エンゲージメント・マーケティング成功のための10ヶ条 β版 (5)
6. 参加、及びアクションを継続してもらう仕組みの実装(ソーシャル・プラグイン、コミュニティなど)
エンゲージメント・マーケティングは、マス・マーケティングと異なり(無論、マスマーケティングのすべてがという訳ではありませんが)中長期的な顧客との対話やつながりが重要視されます。誤解を恐れずに言えば、短期的な結果より中期的な絆が重要です。これに関してはAmerican Expressの有名なプロジェクト(キャンペーンでなく、あえてこう呼びます)"Small Business Saturday"に関してのAmex CEOの発言が参考になります。
アメックスCEOのケン・シュノルト氏が記者会見でこのように宣言してます。「今年のサンクスギビングデー明けの土曜日、11月27日から、新たなるムーブメントが始まります。新たなるムーブメントというのは、定着に時間がかかるもので、サイバーマンデーがすぐにはブレイクしなかったように、スモールビジネス・サタデーも一晩でブレイクするものではないかもしれない。しかしアメリカンエキスプレスは、この先何年にも渡り、このプログラムを成功させることにコミットしています。」(kimurasatoru氏のブログより転載。下線は筆者)
言い換えればこのように顧客と継続的で有機的なつながりを維持するためのコンテンツ、そして仕組みの実装が必須となります。コンテンツは非常に重要ですが、必ずしも企業側が常に提供し続けるものではなく、無印良品やスターバックスなどのように顧客との共創関係により多くのコンテンツを顧客側から提供しているところもあります。エンゲージメント・マーケティングとは企業が一方的に商品やコンテンツを提供するのではなく、顧客の側からのアイデアやコンテンツなども提供してもらう事なのです。(なかなか難しいですが)
そのような共創関係を築くためにも企業はエンゲージメントを継続するための仕組みを実装することが必須となります。仕組みとしては下記があげられます。
- コミュニティ(Facebookページなども含みます)
- ソーシャル・ログイン
- ソーシャル・プラグイン
- (商品)ソーシャル・レビュー
- Vote(投票)
- アンケート
- チェックイン
- 緩やかな会員(コミュニティ)組織
エンゲージメント・マーケティングでは、顧客に何らかのアクションをとってもらう事が重要ですが、FacebookなどのSNSが提供する仕組みを自社のサイトやコミュニティに実装する事で、顧客にとって敷居が低くなります。例えばソーシャルログインの仕組みを使えば、顧客は新たに会員組織に登録することなく普段活用しているSNS IDで認証するだけなので、気軽に参加、アクションできます。企業の側にとっても、従来より初期構築費やインフラ費用が抑えられます。(ソーシャルログインの傾向はトーチライト社のブログやFeedforce社のブログをご参考ください。)エンゲージメント・マーケティングにとってSNSが提供する機能はとても重要になってきています。
企業にとってこれらのソーシャル機能を提供することのメリットは下記があげられます。
- 敷居が低いので顧客のアクションを得やすい
- インフラコストが、従来のクローズ型自社構築より格段に抑えられる
- 顧客のとったアクションが顧客の友人にも伝わり、コミュニケーション自体がコンテンツとなり広がっていく(顧客が媒体)
- 顧客のInterest Grapgh及びSocial Graphを取得する事により顧客インサイトの強化につながる
- 顧客同士のつながりがブランドの強化につながる
Facebookページだけでいいのでは?という声もありますが、Facebookページはあくまでもよその庭であり、やはり大切なお客様は自分の家にご招待し語っていただく方が良いのではと考えます。最近の情報ではFacebookページでの企業投稿は登録している全ファンの約10%程度(adageでは6.2%と報じている)の広がりであるのに比べて、個人のソーシャルアクションは個人の知人の約30%に伝わると言われています。自宅で語っていただいた方が広がりやすい状況になってきたとも言えます。(無論、広告を使えばリーチは拡げられますが)また、Facebookページはあくまでもフローなので、このような貴重な対話はOwned Mediaでストック化するべきでしょう。
AppleはSNSで自社情報発信をコミュニケーションをしない企業ですが、一方でリアルサイト(自社店舗)はIT企業としては異例の店舗展開で、顧客との直接対話を重視しています。店舗では様々なイベントを開催し、Genius Barでは多くの顧客との対話がなされています。「アップル 驚異のエクスペリエンス」によれば、スタッフの採用基準としてIT知識よりコミュニケーション能力を重視しており、いかに顧客とのコミュニケーションを主体に考えているかというのが分かります。ちなみにスタッフには販売ノルマを課していないとも書かれています。
フォーシーズンズホテルをベンチマークしたと言われるApple Storeは、Appleと顧客との最高のコミュニティと言えるでしょう。