕具購買のための低金利ローン提供やフェアトレード、美味しい豆と生産者の生活のための自然環境保全のための基金、店舗でのフリーWifi、再利用紙のカップへの活用を最初に始めたりなどなどです。広告というメディアより、顧客や生産者という人とのエンゲージメント強化の方が収益性の高いビジネスが継続すると確信しているようです。

彼らのコミュニティサイトMy Starbucks Ideaには顧客からの数多く意見や要望が寄せられます。これらの要望は、やはりこのこのユニティに参加している顧客によって投票され、賛成意見が多いものは正式にスターバックス社によって検討が開始され、その検討プロセスや結果が公開されます。ここから幾つかの新商品やサービスが生まれています。商品やサービスへの要望ばかりでなく、店舗周りでの地域コミュニティや環境に対する意見・要望も多く寄せられています。共創関係が成立しているわけです。

スターバックスは、コーヒーの品質も重要ですが店舗を個人の第三の場(3rd Place)としての位置付け、如何にやすらいでもらうかに最大限の努力をしています。なので顧客にはお店が自分のコミュニティの場という意識もあり、自らの参加意識も高く、My Starbucks Idea のような共創関係がが成り立つわけです。

さまざまなエンゲージメント施策も展開されています。2012年から展開されている「for TOHOKU, YOU AND STARBUCKS」という震災復興支援カードプログラムでは、毎年9月から12月に1000円分のカードを買うとその内100円は寄付に回され、顧客は900円分のチャージがなされます。

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(私のハミングバードカード)

そして期間中そのカードを使ってスターバックスでコーヒーや商品を購入すると、その代金の1%が、みちのく未来基金を通じて、震災孤児に寄付されるという仕組みです。従来型の社会貢献型キャンペーンと違うのは、買ったものの代金の一部を企業が捻出するだけでなく、顧客も寄付をするということです。まさに、「YOU AND STARBUCKS」ということなのです。また、このプログラムへの参加を意識させる仕掛けが設計されています。期間中、店舗にはこのプログラム用のステッカーとボードが用意され、このカードで購入した顧客はシールを貼ります。徐々にシールが増えてくると利用店舗を同じくする顧客の仲間意識も盛り上がってきます。お店同士での競争も起こります。また、それを見た顧客の参加も促せます。シンプルですが非常に秀逸な仕組みです。それ以外にもこのプログラムで購入した場合、レシートにプログラム参加への感謝の言葉が表示され、参加感を醸成します。私自身も熱心なスタバファンですが、毎年この期間は震災復興という大きな社会的な課題を最も短かに、かつ最も早いタイミングで思い出します。個人が寄付できる金額自体は少額ですが、自分の好きなブランドとの共創を感じます。このプログラムが実際売上の貢献やブランド価値の向上につながっているかどうかは分かりませんが、少なくとも私のようなヘビーユーザーにとっては、言うまでもなくブランド・ロイヤルティの更なる強化に繋がっています。

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(私が行きつけのトリトン店のボード)

Unnamed2 (ハミングバードカードを利用した顧客のレシートにはThank Youの表示が!)

エンゲージメント・マーケティングの設計上最も重要である、顧客の参加が施策の肝になっている点がポイントです。

アメックスのSmall Business Saturdayもそうですが、CSVプログラムで重要なポイントである「継続すること」もこのプログラムは実現しています。これは、実は顧客にとっても企業・ブランドにとっても短期的なフロー型キャンペーンを行うよりROIの高いキャンペーンにもつながるものと思われます。

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