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メディアプランナーのつぶやき。ITおよび製造業のマーケティングについての考察。ときどきマンガとアニメ。

営業という仕事にまつわる誤解 「本当に素晴らしい会社は、営業をする必要がない」?

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先日「SEO業者に35万円払ったが、最悪な結果となった」というブログが話題となりました。本当にこの通りだとしたらひどい業者もいたものです。

この話のメインテーマは「悪徳なSEO業者に騙されないようにしましょう」というものですが、この話を読んだ私の友人のKさんが、そこで登場する営業マンを取り上げて、SNS上で以下のようなコメントをしていました。

「飛び込み営業、電話営業、メール営業、どれもそうだけど、路上のキャッチと同じだよね。要は営業しないと仕事来ないからやってるわけでしょ?本当に素晴らしい会社は営業する必要ないもんね。」

さて、果たして本当にそうでしょうか?

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営業の仕事を10年近くしている私としては、見過ごすことのできる発言ではありませんでした。いくつかのポイントで誤解があることを伝えるため「いやいや、営業は必要ですよ。ーー」とコメントを返しました。詳しくは後述します。

■営業という仕事について

「営業」という仕事は、多くの人が就いている職種ながらも、その本質は意外と知られていません。

なお、企業の活動そのものも「営業」と呼びますが、今回の話では「顧客に直接的に商品やサービスを売る仕事」を「営業」と定義します。そのなかでも企業が企業に商品を売る「法人営業」については、この4月から新しく社会人になった方や、これから就職活動をする学生にとっては特に馴染みのないものでしょう。このSEO業者の営業も、ジャンルとしては「法人営業」となります。

なかなかこの営業という職種の特性については、会社の中に入ってみないと分からないかもしれません。把握しなければならないというものでもありませんが、もし「無理やり人に商品を売りつけるのが営業の主たる仕事内容だ」と思われているのであれば、それは悲しいことです。

そこで、改めて営業とはどういう仕事で、本当に必要なことをやっているのか、ということを簡単に伝えたいと思い、Kさんに返したコメントをまとめ、さらに補足として私が思う「営業の理想像」について少しお話したいと思います。

では、冒頭のコメントの返信から。

私「いやいや、営業は必要ですよ。言ってしまえば社長も営業マンですし、営業が出来ない会社は製品やサービスが良くても潰れます。このSEO業者の営業というかビジネスが詐欺なだけです。」

Kさん「うーん、確かにターゲット層に対して認知度ゼロに等しかったら必要かもしれないです。口コミの起こりようがないですもんね...。いい製品でも潰れちゃうのは、競合他社が営業をガンガンしていて、顧客は案外営業にホイホイ乗せられてしまうから、っていう理屈なんでしょうかね?」(※)

私「営業の定義によりますが、狭義の「押し売り営業」みたいなのでいうと、それが必要無いほうが良い会社だとは思います。
ただ、もう少し広い意味の「営業」ということでいうと、「最初のきっかけ作り」をして、「長期の取引に発展させて、お互いにビジネスを大きくしていく」という2つの重要な仕事があります。
この「最初のきっかけ作り」が下手なところは、製品やサービス内容が良くても、長期的に見て売上が上がらずに縮小しちゃったりします。結果的に、営業がうまい会社のほうが収益が上がって、より良い製品作れたり、とか。

私「この(SEO業者の)ケースで言うと、ちゃんと効果の出るSEO対策を提供できていれば、こんなふうにブログに書かれること無く、人伝でオススメされていくようになったのになと。まあでも大手と書いてあるんで、ちゃんと効果出してるメニューもあると思いますけどね。」

■提案営業のススメ

上記の会話で少しは伝わったでしょうか。Kさんには、「結果的に、営業がうまい会社のほうが収益が上がって、より良い製品作れたり」という部分がとても腹に落ちたということで納得してもらえました。

この営業という仕事に対する「マイナス」のイメージは、上記で述べた「最初のきっかけ作り」という仕事の部分について、ふだん自分が接する範囲での「泥臭い営業」でその印象が植えつけられてしまうのかもしれません。もちろん、どういった仕事でも泥臭い部分はたくさんあります。綺麗ごとだけでビジネスがうまくいくほど、世の中は甘くありません。

しかし、実際の「営業」という仕事はそれ以外に多くの誇るべき「役割」があるのです。ここが抜け落ちてしまうと、「営業が不要」という誤解が生まれます。

営業に新しく配属されたひとや、営業で行き詰っている人に私がオススメしている本として、『提案営業の進め方 (日経文庫)』があります。新人だけでなくマネージメント層の方にもぜひ読んでいただきたい本なのですが、この本のまえがきに、「提案営業」の仕事について以下のように述べられています。

「提案営業とは文字どおり、顧客が有する課題を解決するための提案を行うことに主眼を置いた営業活動です。提案によって、顧客との深い信頼関係を構築し、顧客にとっても自社にとっても価値ある結果を生み出すことが提案営業の目的です。」

「提案営業は、自社の商材をうまく販売するための営業テクニックではありません。また、提案営業を行う営業担当者は、単なる自社商材の売り子ではありません。営業担当者は提案営業を通じて、顧客の課題を理解したうえで、自社がいかにして顧客に貢献できるかを考え、顧客の課題解決を支援します。顧客に貢献することが企業の存在意義であるとするなら、提案営業はまさにビジネスそのものであるといっても過言ではありません。」

提案営業の進め方 (日経文庫)』 まえがき より抜粋

つまり、提案営業はビジネスパーソンとしての力量を高めるうえで絶好の成長機会である・・・と続きます。顧客との長期取引がある法人営業の方がこの提案営業により当てはまるケースは多いでしょうが、そうではない例えば店頭販売やテレセールスなどでも当てはまる考え方ではないでしょうか。顧客との直接の接点である彼ら彼女らが、押し売りをするのではなく、顧客の悩みを聞いたうえで、解決策としての商品を提案するというのが理想的です。

なお、たまに「うちの商品はそんないいものではない」と嘆く営業がいますが、そうであるならば、その顧客のためになる商品を開発すべきなのです。商品開発部やマネジメント層に対して営業がそうしたフィードバックや提案をしない、またはできない企業は商品力がどんどん落ちていきます。

顧客が何を求め、それに対して満足してもらえる結果をいかに出すか。営業としての仕事の醍醐味はここにあると思っています。

コメントの最初に「社長も営業マンである」と書きましたが、例えば、故スティーブ・ジョブズ氏は「人生がより豊かになる」という提案を私たちにするために、iPhoneやMacにありったけの情熱をかけて開発しました。そして、製品発表会という場を整え、そこで大々的に発表(営業)したのです、「どうだい?」と。Appleが素晴らしい会社だとすれば、それは彼の提案営業のおかげである、とは言えないでしょうか。

彼が優れた営業マンであることを示す名言を最後に紹介しましょう。

美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?
そう思った時点で君の負けだ。 ライバルが何をしようと関係ない。
その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ。

以上、私の思う「営業という仕事」について、でした。これでいくつかの誤解が晴れ、営業という仕事について考えるきっかけになってもらえればうれしいです。

※補足:その企業や製品の認知度が全く無い状態で「きっかけを作る」そして「物を売る」というのは、どれだけ優秀な営業マンでもなかなか難しいことです。販売という行為すべてを営業に任せてしまうのは非効率なケースも多々あります。この場合、「営業」だけでなく「広告」や「広報」という職種でも担うべき仕事があるでしょう。広義の意味ではそれも営業活動の一環とすることもできますが、それぞれの役割を明確化する必要があります。気になる方はマーケティング関連の本もぜひお読みください。

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