「九分九厘をもって半ば」── システム統合完遂を目指す三菱東京UFJ銀行
三菱東京UFJ銀行が2月下旬、都内でシステム統合に関する記者説明会を行いました。金融機関が、社内のITプロジェクトの進ちょく状況を記者向けに説明するのは前代未聞です。3月3日版のITmedia Podcast「マンデー・エンタープライズ」ではこの話題を取り上げてみました。
銀行再編の中、東京三菱銀行とUFJ銀行が合併して生まれたのが、現在の三菱東京UFJ銀行です。2006年1月の合併と同時に第1段階のシステム統合を実施しましたが、預金や為替、融資、外為、インターネットバンキングといった国内の主なシステムは、並存して運用されてきました。ちなみに、三菱東京UFJ銀行の店舗に行くと、入り口などに「四角」か「丸」の印が表示され、元はどちらの銀行だったか分かるようになっています。これらを今年5月から一本化していくのが、第2段階のシステム統合になります。
具体的には、今年初めまでに将来の業容拡大を睨んだインフラの増強を終え、5月にそれまでUFJ銀行だけで提供されてきた機能を旧東京三菱銀行の全店に追加します。そして仕上げとして、7月から12月にかけ、計5回に分けて旧UFJ銀行の店舗システムを入れ替えていきます。計画策定から2年半、サブシステム数が200を超え、システム投資も2500億円を投じた、まさに巨大プロジェクトです。
ITが社会インフラ化する中、その不具合が多くの人たちの日常生活にも大きな影響を及ぼすようになっていますが、システム障害による混乱は後を絶ちません。金融機関が、社内のITプロジェクトの進ちょく状況を記者向けに説明するのは前代未聞ですが、事務・システム部門長を務める原沢隆三郎常務は、「社会的な影響が大きいため、説明責任を果たしたい」と話しています。
11万人月を要し、ピーク時には6000人がかかわる現場を預かる根本武彦システム部長は、100人を超える記者を前に、約1時間にわたってリスクとそれを抑え込むためのプロジェクト管理体系やプロセスを説明しました。入念なリスク分析と評価、そして再三のテストを計画通りに進めてきたものの、「念には念を入れているが、品質のことだから最後まで分からない」と気を抜けない心境も話しています。
テストは、単体テストや結合テストを終え、本番リリースに向けた全体品質の最終確認に入っていますが、それぞれの段階ごとに完了規準を明確化し、業務部門の担当役員から銀行の取締役会、持株会社の取締役会まで巻き込んだ合計で11回の上る移行判定が予定されています。
根本氏は、「進ちょくは計画通り。8合目まできた。運転免許でいえば、路上講習に入ったところ」と説明しましたが、「九分九厘をもって半ばとし、これからもコツコツと努力を継続したい」と、現場を引き締めるメッセージも忘れませんでした。
プロジェクトが完遂できれば、並存していたシステムを一本化することによるコスト削減効果はもちろん、顧客サービスの向上というシナジーも生まれます。そして、それ以上に、根本氏は、「巨大プロジェクトは人を育てる。これは今後、われわれの大きな財産になる」と、メリットを強調していました。