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共創でマーケティングを変える!

エンゲージメント・マーケティング成功のための10ヶ条 β版 (2)

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3. 共有価値の創造

従来はブランドと顧客は商品でつながっていました。無論、ブランドはその商品だけでなくそのブランドの持つパーソナリティや独特の雰囲気などで他との差別化をはかっていましたが、このエンゲージメント・マーケティングではそれ以上のつながり=共有できる価値を共に持ち得るかどうかが重要なポイントとして挙げています。

2011年にポーターがハーバードビジネスレビューで提唱したCSV(Creating Shared Value)は、今後の重要なビジネスコンセプトとして、ネスレやP&G、GEなどのグローバル企業に採用され、特にネスレは経営の柱の一つにおいており、通常のアニュアルレポートとは別に「共通価値の創造」報告書を毎年(英語版)を発行しています。(ポーターのCSVに関する日経BIZアカデミーのインタビュー記事

CSR(Corporate Social Responsibity)との違いはCSRが社会的課題の解決を企業が社会的な責任感で解決するのに対して、CSVは社会的な課題と企業やブランドのビジネス課題(シェアの拡大、売上の拡大、サプライチェーンの安定など)の解決が両立していることです。自社の商品やサービスでの顧客の個人的な課題解決から社会的課題という顧客と共有しやすい課題を提示、企業やブランドが解決を場合によっては顧客と一緒に取り組む経営あるいはマーケティング・モデルです。

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弊社の事例では、Facebookページの投稿では自社製品やサービスに関する投稿より、平均して約2倍近くソーシャル・エンゲージメント(いいね!、コメント、シェア)が高いという結果になっています。これらはこの手の共有価値が顧客と企業・ブランドの共感が高いということの証と言えます。(無論、すべてがそうとは言えませんが)

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Small Business Saturday Web Site

秀逸な事例としてAmerican Expressが2011年より実施している「Small Business Saturday」というキャンペーン、否、ムーブメントがあります。このムーブメントでは大手ばかりに売上が集中してしまい、地元の中小商店が、日本で言うシャッター化(斜陽化)するのをアメックスが旗を振り、みんなで自分のコミュニティを盛り上げて、みんなでハッピーになろうという、従来で言うなら、プロモーションです。ここでの社会的な課題は、地元商店のシャッター化、コミュニティの弱体化です。一方アメックスの課題は、中小加盟店活性化=アメックスカードの売上増、そのオーナーのアメックスビジネスカード(Small Business Card)発行数の増、です。この両社の課題を顧客の共感を醸成する事で解決を図ったのです。結果は大きな成功を収め、2012年度に中小加盟店の約23%の売上増を達成したと言われています。このムーブメントはカンヌでも賞を受賞し、また、超党派の賛同も得て、国民のプロジェクトにもなっています。これがキャンペーンでないのは毎年この日のためにプロジェクトとして継続しているところです。(概略はこちらのブログをご参照ください。)

アメックスCEOのケン・シュノルト氏が記者会見でこのように宣言してます。「今年のサンクスギビングデー明けの土曜日、11月27日から、新たなるムーブメントが始まります。新たなるムーブメントというのは、定着に時間がかかるもので、サイバーマンデーがすぐにはブレイクしなかったように、スモールビジネス・サタデーも一晩でブレイクするものではないかもしれない。しかしアメリカンエキスプレスは、この先何年にも渡り、このプログラムを成功させることにコミットしています。」(kimurasatoru氏のブログより転載。下線は筆者)

この事例をキャンペーンではなく、なぜムーブメントと呼ぶかがよくわかります。また、その成功要因は、顧客との共有価値が明確であったからです。

コトラーもCSV的な考え方を取り入れており、新たなマーケティングコンセプト=マーケティング3.0で共創、コミュニティを掲げています。またそのそものマーケティングの目的を「世の中をよくすること(Make the world a better place.)」としています。

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我々は、CSVはエンゲージメント・マーケティングにおける効果的な手法ともとらえています。むずかしいお題ですが今後成熟したマーケットでの挑戦すべきお題だとも考えています。今後CSVの事例等は弊社でもシェアしていきます。



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