「京都国立近代美術館の中の人、最後のつぶやき」から考えるソーシャルメディアの運用体制
※メモとして記載していた部分を一部削除しました。(2010/07/13 1:10)
先週の7/8(木)、数千人のフォロワーに惜しまれながら1つのTwitterアカウントが停止を告げました。
@MoMAKnakanohito
--------------------------------------------------------------------------------------------
こんばんは。当アカウントを担当してきた、京都国立近代美術館の初代情報研究補佐員です。
このツイート以降はあくまでも私個人として書いている内容となります。美術館としての
ツイートは終了しました。個人的な話に興味のない方にはフォローの解除をお願いします。
2010-07-08 21:00:24
--------------------------------------------------------------------------------------------
運用終了に至ったのは、自由な運用の鍵でもあった関心のなさのためでした。
さまざまな問題が明らかになることを期待している方々にとって残念かもしれませんが、
上層部が一人の有期雇用職員の仕事に必要性を見出せず、引き継ぎもできないまま
予定より早く解雇した というだけの、どこにでもある話です。
2010-07-08 22:10:09
--------------------------------------------------------------------------------------------
上記のつぶやきを含めてまとめられた「Togetter - 京都国立近代美術館の中の人、最後のつぶやき」(現在は削除されています)は、多くのひとの同情を集め、担当者への励ましや、こうしたWEB上でのコミュニケーションに理解を示さない美術館の運営側に対し憤りを覚える人も居ました。
一方、この出来事を「悲しいな」と私がTweetしたところ、企業内でWEBやマーケティング関連の仕事をされている方々から下記のようなご意見をいただきました。
- 中の人なら最後まで、私的なツイートをすべきではないと思うよ。悲しいけど、
業務ではなかったというのなら「中の人」とは言えないから。悲しいことではあるけどね。
中の人には同情しますけどね。こういう事にならないようにするのが
企業(この場合は美術館)側の責務でもあるので- 同意です。こんな風に書いてしまう人の神経の方が私は理解できなく、驚きました。
そう、これは他の企業アカウントでも今後起きるかもしれない失敗例なのです。
どこが失敗かというと、
- ソーシャルメディアに対する共通理解が組織内で取れていない
- 1人の担当者に依存し過ぎている
- 担当者のクーデターのような個人的な感情の吐露(Tweet)を許してしまった
- TwitterおよびFacebookという窓口の一方的な閉鎖
といったところでしょう。YouTubeのアカウントは残すようですが、これでコミュニケーションが取れるとは思えません。そもそもWEB全般に関心が無いということですが、それで本当にいいのでしょうか。辞めていく担当者もこういう形で暴露するのではなく、他に何か出来なかったのでしょうか。今回、注目を集めたことによって一時的に来場者や関心を持つ人は増えるかもしれませんが、それも一瞬だけのこと。この後何のアクションも起こさなければ、忘れられてしまうでしょう。
オルタナブロガー大元さんのエントリでも、下記のような考察をされています。
(前略)しかし、@NHK_PR の中の人が「良い人」だったので、軟式アカウントの一つの欠点に気づきました。それは、「属人的」過ぎる事です。@NHK_PRさんが短期間の間に6万人のフォロワーを獲得した背景には、@NHK_PRさんの人柄による部分が大きいと思います。
当然企業が自社の公式アカウントを作成する場合には、組織である以上は継続性を考慮しなければなりません。ある日突然企業側の都合でTwitterアカウントを廃止するような事があれば、フォロワーを無視した行為として捉えられ、ソーシャルメディア上ではマイナスイメージが付いてしまうことでしょう。
こうした危険性は、いまある多くの企業アカウントに潜んでいるのではないでしょうか。
TwitterやFacebookなどソーシャルメディアの波が来るなか、企業側としてはただ窓口を開くだけではなく「継続的な運用体制」と「社内(特に上層部)での共通理解」という2点をどう進めるべきなのかを考えなくてはなりません。これは本当に悩みどころだと思います。でも、いま悩んでおくのが大事でしょう。
最後に、自分のメモ代わりとして「京都国立近代美術館の中の人、最後のつぶやき」を張り付けておきます。この出来事を教えてくれた後輩の山本君に感謝。(以下の文章もそのまま流用させてもらっています)
※メモとして記載していた部分を一部削除しました。(2010/07/13 1:10)
@MoMAKnakanohito
--------------------------------------------------------------------------------------------運用終了について簡単にご説明することと併せて、平常からよく目にしてきたご質問に
お応えすることを試みます。長文駄文、興味のある方のみお付き合いください。
5分ごとの予約ツイートが23:00まで続きます。パソコンから離れている可能性もあり、
リプライは返せませんのでご了承ください。
