エンゲージメント・マーケティング成功のための10ヶ条 β版 (3)
4. 対話の促進(特に社内関係者を巻き込む)
顧客との対話は簡単そうで実は企業にとって難易度が高い活動です。仕事で様々な企業のお手伝いをさせていただいていますが、「総論賛成、各論難しい」というクライアントが多いですね。理由としては、1) 現在お客様相談室(コールセンター)に寄せられる声がクレーム中心 2) 価値を可視化(費用対効果)できず、なかなかリソースを割り当てる予算がおりない 3) やったことがないので上司がピンとこないなどなどです。ようするに不慣れというか、経験がないというか、社交性に欠けている企業が、特にメーカーには多いというのが現実だと思います。実際メーカーは商品を通じて顧客と接しているものの、実は、販売は卸、小売店が担当し、コミュニケーションはTV広告、メルマガなのでその機会がなかったと言えます。唯一の対話チャネルは「お客様相談室」なのですが、これも多くの場合はクレーム窓口としての位置づけです。
一方、Nesleはこの領域でもリーダーシップを発揮しています。2004年に設立されたトゥギャザー・ネスレ リレーションシップ・センターではまさにこの対話を実践しています。
トゥギャザー・ネスレ リレーションシップ・センターはロイヤルカスタマー専用の電話窓口として2004年5月に新設したものである。ロイヤルカスタマーは製品パッケージに付いているポイントマークを集めて応募することで登録される、いわば同社のファンクラブ組織だ。この電話窓口では、自社製品に関する情報の提供だけではなく、子育てや地域環境などの世間話も顧客と交わして、幅広い話題から顧客ニーズを汲み取るとともにネスレ製品に対するロイヤルティーを培ってきた。トゥギャザー・ネスレ制度そのものは2000年にスタートし、現在170万人の登録者がいる。(中略)
トゥギャザー・ネスレ リレーションシップ・センターは、「お客様と友達になるくらいお話しよう」というコンセプトを掲げて運営してきており、1回の平均対応時間がほかの2つのコールセンターよりも長かった。
出典:ITPro記事より
ネスレはいち早くダイレクト・マーケティング(単なるダイレクト販売という狭義ではなく)に着手したメーカーの一つであるが、一般的にはコストであるオペレーターの会話時間を短くする企業はあっても、長く話せというような企業は、当時は驚きでした。全日空も顧客セントリックな会社としてよく取り上げられますが、IT部門とコールセンター部門が情報交換を定期的に行い、顧客の声をWEBシステムなどにこまめに反映しています。お仕事でご一緒した際にはこのような顧客の声をベースにミーティングをよくさせていただきました。
昨今コミュニティが再び脚光が浴びていますが、ネットでの最初のコミュニティ・ブームは2001年くらいからでしょうか?しかしながら当時のインフラコストや広がりが少ない中苦戦を強いられ撤退したところが多い中、ベネッセのWomen's Parkは最も成功を収めたコミュニティだと言えます。ここでは妊娠した主婦や小さいお子様を持つ母親が会話し合ったり、お互いの経験をもとにアドバイスをしあったりするコミュニティですが、そこには実に多くの顧客体験がテキストデータとして記録されており、この層の課題や悩み、解決方法などがデータとして記録されているのです。このブログで度々登場するプラハラード「コ・イノベーション経営」によるところの顧客体験の共有なのです。エンゲージメント・マーケティングの活用意義の一つでも取り上げました。
今後、顧客が自分の体験を共有してくれるブランドや企業になるかは非常に重要なポイントで、NIKEなどは前述したとおりデジタルを通じて顧客の体験を共有しています。
そして、重要なポイントは折角得たこの顧客体験を全社で共有することです。言うが易しで実際にはこれも「総論賛成、各論難しい病」にかかり実行できていない企業が多いのが実態でしょう。しかし、SNSの出現で、社長も自社のFacebookページを閲覧し、顧客の書き込みを容易に目にすることが増え、否が応でも全社で共有する仕組みが確立されてしまったという事です。
顧客体験を共有してもらうためには、コミュニティ、コールセンターの活用、アプリなどの身近な仕組みの活用、Webログ、SNSデータの活用などがありますが、それらを如何に活用するのかが重要になってきました。この点は今後私のご一緒しているクライアントの方にもにいろいろとお話を頂こうと思ってます。ご期待ください。