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J-SOX対応、依然として「文書化実施」段階が4割強

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この週末、強くなった日差しでもう日焼けしている人がいるかもしれません。明けた月曜日のきょう、桜吹雪の中、多くの学校が始業式を迎えています。日本の多くの企業も本格的な新年度の始まりです。

新年度といえば、新たな気持ちで……のはずですが、ここのところ、景気の先行きも不透明、なかなか意気が揚がりません。さらに4月から新年度入りした上場企業やそのグループ会社では、いよいよJ-SOX法の適用も始まりました。4月7日版のITmedia Podcast「マンデー・エンタープライズ」ではこの話題を取り上げてみました。

監査法人トーマツは3月下旬、企業の内部統制報告制度の対応状況について、昨年末から今年初めにかけて調査を実施し、292社から回答を得た結果を発表しました。それによると、進ちょく状況が依然として「文書化実施」段階にあると回答した企業が42.5%に上っていることが分かりました。

この4月から新年度に入った上場企業は、適正な財務諸表に加え、内部統制が有効であると経営者が主張する、つまり、内部統制の有効性を経営者が自己評価する「内部統制報告書」の提出が求められることになりました。

年度の始まりが4月ではない企業は、少しだけ余裕があるわけですが、監査法人トーマツの調査結果からは、それにしても遅れている、という印象を受けました。

J-SOX法は「黒船来襲」?

J-SOX法の大きな目的は、財務諸表の信頼性を高めることです。そこでは、事業を遂行していくためのプロセスを広範囲に洗い出し、「伝票を間違って2枚書いてしまう」とか、「簡単に在庫を持ち出せてしまう」といったリスクを減らすことによって、財務諸表の品質をコントロールしていくことが求められます。

「文書化」というのは、業務プロセスを洗い出し、どこにリスクが存在するのかを把握し、対応する社内チェックなどを表にまとめる段階です。

調査結果によると、上場企業の4割強がまだこの段階にあり、さらに市場別に内訳を見ると、東証や大証の上場企業の多くが次の段階である「評価実施」や「外部監査」に移っているのに対して、新興市場の上場企業では、半数が「文書化」に留まっているほか、その前段階にあたる「対応準備段階」とした企業も1/4に達しています。新しい制度に戸惑っている実態が浮き彫りになった格好です。

企業は資金の調達を市場に求める以上、適正な財務諸表を公表することが必須となります。「J-SOX法は日本企業の競争力を削ぐ米国の陰謀」との見方も一部にはあります。しかし、日本においてもカネボウやライブドアなどの不正会計事件が相次ぎました。前者の事件では、監査法人の雄、中央青山監査法人を前身とするみすず監査法人が解散に追い込まれたことも記憶に新しいと思います。決して「黒船来襲」などではありません。

内部統制の構築は、企業グループ全体のガバナンスを高め、業務の「見える化」と「標準化」および「統合化」を進めることにより、過去の負の遺産を自浄し、グローバル競争に勝ち抜くためのコスト削減と意思決定の迅速化を実現する好機となるのではないでしょうか。

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