posted at 21:05:09
--------------------------------------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------------------------------とりあえず言えるのは、英語のツイッターと日本語のツイッターは性質が明らかに異なるの
で海外の美術館を参考にするのは殆ど無意味であること。入館者数への影響など、
広報ツールとしての効果を気にするのは的外れであること。
そもそも単なる広報ツールとみなすのは非常に浅く勿体ないこと。等々。
posted at 21:40:05
--------------------------------------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------------------------------運用終了について、館に宛てて抗議のメールを送られた方もいらっしゃると聞きました。
お気持ちは嬉しいのですが、個人的な希望としてはなるべく控えていただけたらありがたい
です。肯定してくれた者に対して風当たりが強くなり、今後このような自由な展開は不可能
になるのではないかと思います。
posted at 22:15:10
--------------------------------------------------------------------------------------------このアカウントを通して初めて来館者側の皆様と接し、視野が広がりました。鑑賞法の限定
に繋がるようなアウトリーチ・プログラムは私には理解できませんが、このようなかたちで
皆様と直接関わることができる場があるのは美術館にとって重要なことではないかと感じま
した。
posted at 22:20:08
--------------------------------------------------------------------------------------------ケントリッジは個人的に現在最も重要な作家の一人だと信じているため一人でも多くの人に
広めたい気持ちに突き動かされていました。そしてマイ・フェイバリット展に関しては皆様
の多様な捉え方や注目点を共有し、企画のコンセプト自体に沿ったかたちで展覧会を補完す
ることができたのが嬉しかったです。
posted at 22:25:10
--------------------------------------------------------------------------------------------前学芸課長の河本からの伝言、前半「 #kentridge でツイッターについて多くを学び、
#MFexh では、ツイッターが構造の一部を担う展覧会を構想することができた。
ツイッターとその運用への信頼がなければ、 #MFexh は成立し得なかった」
posted at 22:30:23
--------------------------------------------------------------------------------------------前学芸課長の河本からの伝言、後半「そして、ツイッターを広報ツールに矮小化することは、
その大きな可能性を切り捨てることではないか」*河本は #kentridge と #MFexh の企画者
でもあります。
posted at 22:35:11
--------------------------------------------------------------------------------------------最後に、私的な報告ですが、日英バイリンガルの現代アート情報ポータルサイトART iT
http://art-it.asia のお手伝いをすることになりました。基本的には単発アルバイト
ですが、併せて@Artit_Tokyoの「中の人」勢に加わってもらいたいと言われています。
posted at 22:40:09
--------------------------------------------------------------------------------------------ツイッターでは他のウェブ媒体と違い、嫌な思いをすることは殆どありませんでした。
見知らぬ方々から暖かい応援や労いの言葉をいただくことも多く、不満や誤解のある方とは
直接やり取りをしたらほぼ必ず和解できました。なんて平和なのだろうと河本と共に驚いて
いました。
posted at 22:55:05
--------------------------------------------------------------------------------------------皆様のご反応があってこそやりがいがありました。充実した経験にしていただき、
ありがとうございました。
信じられないほどの暖かい応援をいただき、ありがとうございました。これにて終了します。
posted at 23:00:47
--------------------------------------------------------------------------------------------
■関連記事
■関連する週報
・IT企業Twitter利用動向まとめ
・企業アカウントと人間性に関する考察 - 「ビジネス・ツイッター」書評
※ご意見はコメント欄か @dyamaoka まで